さて、勝負といきましょうか
次の日、白鳥の病室にて。
「まあ、これで一件落着ね」
これで、最終的に良かったのだろう。
「あっ、烏丸君の引越しをその内するから、元の家の整理にでも行ったらどうかしら?」
「……そうだね。じゃあ、一旦、家に戻るよ」
烏丸はそう言って、一人で出て行った。
「私、駅前のケーキ屋さんのプリンが食べたくなっちゃったわ。薫、ちょっと買って来てくれない?」
「ええよ~。セバスさん、お金払うてな」
駅前のケーキ屋は高級なのだ。
「はい、分かっておりますよ。では、参りましょうか」
薫とセバスチャンも病室を出る。
つまり、病室はおれと白鳥の二人だけとなった。
「さて、クライマックスね」
「へ? 何が?」
いきなり何を言い出すんだ。
「ねえ、高村君。今、一人になった烏丸君は何を思っているのでしょうね?」
「今、自分の家を整理しに行ってて……」
「烏丸君、私たちに秘密を知られ、今までの環境を壊され、どんな心境なのでしょうね。もしかしたら、彼の心はズタズタに壊れているかもしれないわね。……昨日の裁判で、烏丸君の環境面はどうにかなったわ。でも、烏丸君の内面、心はどうでしょうね。今も、仮面を被り続けたまま、嘘を吐き続けたままかもしれないわね」
おれは、白鳥の言葉を聞き終えると同時に、走り出していた。
「さて、勝負といきましょうか、烏丸君」
◆
もう心残りは何もない。
兄さん、もうすぐ行くから、待っててね。
この地獄のような世界から、やっと抜け出せるんだ。
烏丸君は何をしようとしているのでしょう。




