平和が一番だろ
それから、おれと白鳥と烏丸は、このホストクラブのボスというか経営者だという人の部屋に連れて来られた。
話し合いというか、修羅場だろう。
「あなたたちのしていることは、犯罪ですよ」
白鳥が強気に出た。
「未成年をこのような場所で働かせるなど、言語道断です。……証拠も挙がっているのですよ」
スマホの画像を見せる白鳥。
おれが出ても邪魔になるだけなので、黙っておこう。
「烏丸君にも事情はあるでしょうが、この場での詮索はしません。……それに、あなた方が烏丸君をもう二度とこのような場所で働かせない、暫くは私の保護の下に置くという条件を飲んでくれれば、警察にこのことは黙っておきましょう。……これは、あなた方のためではなく、烏丸君のためです。彼の将来を潰さないために、あなた方の英断を期待していますよ」
丁寧な口調で、大人とも対等またはそれ以上で話す白鳥。
今、お前、メチャクチャカッコいいぞ。
しかも、男装の麗人だ。カッコ良さ、八割り増し。
おれは、まだエリザベスお嬢様のままだったけど。
「で、君たちは凛君のお友達かな?」
ホストクラブのボスは穏やかな口調で聞く。
どことなく、烏丸と雰囲気が似ている。
悪い人には見えないが、人は見かけによらない。
「いえ、ただのクラスメイトです」
まあ、そんなに仲は良くなかったからな。
「ふーん、そうなんだ」
その後は、驚く程スムーズに事が進んだ。
烏丸は無事に保護され、セバスチャンを保護者として、近くのホテルで暮らすことになった。
「思っていたよりも、呆気無く終わったわね。バトル展開を期待していたのに、少しがっかりよ」
バトル要員は、車で待機してただけだ。
「平和が一番だろ、烏丸も保護できたし、良かったじゃねえか」
まあ、まだ一件落着とはいかないけど。
「烏丸君、今は事情を聞かないでおくわ。でも、これからは私がいるから心配はないわよ」
「……そうだね、ありがとう、白鳥さん」
烏丸は、いつものように穏やかに笑った。
烏丸君は無事、保護されましたが、まだ何かあるようで……。




