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帝下五家

 ビタロス帝国には、五つの家がある。

 それは帝国創立から続く家であり、皇帝になるという高貴な権利と責任を持つ唯一の家々でもある。

 何千年も前、伝承によると一柱の悪魔と、女神を崇拝するエルフの大王国との間に大いなる争いがあった。

 祝福を受けた種族エルフと、たった一柱の巨悪魔による戦い。たった一つの世界の汚点との戦いは、三日三晩続き、ついにエルフの王国の被滅によって終わりを迎えた。

 その戦いには女神までこの世に干渉をしたという。しかし、その悪魔によって王国が滅ぼされたことを女神は大いに嘆き、女神はこの世から目を背けてしまったという。

 そこから、世界は動乱の時代を迎えた。

 大いなる女神による祝福によって超絶な魔力を保持していたエルフの王、そしてその王族、その強大な力によって統治されていた王国は、ほとんど跡形もなく巨悪魔によって滅ぼされた。

 つまり、その王国に後継者は存在しない。すべて念入りに、巨悪魔によって潰されたという。

 しばらくの空白の時代を開け、動乱の時代が始まった。

 かの尊大なエルフの王国の流れを名乗るあらゆるものが、自らこそがそれである、と国々を乱立させ始めた。

 エルフの王国には及ばないものの、本当に大きな力を有した国家から、ほんの集落のあつまりのような、都市国家まで。

 そして、人類同士の闘争が始まる。

 どの国の遺された文献でも、その戦いは、空から無数の光が落ちて来たときに始まった、とされている。

 あらゆるエルフの王国の後継を名乗る国々が、これこそが神託である、と言い、戦いを始めた。

 この世に顔を戻した女神は、またこれに大いに嘆かれたという。

 そこで、女神はある国の人間、それもたった一人に祝福を与えた。

 その国の人間こそが、帝国の前身となる『ラティウム』という小規模な国の王であり、そして彼がこの世で最初の勇者とされる人物である。

 賢明な祝福を受けたその人間は、瞬く間に乱立していた周辺国家を統一し、その国々が位置していたとある半島を統一した。その『ビタロス半島』を統一した時点で、晩年、ラティウム王は新しい国家の建立を宣言した。

 それが、『ビタロス統一王国』

 ラティウム王は死ぬ間際、自らの死後、統一をした王国が終わらぬよう、女神に懇願をした。

 すると女神はそれを聞き入れ、彼が一身に受けていた祝福を分割し、彼の血筋の王国の五人の賢人にそれぞれ与えたという。

 そして、王国はそれから、その五人の賢人によって統治されるようになる。かつて一人に与えられていた祝福が分割され、五人に与えられた。つまり、それは五人の協力により、王国はラティウム王の治世のように安定を迎えるということを、五人は理解していた。

 五人の賢人の死後、その祝福はその子々孫々が継いだ。

 必ずしも国を治める者は五人とは限らなかったが、五つの祝福を持つ賢人達による統治は続いた。

 その賢人たちはそれぞれが王の称号を帯び、国を統治する任はその称号と祝福を持つ五つの家が代々持った。

 すなわち。


 スペス王家レガリス・スペイ レクス=プリムス

 ファートゥム王家レガリス・ファーティ レクス=セクンドゥス

 テールム王家レガリス・テーリ レクス=テルシウス

 センティア王家レガリス・センティエ レクス=クアルトス

 ユースティティア王家レガリス・ユースティティエ レクス=クイントゥス


 これらが帝国を支配するただ五つの家であり、これ以外には何があろうと認められない。

 そしてそこから何百年と続く戦の時代の中、国を指揮する意思として、戦争の指揮者が五王家の優秀な者から選出される。

 これが後の皇帝インペラトルとなり、その国は人類の統合を大志とする、『ビタロス統一帝国――シビタトゥム・フェデラタトゥム・ビトゥリ――』と名を変え、そこから長きに渡る帝国の時代が始まった。

 そして、帝国暦一七一〇年。悠久の帝国史の一章に名を残すであろう大戦争がはじまる。

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