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白鳥さんの黒歴史  作者: 夢水四季
あの空に捧げる回想録
135/221

中学生はまだ子どもだ

  ◇




 鷲羽真琴に感謝していることは、コンビニスイーツに出会わせてくれたことだ。


 彼がいなかったら、私は一生それを食べることはなかっただろう。


 先輩はああ見えて、祝日はきちんと祝う主義らしく、ことある毎にお菓子パーティを開いていた。ハロウィンやクリスマスは勿論、「中学生はまだ子どもだ」と言って柏餅を持参し、子どもの日パーティまでも行った。


 私たちが何気なく話した誕生日までも、しっかりと記憶していて祝ってくれた。


 そのパーティの度に先輩が持って来ていたのが、コンビニスイーツであった。


 私は、それらが妙に美味しかったことを覚えている。


 執事のセバスチャンが作る一流のものにも負けないくらいに。




 コンビニスイーツのことは、このくらいにして。


 鷲羽真琴の超能力の真偽についてのエピソードを話そうと思う。


 研究会が発足してすぐの頃……。




「先輩は超能力者だって言ってましたよね。だったら、どんな能力が使えるんですか?」


 仮部室の第二理科室の椅子に座り、橘君が先輩に尋ねる。確かに、まだ先輩が何の超能力が使えるのかは知らない。テレパシーかサイコキネシスかテレポートか……。


「ああ、まだ見せていなかったな。私の超能力とは、これだ」


 そう言うと同時に、先輩の手の中にスプーンが現れた。


「おお。……って、スゴイですけど、これはただのマジックじゃないですか」


「いや、私が見せたかったのはスプーン曲げだ」 


 これはまたオーソドックスな……。


「ほら、見ておれ。曲がるぞ……」


 ぐにゃりとスプーンを曲げた。


「ま、曲がった」


 橘君が素直に驚く。もっと捻くれた子だと思っていたが、意外と騙されやすい性格なのかもしれない。


「ちょっと、そのスプーンを貸しなさい」


 と言いながら、私は先輩の手からスプーンを抜き取る。


「あっ」


 ……やっぱりね。


 私にもスプーンは曲げられる。


「このスプーン、誰でも曲げられるわよ。こんな単純なトリックに私が騙される訳がないでしょう」


「うわ、本当だ。こんなの全然、超能力じゃないですよ」


 橘君は騙されかかっていたくせに……。


「やはり百均の子供騙しの手品グッズでは駄目だったか。しかし、橘後輩、君はもっと人を疑った方が身のためだぞ。将来、騙されて借金取りに追われることのないように、今後気を付けたまえ」


「借金取りなんかに関わりませんよ。……それに、本物の超能力を見せて下さいよ」


「またいつかな」


 


 先輩はいつも、そうやってはぐらかすのだ。


 言って欲しかったことも、重要なことも……。


 今となっては、彼が本当に超能力者だったのかを確かめる術はもうない。

先輩は100均の手品グッズを持ち歩いています。

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