星と魔王
この世の全宇宙を支配する理の一つ、巨影の無限の闇の下、小さな生命天体で人類は生きていた。
その生命天体に届く『光』はほんのわずかで、結局それは闇のキャンバスの上に散らされた点々でしかない。
しかし人間はその大半を占めるはずの闇に全くと言っていいほど興味を示さず、それどころかただの背景だと断じ、それがこの世を支配する大いなる三つの理の柱のうちの一つであることに気が付かない。
全宇宙を支配する闇の中にたたずむ生命天体には三つの大陸があった。人類は後世にはそれを五つに分けたり六つに分けたりするが、この世を見るものにとってはとりあえず三つの大陸だった。
そのうちの一番若く、一番巨大な大陸のその北西。人類の最も多く住む、現地の人間が『中心』と呼び、人ならざる者が『北』と呼ぶ場所に、大陸から突き出たような形をした安定陸塊があった。
現地の人類から見れば、そこは『大陸』であるそうだが、大陸の規模から見れば『半島』と言えるくらいのものだった。
どちらにせよ『大陸』とよべるものではないが、人間にとってはとても大きく感じるらしく、そこには数多くの人間による共同体、国があった。
その数多ある国の一つ、国土の多くをある一つの山脈が占める国の中の、その大きな山脈の中。鎌のような形をした山脈に抱かれるような形で、また数多くの人間たちの村が存在していた。
そのうちの一つ、現地の人が名付けたところによれば、『ビストリタ町』。
ほんのちいさな、人間の規模感にしてみればまあまあ大きい町があった。
しかし、そこにほとんど人間は存在しなかった。それは大いなる存在からしても多少奇妙であった。
その町を覗いてみると、どうやらそこにはほとんど子どもしかいないようである。
その原因を特定してみようにも、どうやらその原因はすでにその地を去ったようだった。
代わりに大いなる存在は一つの疑問に気が付いた。
その町の、ほんの小さな木造りの家。ほとんどが石造りの家の中で、その家だけが、屋根だけでなく家の基盤除くほとんどが木で造られていた。
問題はそれではない。
その家の上に、とある『穴』が開いていた。
とても深い穴だった。
それは空間に空いた穴だった。
大いなる存在は、すべてを照らす、大いなる三つの理のうちの一つであった。そして世界の全てを支配する法則の内の一つであるはずだった。
大いなる存在は気づいた。そこに穴が開いているのではなく、そこにいる、もしくはある存在を認識することが出来ないのだと。
そして、彼女は一つ心当たりを持っていた。
大いなる存在である彼女が知る、彼女が見通せない物の三つのうちの一つを。
彼女を背き、ただ一つの美しい生命天体に汚れをもたらした存在を。
何千年経ってなお、そこから離れず、世界の一部に穴をあけ続けている存在を。
見通せない穴は、にやりと笑った。
彼女はそれがとてつもなくひどいものに感じられて、とてつもなく恐ろしく感じられて、世界を見るのをやめた。
×
広く美しい地球の上、とある木の家の上で魔王は、自分を静かに瞬きながら照らす、幾千幾億もの美しい星空を眺めていた。
三十話記念!




