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白鳥さんの黒歴史  作者: 夢水四季
あの空に捧げる回想録
144/221

明日の夜はワルプルギスの夜よっ!

   ◆




 白鳥さんと鷲羽先輩は、時々喧嘩をする。


 喧嘩というよりは口論だが。


「だから、私は本物の黒魔導師よっ」


「だったら、その証拠を見せたまえ、証拠を」


 あーあ、また始まったよ。面倒臭いなあ。


「あなただってマジック紛いのことしか出来ない、エセ超能力者のくせに」


「君はまだ、あのマジックのトリックさえ見破っていないではないか」


 僕に言わせれば、どっちもエセだよ。


 同調する時はすごく仲良いのに、反発する時は驚くくらい険悪なんだよな。不思議だ。


「分かったわ。そんなに言うなら見せてあげるわ、黒魔術の儀式を。明日の夜はワルプルギスの夜よっ!」


「ほう、面白いではないか」


 何で決闘みたいになってんだか……。




 てな訳で、僕達は今、白鳥さんの家にいる。


 時間は夜の十時を過ぎている。


 僕達の活動は夜に行われることが多い。お陰で寝不足だ。次の日が学校でないのが、唯一の救いだった。


「さあ、見ていなさいよ。鷲羽真琴、あなたを呪ってあげるわ!」


「やれるものなら、やってみたまえ」


 地下室は薄暗く、灯りはランプの光のみだった。


 白鳥さんは黒いローブに身を包み、いかにも黒魔導師という格好であった。


「フフフフ、今日は秘密兵器があるのよ」


 そう言って黒い本を取り出す。


「これは『黒歴史』といって、日頃の恨みつらみを書き残した日記で、ここに名前の載っている者を呪うためのものよ。勿論、あなた達の名前も書いてあるわ」


「えっ、何で僕も……」


 先輩の所為で、とんだとばっちりだ。


「名前を書かれた者が呪われる。新手のデスノートか」


「ちなみに、私は死神と契約はしていないわよ」


 契約してたら嫌だよ。


「……では、儀式を始めるわよ」


 白鳥さんが日記を床に置き、呪文の様な言葉を唱え始めた。何言ってるのかは聞き取れない。日本語ではない。


 呪文に合わせて、床が青く光った。星のマーク、魔方陣っていうんだっけ?


「せ、先輩。床が光ってますよ」


「よく見たまえ。あれはただの電飾だ。クリスマスなどによく見るやつだぞ。何処かでセバスチャン殿がスイッチを入れているに違いない」


 ここまでやるか……。凝り過ぎだよ、白鳥さん。


 


 十数分後。白鳥さんは、ようやく呪文を止めた。それと同時に電飾も消える。


「何も起きんようだが。橘後輩、何か変わったか?」


「……特に何も」


 身体に痛みは感じられないし、心臓麻痺になりそうだとも思われなかった。


「私たちに掛けた呪いとは何なのだ?」


 そういえば、肝心の呪いの内容を聞いていなかった。


「バナナの皮で滑って骨折する呪いよ」


 ……何その馬鹿らしい呪い。


「効果はすぐには表れないわ。数日後かもしれないし、数ヶ月後、もしかしたら数年後かもしれないわ」


 数年経ったら、もう呪いは関係無いんじゃないかな。


「ほう。では、楽しみに待ってみるとするかね」




 数年経った今でも、僕は骨折をすることなく、健康的な暮らしを続けている。

そんな白鳥さんは数年後、白魔導師に転生します。

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