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白鳥さんの黒歴史  作者: 夢水四季
白鳥さんの黒歴史
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これからよろしく

 春……。それは、出会いと別れの季節……。




 桜がちょうど満開になった頃、おれは新たな人生の一歩を踏み出そうとしていた。


 まあ、こんなかっこよく言っても、ただ高校に入学するだけなんだけど。


 そう、おれ「高村 秀」は九年間の義務教育を終え、人生最大の苦難である受験を突破し、晴れて第一志望の高校に合格した。


 現在、クラス発表の表の前で自分の名前を探し中。


「高村、高村……っと、あった! 高村秀、二組ね」


 高村秀、県立桜木高校一年二組、在籍確認。





 一年生の教室は二階なので、階段を上がり、一年二組の教室のドアの前に立つ。


 やはり、一番初めというのは、少し緊張するもので、教室にどう入ったらいいものか考えてしまう。


「おはよー!」と元気にドアを開けて入ろうものなら、おれのキャラは明るくて元気に決定だ。


 やめておこう、誰も知ってる奴いないし。さっき、クラス表で確認したところ、おれのクラスには同じ中学出身が一人もいなかった。つまり、クラス全員初対面。


 結局、ふつうにドアを開けて入った。そして、黒板に貼ってあった座席表を見て、自分の席に座る。


 周りを見回すと、四、五人でかたまって話しているグループが二つあった。きっと、同じ中学出身なのだろう。


 おれは、特に話す相手もいないので、クラスの様子を観察することにした。




 突然、ガラッという大きな音がして、教室の前のドアが開いた。かなり大きな音だったので、教室中の視線が、ドアの方へ注がれる。


 おれも、その方向へ目を向けた。


 衝撃が走った、ような気がした。


 ―――――――――綺麗、というしかなかった。


 ドアを勢いよく開け、クラス中の注目を集めた人物は、座席表を見ると、真っ直ぐおれの方へと歩いてきた。


 腰まで伸びた艶やかな髪。小柄で、肌が雪のように白く、顔のパーツは全て整っている美少女……。


 これが、彼女の第一印象だった。多分、クラスの大半がおれと同じことを思っていただろう。


 しん、と静まり返った教室に、彼女の足音だけが響く。


 彼女は、おれの隣の空席だったところに腰をおろした。


 こんな綺麗な子が隣の席で、授業に集中できるかな……。


 少しすると、また話し声が聞こえ始め、教室は元のようになった。


 しかし、おれはまだ彼女のことが気になっていた。


 それで、かなり失礼だとは思うが、おれはずっと彼女を見詰めていた。


 だが、彼女がおれの視線に気づいたのか、ついに目が合ってしまった。


 おれは、とっさに目をそらした。


 しかし、彼女の視線が痛かったので、おれは諦めて、彼女と話すことにした。


「……えっと、君、どこの中学?」


 キミ、カワイイネ~は、ナンパなチャラ男。本当にそう思ったとしても、これは言えないので、おれは(多分)オーソドックスなことを聞いたのだ。


 彼女の声は予想通り、可愛い声だった。  


「人に名前を聞くときは、まず自分から名乗るのが常識でしょう」


「あ~、うん、そうだよな。……おれ、高村秀。出身中学は、青山西」


「そう」


「え、っと、これからよろしく」


 そういえば、名前を聞いていない。


「私に話しかけないで。ド阿呆のナンパ野郎君」


 そんなことを言われてしまい、おれは二の句が継げなかった。



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