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魔法とは

「なあレーゼン、魔法ってどんなものなんだい?」


 セヴァンが切り出した。


「気になる? やっぱり気になるよね。その手の質問、今まで一万回ぐらいされたよ」

「ごめん、答えたくなかった?」

「一万回ぐらい聞かれて一万回ぐらい答えてるんだからべつにいいよ」

「そうか、じゃあ、教えてくれるんだ」

「別にいいよ」


 二人はとある森の中を歩いて会話をしていた。というのも、今は夕暮れ近くで、夜のための薪を探しているところだった。


 ジャンケンで組分けを決めたところ、セヴァンとレーゼンが一緒になった。


「これは一万回ぐらい言ったことなんだけどね…………魔法っていうのは、人間が体以外にいのままに動かせる魔力を動かすもの」

「え、それだけなの?」

「それだけだよ。雷とか炎とか爆発とか期待してたでしょ?」

「まあ……そうだけど」

「七千人くらいの人はみんなそんな反応するんだよ」

「ははっ、そうか」


 レーゼンはかがんで地面の枝を拾った。

 セヴァンは見ないように顔を逸らした。


「動かすって言っても、物理的に動かすだけじゃないよ。魔力を変質させることもできて、それで火とか雷とかを発生させることができる」


 レーゼンは拾い上げた枝を物色しながら言った。


「でもやっぱり基礎的なところは魔力の操作かな。あの大きい犬倒したときの魔法あったでしょ」

「ああ……アスファル、って唱えてた?」

「そう。あれはもっとも基礎的な魔法、魔力を操作して押し出す魔力砲だよ。私の場合すこし手を加えてるんだけどね」

「へえ……確かに魔力砲はよく見るけど、そんな単純だったとは思わなかったよ」

「剣振るのと同じだよ。振るだけなら剣術には見えないけど、大事な基礎でしょ。そして振るのを極めれば剣術になるでしょ」

「そうだね、その通りだ。剣にも詳しいのかい?」


 エルフは人間を振り返った。


「私、エルフだよ。何年生きてると思ってるの?」

「それは……わからない。百歳くらい、かな?」

「安く見積もってくれてありがとう」


 レーゼンは枝の採取に戻った。


「ど、どうも……?」


 セヴァンは足元の枝を拾い上げた。


「続き聞きたい?」

「それは是非とも」

「うん。それで、魔力を操るって言ってもね、人ごとに癖っていうか、個性が出るんだよ。剣にも同じようにね。だから、それによって得意とする魔法が決まったりする」


 パキリ、と枯木の枝を折った。


「レーゼンはどんなのが得意なんだい?」

「攻撃魔法は苦手だよ」

「そうなのかい?」

「別に、同じでしよ」


 レーゼンはセヴァンを指さした。


「ぼくが?」

「人殺すのは好き?」

「いや…………」

「そういうことだよ。魔法には本人の気性や心情や人生が色濃く出る。魔法にかかわらず、剣とか戦い方にも出るかな。でも魔法は、本人の思考に直結してるから、特にその時の精神状態にも左右されやすいんだよ」

「へ〜。ちなみに僕の剣ってどんな感じ?」

「優しくて鋭い。斬られてもあんまり痛くなさそうな剣かな。あんまり殺意がないよね」

「そうなの?」

「殺すっていう意識を強く込めて剣を握ってるようには見えなかったけど」

「よく見てるんだな」


 セヴァンは純粋に感心した。


「感じた通りに言ってるだけだよ」

「そうなんだ」

「他に聞きたいことはある?」

「うん……じゃあ、魔法陣って何?」

「外付けの魔力操作器官みたいなものだよ」

「それってどういうこと?」

「頭や体の中だとしきれない魔力の操作をしてくれるっていうことだよ。 頭の中でしきれない計算ってあるでしょ。それを紙に書き出すみたいな感じだよ」

「へー。分かりやすいね」

「一万回ぐらいも説明してればね」

「いいなあ、魔法って。僕も小さい頃憧れたよ。魔法使いみたいに、そこら辺で拾った枝を使って魔法の呪文を唱えて 魔法使い ごっこをしてたりしてたなあ」

「セヴァンも使おうと思えば魔法使えるでしょ」

「そうなの!?」

「ていうか人間全員できるよ。誰だって体の中に魔力を持ってる。体を動かす 中で無意識に魔力を操作しているよ。広義で言えばそれも魔法の一つだよ。〚体を動かす魔法〛」

「そういうことか。僕もサンダーとかファイヤーとかボムとかやってみたかったな」

「こればっかりは素質だね 。エルフはみんな魔法っぽい魔法が使えるみたいだけど、人間はどうしても素質に依存する。でも後天的に魔法が使えるようになる人だっているよ」

「そうなんだ。それは初めて聞いたな」

「雷に打たれたりだとか」

「絶望的だね。一瞬期待しちゃった」

「まるである日別人のように人格が入れ替わったとか」

「それはどういうことなんだ??」

「一回死んで生き返ったりとか」

「???」

「別にこれ以外にもほとんど魔法が使えなかった人がある日魔法の力に目覚めたり努力で魔法の才能が花開いたりすることもある。その人は魔法使いの家系だったり実は高名な魔法使いの子孫だったりするんだけどね」

「まあ僕は女神様から祝福された剣を頂いたからそっちを頑張ることにするよ」

「まあ人それぞれだからね。そろそろこんな感じでいいでしょ」

「ああ。教えてくれてありがとう」

「じゃあ戻ろうか。そろそろ眠くなってきたし」

「まだ夕方じゃないか、レーゼン」

「普通は夕方に寝るものでしょ」

「なんでいつも君はそんなに早寝なの?」

「エルフは狩猟採集民族だからね。日没になれば寝るんだよ。不健康な農耕民族と違って」

「へえ。エルフってどういう生活をしてるの?」

「そっちは三万回ぐらい聞かれたよ」





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