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07.脳筋令嬢執事の実力


「お・じょ・う……?」


「……」


 離れていた場所に立っていたはずのバトラーがいつの間にか背後に立っている。

 そして声色も4オクターブくらい低い感じで、如何にもご立腹だということがすぐに分かった。


「えっと……てへっ♡」


「てへっ♡ じゃないですよ! なんですかあれはっ!」


「ふっ、どうやらまた強くなってしまったらしい」


「は?」


「すみませんでした」


 素直に謝る。

 でないと後が怖い。


 特にバトラーが本気で怒るとマジで怖いから……

 今も眼光鋭くてヤバいし。


「そ、その……私も想定外だったのよ。全然力いれてなかったのに……」


「鍛えているのでしたら加減くらいはコントロールできるようになってくださいよ! これじゃあ美闘士じゃなくて破壊闘士じゃないですか」


「おお、破壊闘士……それもそれでありだな」


「あ?」


「大変申し訳ございませんでした」


 その顔、怖いからやめてほしい。

 その辺の巨大魔獣よりも迫力あるから……


「全く……修繕費でいくらかかると思っているんですか」


「そ、そこは……また私のポケットマネーから出すから……事後処理もその……ね?」


「当然です」


 バトラーはそう言いきる。


 当然ながら自分の失態は自分で尻拭いをするつもりだ。

 というかいつもそうしてきた。


 自業自得とはいえ、痛すぎる出費だけど……


「とりあえず街内に入りますよ。さっきので粗方倒したかと思いますけど、残党もいるでしょうから」


 というわけで、街内に入る。

 さっきまで賑やかだった街は一変して静寂に満ちており、ゴーストタウンのような雰囲気に変わっていた。

 

「衛兵の姿も見えませんね。これは一体……」


「バトラー、あれを見て」


 私が指さす先には大きな爪痕が刻まれた建物があった。

 それもかなりのサイズだ。


 どうやら一番厄介な奴が街に入ってしまったらしい。


「ここからがお楽しみってわけね! なんだかワクワクしてきたわ!」


「ならさっさと見つけますよ。ん……?」


 はぁ……とため息をつくバトラーと同じタイミングである場所へ目線が向く。

 血だらけになりながらも、建物の壁にもたれている衛兵を発見したのだ。


「大丈夫ですか!」


 私たちがすぐに駆け寄ると、衛兵は朦朧とした意識の中喋り始めた。


「ううっ……貴方たちは。もしや……逃げ遅れて……」


「喋らないで。バトラー」


「お任せを」


 バトラーが応急処置を始める。

 傷の具合は正直にいうとあまりよくない。


 あの巨大であろう爪の被害にあったのだろう。

 腕から大量の血が流れ出ていた。


「とりあえず止血は完了しました。後は……」


 バトラーは止血作業を終えると、怪我をしている腕に手を当てた。


「医神パイエオンに誓う。我が治癒のエーテルを解放し、この身に慈英を与えたまえ……【ラ・リザレク】」


 治癒魔法を使い、衛兵の身体を癒していく。

 バトラーは元々、優秀な治癒術師だった。

 

 執事になる前は医学の道を志していたとかなんとか。

 その辺は私も詳しくは知らないが、治癒魔法を使わせたら彼の右に出る者はいない。


 現に深く抉りこんだ傷もみるみる治ってきていた。

 

「な、なんだこの治癒魔法は……傷が塞がっていく……」


 衛兵も驚いているようで、同時に少しずつ顔色もよくなってきていた。


「これでひとまず治療は完了ですが、傷口は完全に塞がっていないので後は医師にみてもらってください」


「申し訳ない。恩に着る」


 一通りの治癒を完了すると、衛兵は深く頭を下げた。

 

「治癒した直後で申し訳ないのですが、一体ここで何があったんですか?」


 バトラーが衛兵に尋ねると震えた声で答えた。


「アホみたいに大きな魔物が突然街に入ってきたんだ。見た目は魚類種みたいだったが、二足歩行で立っていて……」


「その魔物は今どこに……?」


「最後にみた時は南門の方に向かっていた。恐らく今は他の衛兵たちが戦っているだろう。さっき何かを叩きつけるような大きな音がしたからな」


「なるほど。お嬢」


 バトラーは事情を聞くと、すぐさま私の方に振り返った。

 その表情を見るに言いたいことはすぐに分かった。


「今回は裏方に徹するのね?」


「ええ。この様子だと他にも負傷者がいるかと思いますので私は救護に回ります。彼も私が避難キャンプまで連れて行きましょう」


「それがいいわ。どっちみち一緒にきても貴方の出番はないだろうしね」


 いつもはバトラーも保険として同行するのだが、今まで出番があったことはない。

 自分でいうのもあれなのだが、鍛え始めてから自分の頑丈さに驚いてしまう。


「ではお嬢、後は頼みましたからね」


 バトラーはそう言うと、衛兵を連れて去っていった。


「さて、お楽しみの大物狩りをしましょうか」


 私はグッと握り拳をつくると、街の南側方面へと走るのだった。

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