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05.脳筋令嬢の秘密


「ま、魔物が出ただと!? 衛兵は何をしていたのだ!」


 秘書らしき人物からの報告を聞くと、フリードリヒは苛立ちながらも即座に立ち上がった。


「他の者は?」


「もう既に避難をしております! 会長も早く脱出を!」


 どうやら他の者は避難したらしい。

 会長は焦りを見せながらも、こちらに視線を向ける。

 

「フィオレンティナ様、ここは危険でございます。我が商会に属する護衛団をつけさせていただきますのですぐに脱出なさってください」


 そういうとどこからともなく現れた護衛団に周りを固められるが、私はすぐに拒否をした。


「いえ、その心配はございません。もう既に外に待機しているはずですから」


 外に出ると、既にバルク家の馬車が商会前に止まっていた。


「状況は?」


 バトラーが馬車の手綱を握るもう一人の使用人に駆け寄る。


「現在閉鎖中の北門付近の外壁から侵入したとのことです。現在、衛兵が結界門を展開して対応しております」


「住民の方は?」


「住民の避難はその他の門より順次行っております。今のところ、負傷者の報告は上がっておりません」


「分かった。お嬢、我々もいきましょう」


「ええ。皆様もどうぞ馬車の中へ」


 私は振り返ると、フリードリヒたちも乗るように誘導する。

 

「で、ですがバルク家の馬車に乗車することは……」


「こういう時こそ、助け合いが必要なのです。そこに身分なんて関係ないのですよ」


 今は一刻を争う時だ。

 そんな時に身分なんてこだわっていたら――


「で、ですが我々には護衛団をおりますのでフィオレンティナ様は先に脱出を――」


 ああああ、もうっ! 鬱陶しい!

 良いからはよ乗れや! 死にたいんかいな!


 ……なんてことは言えないので「どうぞどうぞ」と強引に乗せることに。


「郊外に避難用のキャンプが出来ているとのことなのでそちらまでお送りいたしますね」


「も、申し訳ございません……」


「なにをおっしゃいますか。命あっての物種といいますでしょう?」


 まぁちょっと護衛団も一緒なので重量オーバーなので馬車の耐久が心配だが、それで命が助かるなら安いものだ。


 それから私たちはフリードリヒたちをキャンプまで送り届けると、街の北側から程近い森林地帯の中に馬車を止めた。

 

「バトラー、例のモノは?」


「ありますけど……やっぱりやるんですか?」


「当然でしょ! こんな美味しい展開を逃してなるものか」


「街にとって絶対絶命な状況を美味しい展開って言わんでください」


 バトラーは心底呆れているようだ。

 だが私にとって、このような展開は美味しい以外の何ものでもない。


 普段から己を鍛え続ける者にとっては最高の舞台なのだから!


「そんなに戦うことがお好きなら冒険者にでもなればよいものを……」


「それが出来たら苦労しないわ」


「それは……そうなんですけど」


 貴族の……しかも公爵令嬢が堂々と冒険者など出来るわけがない。

 まぁ……戸籍等を偽れば出来ないこともないのだが、バレた時にはかなーーり面倒なことになる。


 おまけにそんなことがクソ親父の耳に入ったら、最悪の事態を招くのは必然だ。


 よって私は今日も『赤毛の美闘士』に変装し、各地で戦いを求めるのである。


「というか、何度もいいますけど貴方は公爵家の令嬢なんですからね?」


「それがなに?」


「いや……多分貴族家の人間でこんなことやっているの我が家だけですよ」


「いいじゃない! これぞオンリーワンってやつね!」


 別にいいじゃない。こういう貴族がいたって。

 街の緊急事態に安全な場所でコソコソやっている方が正直どうかと思うのだけれど?


 あと本来、今日は休日だったのだからこれくらい許されてもいいでしょ!


 そんな返しをすると、バトラーは深くため息をついた。

 

「全く、これだから脳筋は……」


「あ? なんか言ったか?」


「いえ、なにも」


 バトラーはすぐに口を紡ぐと、変装セットを差し出してくる。

 赤毛のカツラに、カラーコンタクト、極限まで軽さを求めた戦闘服……

 これがあれば、ほぼ確実にフィオレンティナとはバレずにやり過ごすことができる万能グッズだ。


 ちなみにバトラーも同行するので、いつもの執事服ではなくプライベートな恰好となる。

 彼の変装も傍から見れば冴えない小市民という感じで完璧なのだ。


「冴えなくて悪かったですね」


「貴方はエスパーかなにかなの?」


 こわっ。

 何も言ってないのに心を読まれたんだけど……


 まぁそんなことはともかく、私はすぐに変装を完了させると、馬車から飛び出した。


「とりあえず早くいくわよバトラー! 私のこの筋肉が唸りを上げる前に!」


「承知致しました……」


 私は乗り気じゃないバトラーを引っ張りだすと、再び街の方へと戻るのだった。

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