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白鳥さんの黒歴史  作者: 夢水四季
白鳥さんと嘘吐きカラス
104/224

あなたは死なないわ。

 ◆






 カラスは頭の良い鳥だといわれている。




 僕も、昔から頭だけは良かった。




 だから、勉強面で苦労したことは一度もなかった。




 そんなことを言ったら、彼はきっと怒るだろうが。




 無駄に頭が良かったから、仮面を被っているのを知られないように、上手く立ち回れたのだろう。




 嘘を吐くのも上手なのだろう……。


               ◇





夕食を白鳥家で食べ、おれ達は廃病院へ向かった。




 廃病院は見るからに、不気味であった。




 周りに人気が無く、暗いのも怖さを更に引き立たせた。




「では、私は車で待っておりますので」




 セバスチャンはまた待機だ。居てくれた方が有り難いのに。




 廃病院の中は暗く、懐中電灯で照らしながら進んでいく。




「……今度は本物なんだよな」




 春休みに入ったお化け屋敷とは違い……。




「当たり前でしょう。今度は逃げ出さないようにしなさいよ、ビビリの高村君」




 ビビってないと言えば、嘘になる。




「フッ」




 突然、首筋に生温かいものが……。




「うわあああああっ」




 情けなく悲鳴を上げるおれ。




 恐る恐る後ろを振り返ると、烏丸が少し驚いたような顔をして立っていた。




 どうやら、烏丸がおれの首筋に息を吹きかけたらしかった。




「な、何すんだよ」




 本気でビビッちまったじゃねえか。




「ご、ごめんね。そんなに驚くとは思ってなかったよ」




「本当に情けないわね、高村君。全く進歩していないじゃない。……それに比べて、烏丸君は平気そうね」




 おれを驚かす余裕があるくらいだからな。




「そうだね。慣れってやつかな。霊なんてそこら中にいるから」




 ユーレイが見えるっていうのも、多分大変なんだろうな。




「素晴らしいわ、烏丸君! 私は、あなたのような人材を求めていたのよ」




 目をキラキラさせて言う白鳥。




「では、早速、霊が見えるというあなたのお手並み拝見と行きましょう。……今、私たちの周りにはどれくらいの霊がいる?」




 辺りを見回す烏丸。




「そうだね。……五、六体はいるね」




「そ、そんなにいるのか……。怖ええ」




「何処に多いかしら?」




「……ここの階の奥と、地下かな」






 奥の部屋は手術室であった。




 メスなどの手術用具が、そのまま残っていた。




「……何で、取り壊さないで残しとくんかな」




「そうよね、サッサと取り壊さないと霊の溜まり場になってしまうのにね」




「……早く取り壊してしまうべきだよね」




 ふと、手術室の壁を照らすと、赤いシミのようなものを発見してしまった。まるで、血のような……。




「高村君は、ここでカメラを回していて頂戴。私と烏丸君で地下室に行くから」




「ってことは、おれはここに一人⁉ 無理無理、絶対に無理だって。こんな所に一人とか、怖すぎだって! おれを一人にしないで~」




「大丈夫よ。あなたは死なないわ。私は守ってあげないけれど」




「残酷だ。白鳥、お前は鬼だよ」




 白鳥と烏丸は二人で行ってしまった。




 ビビリのおれを一人残して……。




「へっ、別に怖くなんかないんだからな」




 ツンデれてみる。が、空しいだけだった。




「ざ~んこ~くな~」




 あの名曲を歌ってみた。




 なんか喋ってないと、おれのチキンハートが持たないので、とにかく大きな声で歌うことにした。




「となりのト……って、さっき何かきこえなかったか?」


 ジブリメドレーに突入していた所で、何かが聞こえた気がした。


 悲鳴のような、何か。


 嫌な予感がして、手術室を出る。


 角を曲がると、地下室に続く階段の前に誰かが立っていた。


 立っていたというより、立ち尽くしていた。


「何かあったのか、烏丸?」


 烏丸はおれに気付くと、怯えたようにおれを振り払い、言った。


「僕じゃないっ!」


「は、何が……」


 そこで気付いた。


 白鳥が階段の踊り場で倒れていた。


「し、白鳥っ⁉」


 おれは急いで、白鳥に駆け寄った。


「おっ、おい、大丈夫か」


「……う、うーん、高村君?」


 良かった、意識はあるようだ。


「ていうか、何があったんだよ? 烏丸はあんなだし」


 階段の上の烏丸は、床に座り込んで何かブツブツと呟いている。


「彼、ただ霊が見えるだけではなかったみたいね」


「だから、どういうことだよ」


「烏丸君は、どうやら霊媒体質のようね。霊に取り憑かれやすい体質よ」


「じゃあ、今、烏丸は取り憑かれてるのか?」


「……今はどうかしらね。でも、烏丸君に取り憑いた霊が私を突き落としたことは、間違いないわね」


 階段から突き落とした?


「何のために?」


「私に縄張りを荒らされたとでも思ったのでしょうね」


 そして、ちょうど良い所に霊媒体質の烏丸がいたという訳か。


「で、立てるか、白鳥?」


 未だ、起き上がらない白鳥に聞く。


「……無理みたいね。骨が折れてるかもしれないわ」


 それは大変だ。


「と、とにかく、セバスチャン呼んで来る」




 白鳥はセバスチャンにおんぶされて、車に乗った。


 おれは、情緒不安定な烏丸に付いていた。


 烏丸は車に乗ってからも、ずっと「僕じゃない」とか呟いていた。


 時々だが「兄さん」と言っているのが聞こえた。


「兄さん」って誰だよと思ったが、今はそっとしておくことにした。


 その日は、おれも烏丸も白鳥家に泊まった。







骨折したかもしれない白鳥さん、大丈夫なのでしょうか?


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