ドワーフの手料理
「工芸の民であるドワーフの料理が食べられるなんて……!」
操舵手――ルーロンと名乗った――は、皿の上に載せられたダヌビウス鮭の香葉の煮込みの前に、手をあわせていた。
「ドワーフっていうのは料理がうまい認識なのか?」
全員が焚火を囲み、その中の一人のディエンが言った。
「そうですよ! ドワーフと言えば料理と道具作りです!」
「それにしても、いつもいつも豪快な味ですが……」
テルンが皿とスプーンを持ち、文句を言っていた。
「テルン、何が豪快な味だってんだ。そこのお嬢ちゃんは感激してるぞ。ほら、嬢ちゃん一口食ってみろよ」
「はい! いただきます!」
スプーンでスープと共に鮭の肉をすくい、それを一口。
「――――!!」
カッ、と目が開かれ、次に彼女がスプーンを持つ右手をぶんぶんと振る。
口が素早く動いたかと思うと、すぐにごくりと飲み込む。
「おいしいです! ものすごく! ほんとに! ありがとうございます!」
「ほら見ろテルン。自分の舌を疑った方が良いんじゃないのか」
「おいしいことはおいしいんですがね……」
「おいしい! おいしいです!」
ひょいぱくひょいぱく、と手が止まらない様だった。
「どちらかと言うとがっつりおいしい系だよね、ディエンの料理は」
セヴァンも笑顔で口に肉を運ぶ。
「それですよ。私はそれが苦手なんです」
そういうテルンも、実は一度もディエンの食事を残したことがない。
「エルフの味覚からしても濃いでしょう、この味は」
「別に」
彼女は黙々とスープを口に運んでいた。
すぐに中身を平らげ、ずずーと飲み干してしまう。
「おかわり」
口を袖で拭いながら、皿をディエンに差し出した。
「な、テルン」
これ見よがしにディエンはテルンに顔を向けて見せる。
レーゼンの皿を受け取り、火にくべられている鍋から料理を盛り付ける。
「もっと食え」
「うん」
もらった瞬間に、レーゼンは口をつけて食べ始めた。
「よくそんなに食べられますね、レーゼンさん」
「うん」
もぐもぐと咀嚼しながら、素っ気なく答える。
「正直濃すぎる……。今回はレーゼンさん調節してくれなかったし」
「わふぁしはへつにエルホっふぉく味調節してるわふぇじゃないよ」
「えっそうなんですか?」
「料理のちひきにもおづいてるだけあよ」
「レーゼン、あんまり喋りながら食べるのはあんまり……」
セヴァンがたしなめる。
「てうんがしゃえりかけてきたんえしょ」
「ごめんなんて言ってるかわかんない」
「テルンが喋りかけて来たんでしょ、だそうです」
ルチフが補足情報を追加した。
「ドワーフの飯ってのは宴だ。俺の料理を食ってる限りはうまそうに食ってればなんでもいい」
「あからべついいえしょ」
「だから別にいいでしょ、だそうです」
「まあ、僕もまず楽しいのは大事だと思うよ。ディエン、おかわりくれるかい」
「わたしも! わたしもおねがいします!」
「私もおねがいします」
セヴァン、ルーロン、ルチフがディエンに皿を差し出す。
「よーしよし、全員もっと遠慮せず食え!」
赤いひげの顔を嬉しそうに歪ませながら、ディエンは三人の皿を盛り付けた。
「で、テルン。腹減ってるだろう」
「ま、まあ……ええ」
彼の皿は、とうの昔に空になっていた。
「で、なんていうんだ、聖職者」
「……おかわりください」
テルンは皿を差し出した。
「ようし、遠慮するな。俺の料理は男でも女でもでもエルフでもドワーフでも、うまそうに食うならだれにでも食わしてやる」
テルンの皿はすぐさま大盛になった。




