黒熊の家族
あの黒熊です。どうなるのでしょう。
与平を見つけると、駆け寄ってくる。敵意はない。何度か見かけているので、怖さはない。でも、巨体だ。やっぱり怖い。
黒熊は尻を地面に降ろして座り込んだ。戦うつもりはないと言う意思表示なのか。
よく見ると、口に何かを咥えている。栗だ。イガの付いた栗を与平の足元の地面に落とした。
そのまま、黒熊が与平をじっと睨みつけている。
厳しい目つきではなく、穏やかに見える。欲しくないかと言っている気がする。
黒熊が突然視線を外し、背中を見せた。林の手前まで行き与平を振り返る。
ついて来いという意味だ。体を落とした。乗れと言うことか。
その大きさに圧倒されそうになるが、与平は恐る恐る近づいて、背中に触った。
黒熊は微動だにしない。与平は飛んで黒熊の背中に跨った。
黒熊は走り出した。前世の熊の3倍以上の大きさがあり、走る速度も凄い。振り落とされそうになり、懸命に熊の毛にしがみつく。
林の中を左、つまり、南に向かっている。
暫くすると開けた場所に出た。
ハマヒルガオやハマギクに似た植物の群生があり、右奥に切り立った断崖が見える。丘の上から見える断崖の下に洞窟が見えてきた。
黒熊は、その洞窟に入り、その中をさらに進む。壁が薄明るい光を放っており、視界はまずまず。
突然、明るく開けた場所に出た。
栗や団栗等の樹々が群生し、実もついている。
上を見ると、青い空に太陽。
与平が黒熊から下りると、もう1匹の黒熊と子熊がやって来た。
明らかに家族である。
子熊は母熊に纏わりついている。
与平に気づくと、栗林に走り、1本の樹を揺すり始めた。
栗が樹から落ちる。
子熊が与平を見つめている。栗を拾えと言うことのようだ。
与平が、子熊に近づいても逃げずに体を摺り寄せてくる。
両手で体を撫でても、じっとしている。
イガから栗を取り出して集める。子熊も栗を咥えて運んで来てくれる。
大きな栗が1人では食べきれない程、集まる。
集め終わると、子熊と遊ぶ。
受け止めて、押し相撲になる。力比べになるが、結局、押し倒される。
黒熊家族に招待されたようだ。母熊も穏やかな目つきを向けている。
集めた栗をアイテム空間に入れ、黒熊の家族に手を振ってから、家に戻った。
与平は、浜辺で炎球を放って、魚を集め、黒熊の住処に戻った。
栗の樹の下で、黒熊家族が食事中だった。
木の実を割って、中身を食べている。
体の大きな黒熊は、1日中栗を食べても、お腹一杯にはならないだろう。
栗の樹の葉の付いた枝を集めて、その上に魚を取り出して置いた。
子熊が走って来て、また、押し相撲になった。
黒熊家族が魚に鼻を近づけていたが、新鮮な魚だとわかったのか、食べ始めた。どうやら、気に入って貰えたようだ。
与平が子熊の頭を撫でていると、親が笑っているような気がした。
手を振って、住処を離れ、家に戻った。
それからも、時々、魚を持って会いに行く。
彼らも、この島で食料調達に苦労しているのかもしれないが、最後は木の実が助けてくれる。それにしても、太陽まで輝く、あの洞窟は何だろう。
魔術訓練を続けながら、畑や果樹園の世話をしながらの生活を続ける。
そんなある日、温泉の近くで、カニを探す。
岩の隙間を覗くが、見つからない。
岩に打ち寄せる波際を探知すると、海の中に何匹もいる。
潜って取ろうと、服を脱ごうとして、沖の方に目が向いた時、かなり遠くに船の帆影があるのに気づいた。
探知してみると、『盗賊の帆船』と出た。
海賊船だ。洞穴の岸壁に向かっているに違いない。
どうすればいい。




