出血大サービス
「何か欲しいものはあるかい。何でも買ってあげるよ。」
私は、さらってきた子供に言いました。
「じゃあでっかいくまさんのぬいぐるみが欲しい。」
子供は無邪気に言いました。
私は闇商人の元へ行き、自分の体を傷つけて取った血を売りました。
悪魔である私の血は、黒魔術や薬に欠かせないため、高く売れます。
商人は醜い笑顔で言いました。
「ガキの機嫌取りの為に、どうしてここまでするのかねぇ。」
「こうするしかないのですよ。・・・ところで、大きなくまのぬいぐるみはありますか。」
「ありますとも。」
血を売った代金で、ぬいぐるみを買って帰りました。
子供は、ぬいぐるみを受け取ると、はしゃぎだしました。
ようやく大人しくなったと思ったら、子供は私の方を見て不思議そうな顔をして言いました。
「おじさんは、ここに一人で住んでいるの?」
「そうだよ。」
「家族はいないの?」
「いないよ。」
「どうして?」
「おじさんはね、親に捨てられたんだよ。悪魔だからね。」
「かわいそうだね。」
「お父さん、お母さんは優しいかい?」
「うん。でもたまに怒るよ。」
「そうかい。おじさんはうらやましいよ。」
「おじさんにも、きっといつか家族ができるよ。」
「そうなったらいいね。」
夕暮れ時になり、私と子供は日の光でオレンジ色に染まりました。
「わたし、そろそろ帰るね。お母さんが心配しちゃう。」
「そうか。帰っちゃうのか。気をつけて帰るんだよ。」
「うん。またね。」
子供は私に手を振ってから、走って行きました。
さて、あの子はまたねといいましたが、本当にまた来てくれるのでしょうか。