寝落ちエルフ
「つらい……」
エルフは長い廊下を一人で歩いていた。
何時間も貴族たちに拘束されまくって疲労困憊であった。
廊下はすっかり暗くなり、頭上のシャンデリアの 魔法の炎の光がぼんやりと辺りを照らすのみである。
一歩一歩を踏み出すのに体が重い。
何時間も座らせてもらえなかったし、っていうか 途中からプリムス伯爵いなくなってたし、珍しくルチフもどっか行ったし。
セヴァンとディエンだけ待ってくれたけど、今は会場の片付けの手伝いをしている。
眠い。ね〜〜〜〜むい。今すぐこの場で廊下でいいから寝転がりたい。
でもそんなことをすればセヴァンに呆れられる。
なぜか旅の中で、セヴァンは『寝る前の身支度はちゃんとしろ』って言ってくる。
何千歳も下の子供なのに。別にこの年にもなってそんな年齢の上下関係なんて気にしないけど。
「あ゛ぁ゙…………」
口から乙女らしからぬアンデットのような声が出る。別に乙女でもないし誰も見てないから気にしないけど。
なんとか二階に続く階段に着いた。
そこからカーパティア山脈を登り始める時よりも真剣な面持ちで階段上りを始めた。
階段に足をかけて体を引っ張り上げる この動作がものすごく辛い。頭が揺れて今にも眠りそうになる。
以前の自分だったら寝ていただろう。 でもいくらゆったりとしているエルフとはいえ、成長ぐらいはする。セヴァンの言葉を頭に思い描いて体に鞭を打つ。
「なんで私あの子の言葉なんて気にしてるんだろ」
エルフは独りごちた。
出会ったからまだ五十年も経っていない若い人間の男の子。年齢関係を人間並みに縮尺してみれば、百歳の老人が生後一ヶ月程度の子供を相手をするようなものだ。
「私にもまだ人間の言葉を聞く部分が残ってるのかな」
その部分が残ってなければそもそも旅になど出ていない。魔王討伐の命の危険が伴う旅など足を踏み入れなかっただろう。
「でも何百年も人と話してなかったよね」
レーゼンは自分に問いかけた。
しかしその議論が終わる前に長い階段の登山は終わった。
ぼんやりとした視界で暗い廊下を見定めて、自分の部屋を特定する。ていうか部屋 どこだったっけ。あー これか。
無駄に重い扉を開き反動で自分の体を中に押し入れる。
そのまま小走りでベッドへ向かって一直線、 飛び込んだ。
バフっとベッドのいい音がして、レーゼンは目を瞑った。
もう限界だ。このまま寝る。寝る前の身支度とかやってられるか。そもそもやりたくもないことをさせられたんだからこれくらいいいでしょ。怒らないでねセヴァン。
布団に入り込んでから五秒で、エルフはその白い瞼を閉じた。
✕
「ん〜……」
時刻は昼上がり頃か。レーゼンはようやく目を覚ました。
「まだ眠い……」
どうやら 窓から差し込む陽光によって目が覚まさせられたらしい。そのままベッドに飛び込んだのが仇となったか。
カーテンを閉めてもう一回寝よう。
レーゼンは体を起こした。
「ん?」
起き上がろうとして手をついたかけ布団の下に、何かがある。
何やら触って確かめてみる。長く太いパイプのようなものだ。かなり長い。
それが前へと続いている。
「ん??」
レーゼンは気づいた。
それはパイプではなかった。 人間の足だ。
顔を上げた視界のそこでは、自然冒険者 ルチフが安らかな顔で睡眠していた。
「……なんで??」
Is it okay for an episode to be this long?




