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白鳥さんの黒歴史  作者: 夢水四季
白鳥さんと嘘吐きカラス
107/223

おれは下僕の身だぞ



ということで、勉強合宿がスタートした。




「家主の白鳥がいないのに、おれ達だけで使うのも気が引けるよな」




 セバスチャンも白鳥に付いていて、夜にならないと帰って来ないし。




 白鳥家には空き部屋がいくつかあって、ホテルのような感じになっている。各部屋に風呂・トイレ付き。




 一部屋が無駄に広い。下手すると、そこら辺のホテルより豪華だ。




 おれ達は三人部屋で、それぞれにしっかりとベッドまで用意してあった。




「ベッドは、無駄にスプリングが利いてるし……」




 おれはシャワーを浴びた後、ベッドに倒れ込んだ。




 ……少々、疲れているのだ。




 勉強合宿の講師、烏丸先生が意外と厳しいのだ。




 午前は補講、午後から猛勉強というハードなスケジュールだ。




「高村君、寝る前に暗記科目をやるよ」




「おいおい、寝る前まで、ギッチリだな」




「逢坂君は、もういいや。明日、やろう」




 さすがの烏丸先生でも、薫の数学アレルギーには手こずっているようだ。




「もう、寝かせてくれよ。……おれはこのベッドで寝たいんだよ。おれの家のより何倍も寝心地良さそうだもん。白鳥のやつ、毎日こんなベッドで寝てるのか。羨ましいぜ」




「だったら、美和子と結婚すればええやん。毎日、このベッドで快眠やで」




 薫がとんでもないことをさらりと言った。




「……バカ言うな。おれは下僕の身だぞ」




 この身分にも、慣れちゃったぜ。




「分からへんで。プロポーズしてみたら、案外あっさりOKかもしれへんで?」




「ないないない、絶対にない。軽くあしらわれるだけだって」




 玉砕するイメージしか浮かばねえよ。




「ていうか、白鳥には烏丸の方がお似合いだって。アイツ、烏丸のこと、ベタ褒めだったもん」




「僕なんかに、白鳥さんは勿体無いよ」




「ご謙遜を……」




「僕は、君達が思ってる程、すごい人間じゃないよ」




 烏丸に暗い影が落ちたような気がした。




「あっ、そういえば、二人は修学旅行どうだったん?」




 薫が見事に話題を変えた。




「楽しかったよな」




 ありきたりな感想のおれ。




「厳島神社の鳥居が、ちょうど工事していて残念だったけどね」




「厳島神社か~。厳島神社といえば、平清盛が……(以下略)。わいもまた行ってみたいわ~」




「……逢坂君は、自分の好きなことは、かなり語る人なんだね」




 烏丸が少し呆れて言う。




 かなり話は変わるけど。




「そういえばさ、おれと白鳥が書いた悩み相談のポスターあったじゃん。あれ、掲示許可出してくれたのお前だったよな?」




「……あ、うん。そうだね。僕、生徒会だったからね」




 おれ達が一年だった頃だ。




 白鳥に掲示許可取ってこいと命令されたのだ。




「おれ、あの時、お前と初めて話したんだよな」






 おれと烏丸の初会話プレイバック。




「あのさ、生徒会の烏丸だよな?」




「ええっと、君は確か……。二組の高村君だよね」




「よく、おれの名前知ってたな」




「だって、あの白鳥さんのパシリの高村君だよね。意外と有名人だよ、君。……で、用件は何?」




「えっと、白鳥にこのポスターの掲示許可取ってこいって言われたんだけど。こういうのって、生徒会に頼めばいいんだよな?」




「うん。……悩み相談? 面白そうだね。掲示許可の判子、押しとくよ」




「ああ、ありがとな」




 以上、おれと烏丸の初会話シーンでした。






「でも、よくもまあ、お前もあんな怪しいポスターに掲示許可出したよな。何か、宗教団体の勧誘みたいだったじゃん、あれ」




 今は、少しマシになったけど。




 新学期に改良したのだ。




「まあね。でも、繁盛してるみたいじゃないか」




「金は取ってないけどな」




「美和子は金持ちやし。それに、良心からやってるだけやと思うで」




「『白魔導師は人を助けるのが仕事』って言ってたからな」




 知ってしまったら、助けなければいけない。




 本人が望もうと望まないと、助けなければいけない。




「……前、白鳥さんに『人の心はお金では買えない』って言ったことがあるけど。あれ、半分くらい嘘なんだ」




 嘘……。そうか、烏丸は……。




「上辺だけなら、お金で買える。悲しいけどね」




 元ホストだから、言えることなのだろう。




 その後は、おれも薫も黙ってしまい、流れ的に寝てしまった。

ポスターは白鳥さんが描きました。

白鳥さんの画力は普通です。

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