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部屋案内

「改めまして、これから皆様のお世話係となるプリマウァレリア・ニグルムと申します。皆様それぞれのお部屋はありますが、まずはこの部屋での説明をしてからそれぞれのお部屋へと移動していただきたいと思います」


 五人の勇者パーティーの前で、ウァレリアが部屋の説明を始める。


 貴族らしく広々とした部屋だ。


 部屋の中心に技巧が凝らされた木のテーブルがあり、奥の方には大きな天蓋つきのベッド、天井からはシャンデリアがつるされ、壁にはこれまた技工の凝らされた棚やクローゼット、職人によって描かれた美しい絵画がなどがさげられている。


 壁も無機質ではなく、細かい衣装がまばらに等間隔に配置された暖かい色の壁紙が貼られており、客人が落ち着けるように最大限の工夫が凝らされている。


「――で、人を呼びたい時はこちらのハンドベルを鳴らしていただければ、部屋の前に控えたメイドが出てきますので。説明はおおむね以上です。何か質問はおありですか?」


「はい」


 レーゼンが手を高く上げる。


「なんでしょう、レーゼンさま?」

「この城に図書室はある?」

「ございますが……どのような本をご所望ですか?」

「魔法書や魔導書があれば。ここ最近の帝国の魔導書をご所望だよ」

「それでしたら、従者が後ほど本をお持ちいたしますので」

「ありがとう」


 そんなこともしてもらえるの!?


 セヴァンは驚いてレーゼンの方を見た。


「はい」


 こんどはディエンが手を挙げる。


 セヴァンは目を見開いた。勝手にディエンが一番こういう経験から遠いと思っていたのだが、平然と質問をするとは。


「なんでしょう?」

「運動できる場所はあるか?」

「ありますよ。後でご案内いたしますね」

「ありがとう」

「はい」

「なんでしょうテルンさん?」

「ビタロス産の飲み物はありますか?」

「もちろんございます。晩餐の前にお尋ねしようと思っていたところです。何をご所望ですか?」

「イプスム・ビノムをお願いします」

ツウ・・ですね。ご用意いたします」


 ウァレリアが微笑んで言う。


 一体何がツウなんだ……? セヴァンは思った。ただなんとなく酒の名前であろうことは分かった。

 ていうかなんで聖職者なのにこんなに当たり前のようにしかもお酒を要求してるんだ??


 というか晩餐するの!?


「はい」


 ルチフまでが手を挙げた。ほとんど欲のないはずの彼までもが手を挙げるとは。


「なんでしょう?」

「伯爵閣下にお目通し叶うのは晩餐の時という認識でよろしいでしょうか?」

「はい。此度の晩餐の主催はプリムス伯爵閣下です。勇者ご一行様がたはゲストというのとになります」

「分かりました」


 どうやら流石に物の要求ではないようだった。なぜか安心してセヴァンは胸をなでおろした。


 晩餐にあの貴族が出てくるのか……喉を食事が通るかわからない。


 それにしてもなんでみんな、ディエンまでもがこの空気に馴染んでいるのだろうか。今はこの豪勢な部屋の雰囲気にすら飲まれているというのに。


 貴族の作法ももてなしの方法も全くわからない。招いた人をその日に晩餐に招くのもそのひとつなのだろうか。


「はい」


 おずおずとセヴァンは手を挙げる。


「なんでしょう?」


 微笑んで彼女はこちらを向いた。


「あの…………」

「はい?」

「どのくらい、僕らはここにとどまってもいいんでしょうか?」

「お気のめすまま、です」

「えっ? それは一体…………」

「勇者さまの、お気の召すままに、ということです」

「そ、そうですか…………」


 どう頑張っても理解出来なさそうなので、セヴァンはそれ以上質問を重ねるのをやめた。


「それでは、それぞれのお部屋へ案内いたします」


 そう言ってウァレリアは踵を返した。


 この部屋はセヴァンの部屋であるので、残りの仲間たちだけが部屋から出ていく。


 ばたり、と重厚なドアが閉じる。


 だだっ広い部屋に残るのはセヴァン一人だ。

 ものすごく心細く思われた。


 まるで知らない場所に放り投げられた子供だ。


「ええと…………」


 口を開くと、自分の声が反響する。


 とりあえず剣を置こうと、セヴァンはクローゼットの方へ向かった。


「そとそもクローゼットに剣をおいてもいいのかな……?」


 ぜんぜんわからない。


 すると、ベッドのそばの棚においてあったベルが目に入った。


 何かあれば、それを鳴らせば人がかけつけてくれる。

 でもそんな気にはなれない。


「はあ…………」


 これではかえって疲れそうだ。


 今までこの旅において、泊まる部屋には殆どの場合、仲間がいた。異性であるレーゼンも、野宿をする時は共に同じ場所で寝ている。


 七ヶ月間、それがずっと続いていた。

 もしかしたら、それに慣れていたのかもしれない。

 一人で過ごす時間なんて殆どなかった。


 セヴァンは部屋の大きな窓を見た。

 まだ日は高い位置にある。

 先程言った晩餐がいつになるのかは分からない。しかし、あと何時間もあるだろう。


 その長い孤独な時間を想像すると、セヴァンはどうしようもなく不安になった。

 とりあえず剣は壁に立てかけて、巨大なベッドに腰を落ち着ける。


「うっ…………わっ…………」


 思った以上に沈みこむ。

 体制を保ちきれずに、ベッドに横になってしまった。


「はあ…………」


 セヴァンはため息をついた。

 なんだか考えるのが億劫になってきた。


 柔らかいベッドが、完全に脱力した体を包み込む。

 すると、不意に眠くなってきた。


 やはり疲れが溜まっていたのだろうか。


 どうせやることもない。


 そのまどろみに身を任せ、セヴァンは意識の手綱を手放した。

I guess this is like an interlude.


UV1000、PV2500突破ありがとうございます!!それとブックマークまた増えて感謝。舞って喜びます。


Thank you for the 1000 UV and 2500 PV.

And thanks for the bookmark. I will dance and rejoice.

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