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白鳥さんの黒歴史  作者: 夢水四季
あの空に捧げる回想録
138/224

……まだ、決めてないよ

「さあ、まだまだ料理は沢山あるから、どんどん食べてってよ」


「いやあ、かたじけない。……おお、この海老フライもなかなかの美味。……橘後輩の父君はシェフになれたかもしれませんな」


「それ程でもないよ~。鷲羽君の食べっぷりが良くて、僕もすごく嬉しいよ~」


 父はお世辞を言ってくれる先輩にデレデレだった。


 僕の予想に反して、会話が噛み合っている。驚きだ。


 食卓に着いてから、父と先輩は喋りっぱなしだ。


 そんな父を横目に見ながら、僕は料理を口に運ぶ。白鳥さんも会話には参加せず、静かに食べていた。


「私は将来、アメリカのFBI超能力調査官にでもなってやろうと思うのですよ」


「へぇ~、それはスゴイね。かっこいいよね~、FBI。あっ、もしかして今、超能力使えたりする?」


「ええ、勿論。お見せ致しますよ」


 そう言って、いつ仕込んだのか、スプーンを手の中に出現させた。


「おぉっ、お見事!」


 何か見たことあるような……。


「いやいや、こんなのはただのマジックですよ。……本当の超能力はこちらです」


 スプーンをぐにゃりと曲げる。


「わ~、スゴイ。スプーン曲げだね」


 父は驚いているけど、残念ながらそれもマジックだ。


 あの百均の手品グッズをまだ持っていたのか。


 白鳥さんも呆れた様子で、先輩を見ていた。


「僕さぁ、実はNASAの宇宙飛行士になりたかったんだよねぇ。でもなれなくて、今はしがないサラリーマンさ。鷲羽君は夢を叶えてね」


「NASAは狭き門ですからな。FBIもそうですが、まあなれなかったらなれなかったで、それなりに楽しく生きていくでしょうな。……そういえば、白鳥後輩は一流の魔法使いになりたいのだったな」


 先輩がいきなり、白鳥さんに話を振る。


「えっ、まあそう、ですね」


 さすがに「黒魔導師」だとは言わなかった。


「魔法使いか。ファンタスティックだねぇ。……ハリポタ的な?」


「ええ、まあ」


 おそらくは、その敵役だろう。


 父はロマンチストなので、子どもの夢は否定しない。 


 魔法も否定しない。


 その後は、父と先輩がUFOと宇宙人について延々と語っていた気がする。




 誕生日会が終わり、先輩たちは帰って行った。


 この日は、本当に自分の誕生日だったのかと疑いたくなる。先輩と父の座談会に招かれた気分だった。


「わ~、洗剤セットだって。ちょうど買おうと思ってた所に、白鳥ちゃんてばナイスタイミングだよねぇ」


 白鳥さんがご馳走のお礼にくれたものを見て、父が喜んでいた。洗剤セットって、お歳暮みたい。


「心霊研究会か。二人とも個性豊かで面白かったね。超能力者に魔法使い。夢もちゃんと決まってるみたいだし。……宇宙の夢は何? 宇宙は何になりたいの?」


「……まだ、決めてないよ」




 将来なんて分からない。


 やりたいことなんて、特にないかもしれない。


 特技がある訳でもない。


 僕には何もないのかもしれない。




 寝る前に、白鳥さんから貰ったプレゼントを開けた。


 中には大仏のイラストがプリントされたマグカップが入っていて、少し笑ってしまった。

この時点での鷲羽先輩の将来の夢はFBIです。

英語の会話力を磨こうとALTの先生に英語のみで話しかけるという修行をしています。

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