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3 駅で朝におお騒ぎ





自宅から最寄りの駅までは、徒歩でおよそ20分の距離にある。桜並木の土手道をローファーを履いて駆ける私。何だか青春って感じがするなぁ〜。





「おはようございま〜す!」



「おや、凪彩(なぎさ)ちゃん、おはよう。行ってらっしゃい」



「朝早いのね。行ってらっしゃい」





すれ違う人、わんこに挨拶をしながら桜並木を抜けると、高架橋の下を通って横断歩道を渡れば最寄りの駅だ。

横断歩道まで来ると、運が悪いことに赤信号に変わったばかり。



くそぉ〜タイミングが悪かったなぁ〜〜



私は横断歩道の少し手前で、信号が青になるのを待つ。

急いでいる時に限ってこうなんだから。



じっと信号機を見つめて、その場で待つ私。

ここの信号、長いんだよなぁ〜………





そんな事を考えていると、


何の前触れもなく目眩がして、近くにあったガードレールに手をつく。立っていられないほどの眩みが私を襲った。

ヤバっ、走りすぎたのかな。目の辺りを手で抑えて、深く息を吐く。



信号が変わりそうになる時には目眩も落ち着き、立ち上がって前を向く。






前を、



向いたはずだったのだが、






昔のアナログテレビでよくあった、ザーという騒々しい音とともに、テレビ画面いっぱいに映し出される〝砂嵐〟のような映像……… 正式名称を〝スノーノイズ〟と呼ぶらしいが、そのノイズが目の前いっぱいに映し出された。








えっ、なに、これ………








そのノイズの後に白黒で荒い映像が流れ出す。まるで昔の音のないサイレント映画のように、ただ映像だけが流れる。



横断歩道を渡ろうとしているのは私?

あれっ、私の後ろから誰かが走ってくる?そしてその後ろから……あっ、あれは………



映像は中途半端な所で途切れ、現実世界へと景色が戻る。








私は半信半疑だったが、青に変わった信号を渡るのを待って、後ろを振り返る。

すると、さっきの映像で流れていた光景がそのまま再生されたかのように時は流れる。映像と違うのは、私が横断歩道を渡っている最中ではないという事。



そして走ってきたのは、やはり幼稚園児の女の子。あの映像のままだと、あの子は………



私の前を通り過ぎようとする女の子の腕を、私は慌てて引っ張り止めた。



その拍子で、女の子は後ろにこけてしまうが、そこは私が並外れた反射神経で何とか受け止める。








ガシャーーーーーーーーーーーーン









そしてそのすぐ目の前の道路では………猛スピードで左折してきた一台のトラックが、すぐ近くにあった信号機とガードレールの間に挟まれて止まっていた。



すごい衝撃音と風圧だった。

こんなのに、もし、轢かれていたら………



運転手はエアバックが作動したのか、何とか無事のようだ。



もし、あの映像のままだったら、私は横断歩道を渡り終えていて無事だったけれど、後ろから走ってきたこの子は………トラックに轢かれて数メートル先の道路まで飛ばされていた。



どうなったかなんて、考えたくない。



私は心臓の音がバクバクするのを感じながら、女の子を抱き抱えていた。女の子も数秒経って、ようやく自分が置かれた状況を理解したのか、






「うっっ、うわわわわぁぁぁぁぁん!!」






と、大きな声で泣き出してしまった。




私だって泣きたい気分だよ。でもこの子からしてみたら、私の方がずっと大人で、私はどちらかと言うと守る側。





「大丈夫、大丈夫だからね?」





私は女の子を抱きしめて、背中をさする。それでも泣き止まない女の子。そうだよね、怖かったよね?

私だって、怖かったんだもん。






「………!?凪彩(なぎさ)!?」






女の子をぎゅっと抱きしめて地面に座っていると、そこには慌てた様子の 蛍火(けいか)の姿があった。

あ、こんな時だけ下の名前で呼ぶんだ。ずるいなぁ。





蛍火(けいか)が来てくれて、内心ホッとしている自分がいる。安心したら、何だか甘いものが食べたくなっちゃってきたよ。もう。





そうこうしているうちに辺りは騒然とし、近くにいた人が警察と救急車を呼んでくれたみたいで事態は収集していった。

トラックの運転手は救急車に乗せられて、運ばれていった。救急隊の人に私たちも乗せられそうになったけれど、私はどこも怪我をしていなかったし女の子も怪我をしていなかった為それを断った。


もし後から何か違和感や痛みが出てきたら、すぐに病院へ行くように告げられて救急車は去っていった。


その後、警察に事情を聞かれ、女の子を警察に預けようとしたけれど、女の子はなかなか繋いだ手を離してくれず、私は警察と一緒に親御さんが来るのを小一時間ほど待った。

蛍火(けいか)も学校に連絡を入れてくれたみたいで、遅れて登校する旨を伝えてくれた。電話口では何やら、蛍火(けいか)も私に付き添って遅れることを伝えていたようだった。


私は何だかそれが嬉しくって、少しむず痒かった。






それから警察のご厚意で、学校まで送ってもらった私と蛍火(けいか)


車の中で何度も何度も、警察の方にお礼を言われた。

さっきも女の子のお母さんから何度も頭を下げられたばかりだったので、もう勘弁してくださいって気持ちで恥ずかしかった。




「でも彼氏さんはびっくりしたんじゃない?後からどっと疲れが来るかもしれないから、彼女さんの事よく見ていてあげてね」




なんて、年配の男の警察の方が言うもんだから、二人で慌てて、





「「幼なじみです!」」





ってハモっちゃうし。警察の方は可笑しそうに笑っていたけれど。





学校に送ってきてもらった私と蛍火(けいか)


その後理事長と警察の方々で話をしたらしく、女の子を助けた人命救助により、是非とも表彰状を送りたいという話にまでなったそうだ。職員室内まで騒然となったそうな。


なんか大事になっちゃっている………





翌日には、校内新聞で〝学校一の美少女!子どもを助けて大手柄!!〟などという見出しの新聞が貼られる事を、この時の私はまだ知らなかった。









*****









俺はスミレさんからアイツの弁当を預かって、少し急足で駅へ向かった。出た時間にそんなに変わりがないのであれば、追いつくかもしれないと思ったからだ。



でも俺は急足ではなく、走って追いかけるべきだったと後から後悔することになる。



桜並木を抜けて高架橋の下を通ると、その横断歩道の前で小さな女の子を抱きしめてへたり込んでいる、アイツの、凪彩(なぎさ)の姿がそこにはあったからだ。




女の子は大声で泣いていて、そんな女の子に震える声で




「大丈夫、大丈夫だからね?」




と、落ち着かせようとする凪彩(なぎさ)。何が、何が大丈夫なんだよ。自分だって震えているくせに。

俺は両手をギュッと握りしめて、凪彩(なぎさ)のもとへ駆け寄る。




「………!?凪彩(なぎさ)!?」




周りの目を気にする余裕はなかった。


俺は駆け寄ると、凪彩(なぎさ)とその女の子ごとグイッと抱き寄せた。どこも怪我、していないよな?

俺は冷え切った凪彩(なぎさ)の手を握って、救急車と警察のサイレンの音がなるまでずっとそうしていた。


そうしていないと、ふっとした瞬間に消えてしまうような気がして、落ち着かなかった。












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