寝起き魔王
「ん〜……」
時刻は昼上がり頃か。レーゼンはようやく目を覚ました。
「まだ眠い……」
どうやら 窓から差し込む陽光によって目が覚まさせられたらしい。そのままベッドに飛び込んだのが仇となったか。
カーテンを閉めてもう一回寝よう。
レーゼンは体を起こした。
「ん?」
起き上がろうとして手をついた下に、何かがある。
何やら触って確かめてみる。長く太いパイプのようなものだ。かなり長い。
それが前へと続いている。
「ん??」
レーゼンは気づいた。
それはパイプではなかった。 人間の足だ。
顔を上げた視界のそこでは、自然冒険者 ルチフが安らかな顔で睡眠していた。
「……なんで??」
「部屋を間違えたかな」
レーゼンは寝起きのボケっとした頭で冷静に考えた。
昨日は眠すぎて朦朧としていたから部屋を間違えた可能性も多いにある。
そーっとベッドから降りる。
「レーゼンさん?」
扉に向かって抜き足差し足で逃げようとしたところでバレた。
「お、おはよう……」
ゆっくりと首で振り返りながら言い訳を考えながら後ろを向く。
「おはようございます」
いつもの感情が薄いルチフだ。仮にも若い女の子の格好をしたエルフが同じとこの上で寝ていたというのに、全く感情や動揺が表に出てこない。
それどころかレーゼンの方が動揺が大きいようだ。
「どうかされましたか」
「いや あの その」
慌てて取り繕おうとする。
「えっとね 別に変な意味はなくて ただ昨日はものすごく眠くて頭がよく働いてなくて自分の部屋とかもあんまりよくわからなくて それにめちゃくちゃ暗かったから えっと その」
「落ち着いてください」
ルチフが自分から言葉を発する。
「うん……迷惑かけてごめんね」
「そうですか。別に迷惑とは思っていませんが」
「いや別にそれならいいんだけどね……」
「昨晩はお疲れ様でした」
「昨晩って……ああ、そういうこと」
昨日の晩餐会のことはほとんど頭に残っていなかったから全然思い当たらなかった。
「疲れはしたけど全然何もしてないからね……伯爵もどっか行っちゃったし結局私の独壇場だったよ」
「私も途中でどこかに行ってしまってすみませんでした」
「いいよ別に。私だって多分そうするし」
「そうですか」
ルチフがかけ布団をどかし、ベッドから降りる。
壁にかけられた高級そうな柱時計に目をやった。
今は十一時らへんだった。
「かなり寝てしまいましたね」
「二度寝したかったんだけどね…………」
くあ……とレーゼンはあくびをした。
「とりあえず私は部屋に戻るよ。お邪魔してごめんね」
「はい」
レーゼンが部屋から出た。
そしてしばらく、ルチフがその場から掻き消えた。
部屋には誰もいなかった。
数分後に、部屋の窓が開く。
ルチフが窓の枠に立っていた。
「ふう……」
何やら疲れた様子だった。
「まさかこんなことになるとはな……読みを外したか」
魔王は自嘲気味に笑った。
「果たしてこれからどうなるかな……」
魔王は音を立てずに窓から床へ足をつけた。
魔王は笑った。
「楽しくなりそうだ」
wake up!




