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魔導船

質問に聞く。

「魔力で動く船に改修出来ないだろうか。」

- 改修は可能です。動力として魔力を使うのであれば、魔導推進装置の魔法陣を魔核に描き、魔力を取り出し魔核に伝える魔道具、それに魔力の源となる魔晶石を作れば良いだけです-


「スクリューはどうしたらいい。」

- 必要ありません。魔導船ですから、魔力で動きます-


「しかし、作るのは難しそうだな。」

- 魔導動力の仕組みを理解し、創造することを想像できれば、光の精霊ですから、簡単に作れます。いっそ、この海賊船を魔導船に改修することを想像すればいいのです。すると空を飛ぶことも可能になります。-


「確かに。で、教えてくれるのか。」

- 承知しました。今晩、睡眠中に注入します-


「頼んだ。」

- お任せ下さい-


「ついでに、魔術の知識も注入してくれないか。」

- 私の存在意義が・・・。失礼しました。一度では負担が大きいので、数日かかりますが、よろしいでしょうか-


「頼む。それに、お前は拙者の大事な友人であり、相談相手だ。何を心配しているのだ。それだけでも十分なのに。」

- 嬉しく心に留めます-




魔導船が完成した。

以外に簡単だった。想像力と創造力があれば。


タカオウが獲って来たワイバーンの魔石を魔核と魔晶石に変換し、魔核に魔法陣を描いて、動力機関となる魔道具と魔晶石から魔力を伝える魔道具を作る。完成すると、同様に結界発生装置を作った。魔核と魔晶石から作る。

知識があれば簡単な仕組みだ。



船は、与平が思い描く通りに形と構造を変え、全体を硬化させると頑丈な船が完成する。

船室、船倉と甲板には亜空間に貯蔵していたトレントを板に加工して貼って圧着させた。船体は白く、甲板は木目で美しい。


錬金術の素養と魔力があれば出来る。

時間の制約のない今の与平は魔導船建造だけに集中できた。


一度作った魔道具はいくらでも複製できると質問が教えてくれた。問題は魔力をかなり消費することだそうだ。だが、それは問題ない。魔力は十分。



処女航海に出ることにした。島の外を見てみたいという欲求いや好奇心は強い。

岸壁停泊する魔導船は白く輝き、形は柔らかく丸みを帯びている。

しかも帆がない分、すっきりした美しい船形である。小さい頃、こんな船があればと思った夢を形にした。我ながらいい感覚をしている、気がする。



操舵室に据え付けられた魔導回路で船を操る。要するに一般的な動力船と変わりない。違いは無音で進むことである。

動力船と同じく前後進レバーと舵があり、飛ぶ時の為に浮遊レバーがある。




岸壁を出航した魔導船は沖合に出ると航海試運転に入る。

帆船では到底出し得ない速度で進む。

知らないが、この世界では最速の船だろう。

快適な船旅を楽しむ。揺れも無いから船酔いもしない。



次に、飛行に切り替える。浮遊レバーを押し、前進レバーを押すと白亜の船は海面から浮き上がり、音もなく高度を上げる。海上から100メートル上がると水平飛行に移った。飛行中でも振動や揺れもない。島を一周し、今度は高台上空に向かう。浮遊レバーを上げると頂上に向かう。着くと、浮遊固定させる。



一瞬考えた。「タカオウサイズの魔獣に襲われたら。」

- 結界防壁を備えています-



「耐えられるだろうか。」

- 2種類の結界防壁があります。一つは常時発動、もう一つは緊急発動です。


「自動で張れないのか。」

- 張れます-


「そうだった。魔法陣を描いたのは自分だ。」


- 与平殿の知識にあるはずです。何しろ建造されたのは与平殿ですから-

「部分に集中しすぎて、全体像を掴めていなかった。頭を切り替える必要がある。」


- 了解です-



「ついでにどこかの街まで行ってみようか。方角は判るか。」

- 判ります。では、自動操縦でアーリエント王国の上空まで航行します。地上から見えないよう偽装します-


「頼む。」



島から南に向かう。島が小判大になるまで高度を上げ、そこから、速度が上がる。周囲は海ばかりで、高速で進んでも実感がない。小半時経った頃、微かに陸地の影が見えて来た。あれがアーリエント王国。


そのまま進んでいると突然、

- 大型の船がクラーケンに襲われています。助けに入りますか-


質問が知らせて来る。

「もちろんだ。船に近づこう。」


下を見ると、巨大なイカのクラーケンが船の甲板に足を伸ばしている。船員たちが剣や木材棒で立ち向かっているが、旗色は良くない。弾き飛ばされている者もいる。

魔導船をクラーケンの上空に停泊させ偽装を解く。甲板にしがみ付いているイカに触れ結界で包み、魔力を吸い取る。足がしきりに蠢く。


イカの足は何本だろう、多いような気がする。



タカオウを呼び出した。

《タカオウ、イカだ。》

《旨そうだ》

《持って行け》


タカオウの羽槍が、イカの胴体に次々とめり込んでゆく。

動けない巨大イカ。

タカオウが上空から舞い降りて、イカを掴むとそのまま、跳び去ってしまった。



与平が甲板に降り立つと、剣や木材を持った船員達が集まって来た。

「お前は何者だ。」

「拙者は与平という冒険者だ。先ほどのギガントイーグルは拙者の従魔だ。もう、心配ない。」

「じゅ、従魔だと。そんなことがあるものか。」

「疑うなら、もう1度呼び戻すが、いいか。」



船長帽を被った男が走り寄って来た。

「待ってくれ。皆の者、剣と木材を下ろせ。私は海洋大臣の長田だ。助けてくれたのを見ていた。感謝する。」

「与平と言います。アーリエント王国の船ですか。」



「錦国の貨物船だ。錦国の堺港からアーリエント王国のマリン港に向かっている途中だ。私はアーリエント王国の国王に謁見するために来た。こんなところでクラーケンに襲われることはないので、油断していた。通常なら魔導推進装置で逃げるのだが、想定外の水域だったのだ。与平殿の船は魔導船のようだが、空を飛べるとは巨大な魔石を使われているのだな。」


「ワイバーンの魔石です。」

「この船の推進装置の動力源も魔石から取り出した魔力です。魔晶石が入手できないので、非常時だけ稼働させます。」



魔晶石が入手できないと聞いて、不思議に思った。錬金術師はいないのだろうか。いないのかもしれない。だとしたら面倒なことになりそうだ。これ以上魔導船の事を探られるのは不味いと考え、一刻も早くこの船から離れることを優先することにした。


「長田大臣、拙者はたまたまここを通りかかったのですが、先を急ぎますので、失礼いたします。」

「待たれよ。まだ、謝礼が、」


与平は魔導船に転移すると、そのまま高度を上げ、アーリエント王国に向かう。




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