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海賊

探知すると、『盗賊の帆船』と出た。


海賊船だ。洞穴の岸壁に向かっているのは間違いない。

どうすればいい。海賊は命知らずで残酷というイメージしかない。



急いで洞穴に転移する。

生活に欠かせない物を持って隠れることを考えていたが、家ごと亜空間に収納できないのだろうか。

やってみる価値はある。


家を他の場所に出せば、いつもの生活を続けることが出来る。

最悪、亜空間で暮らせる。




家の前の階段の前に立ち、亜空間を開け、収納を唱えると、消えた。

成功した。こんなに簡単でいいのか。光の精霊の力は反則である。


家が入るのであれば、畑や果樹園も収容できるのではないか。

できた。全て収容できた。ひょっとしたら、この島全部入るのかもしれない。




海賊船が島に近づいてくる。動きを見張ることにする。


「親分、見えてきましたぜ。」

「随分久しぶりだ。水路はまだ、使えそうだな。」


海賊の帆船は水路の前に来ると、ロープを持った男たちが、岩場に飛び移り、ロープを引いて誘導してゆく。

洞窟の中に入ると、海に飛び込み、ロープを引いて泳いで行く。

波けし岩を回って岸壁にたどり着くと、岸壁に上がり、ロープをフックにかける。



「親分、問題なさそうですぜ。」

「うむ、着岸したら水の補給だ。泉に向かえ。」


部下達が樽を担いで、洞穴を出る。

到着したが、水がないのに慌てている。


「おい、泉が枯れたのか。探せ、水がないと、俺たちが干上がってしまう。」


男達が散って行く。誰も成果なく戻ってくる。



洞窟に帰り、お頭に報告する。

「何だと、ないだと。ここに来たのは随分前だ。泉が枯れていても、不思議ではないが、どうしたものか。今はまだ乾季だ。雨も期待できないぞ。船を出そう。次の隠れ家に行くしかない。」

「親分、魔獣が向かって来ます。」

「早く乗り込んで、船を出せ。」


部下達が飛び込んで船を誘導する。皆が乗り込むと、岸壁を離れ、帆を揚げた。

それを見届けた黒熊は、住処に戻って行く。



男達が泉にやってくる少し前、与兵は泉を丸ごと、水も1滴残さず収容し、源泉を凍結させた。


海賊船が沖に消えたのを確認すると、水を戻し、源泉の凍結を解除した。

つまり個体を液体に変換した。暫く待つと、砂を巻き上げて、水が湧いてきた。


家、畑、果樹園を元あった場所に取り出した。





数日後、出航して行った海賊船は既に島陰さえも見えない大海に乗り出していた。だが、異変は突然起こった。

首領と部下達は海に放り出された。

海賊船が消えてしまったのだ。


周囲には目標とする島陰はない。

首領も目指す方向がわからず、唯々浮いているだけである。

浮きになりそうな浮遊物は全くない。


時間が経つに連れ、疲労が激しくなってくる。

1人ずつ、海中に消えて行く。

最後に残った首領は、「こんな馬鹿な・・・」と呟いて海中に消えた。

海賊達は目を開けた。


「ここは何処だ。」

「お頭、飛んでますよ。鳥の背中です。風が強くて息ができません。」

「でかい鳥だな。」

「ギガントイーグルのようです。」

「何だと、どうしてだ。」

「頭、着陸しました。降りましょう。」

「ここから降りたら死ぬぞ。」


それでも何とか、羽を掴みながらやっとのこと降り立った海賊達は、そこが魔の森であることを直ぐに思い知ることになる。

生き延びることが出来るだろうか。ああ、もう獰猛そうな魔獣がやって来た。




与平は全てを元に戻した後、温泉に浸かった。

ゆっくりしたかった。思わぬ訪問者に精神的に疲れたからだ。


歩いているカニに魔力を纏わせ、取り込む。夕飯だ。

住処まで歩いていると風が強くなり、雲が出て来た。雨風だろうか。

海賊の首領は、今は乾季だと言っていたが、本当だろうか。怪しい。



洞窟に戻り岸壁から海を見ると波が高い。雨が降り出した。洞窟の中で良かった。天候の影響はない。

住処に戻ると亜空間からカニを取り出して、大鍋で茹でる。

動き回るので、木の蓋で抑え込む。茹でたカニをテーブルに置く。

カニが入るような大きな容器がなかった。


足を3本食べたら、満腹になった。食い過ぎた。

大皿に殻を剥いた身をいれると、山盛り一杯になった。

アイテム空間に入れておく。




寝室に入り、寝る前にもう一度地図を見る。

「ダンジョンって何だろう。」


質問に聞いた。

- 魔獣の住処です。ダンジョンマスターがいるダンジョンでは、魔獣を狩ると褒美が貰えます。いないダンジョンでは、狩った獲物は自分の物になります-



数日後、出航して行った海賊船にはマナを纏わせており、洞窟の岸壁に転移させた。海賊達はタカオウの背中に転移させ、どこかに降ろすように頼んだ。この世界の事はこの島以外の事は知らないから、タカオウに全て任せた。


海賊船に乗り込む。

どんな略奪物があるのか知りたくて待ち遠しかった。


甲板に上がり、操舵室を覗く。もちろん人影はない。

船だけを転移させたのだから当然だ。

甲板の下の船室には船員たちのベッドが固定されて並んでいる。

その奥の階段を降りると目指す船倉であった。

頑丈な南京錠が扉についている。壊して開ける。



期待外れであった。

こんな中型船で大型船を襲えるわけでもなく、流された漁船や漁村を襲って食料を調達するのが関の山だったのだ。



金銀財宝どころか、金目の物など殆どなかった。くさやのような干し魚、干しモロコシ、塩、砂糖、酒、醤油など。何、醤油! 醤油があった。

何とか顔が綻んだ。



船の捜索を終えて、降りてから、さて、この船はどうしようかと考える。

このまま置いておいても問題ないのだが、海賊船は目立つし邪魔なだけだ。

船の形状を変えるのは問題ないが、帆掛け船では頼りないし、1人で操るのは難しい。



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