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城塞都市エリミネス

 勇者たちが出発して三週間。カルラーム王国国境付近。城塞都市エリミネス。


 十メートルを超えようかという巨大な防壁を背に栄える城塞都市にして国内屈指の交易都市。国境付近の都市において、最も栄えていると言っても過言ではないエリミネス。


「ついに国境まで来たか……」


 カルラーム王国の南の王国、ラザーヌディア王国への正式な道はここだけである。ここを通れば、ラザーヌディア王国にもカルラーム王国にも勇者たちが国境を通過したことが伝わる。


「意外とあっさりだね」


 レーゼンが向こうに見える巨大な防壁を見上げながら、特に興味なさそうにそんなことを口にする。


「三週間ぐらいかかってるんだが……?」


 勇者がそう返すと、ディエンが横から口を挟む。


「今までいたカルラーム王国は中央諸国の中でも最も内陸に位置している。その分魔族による被害も少ない。つまりここからがようやく、本番というわけだろう」


 続けてテルンが言う。


「しばらくはここで準備をする必要がありそうですね。エルト村でかなりの礼金をもらいましたから、ここでいろんな装備も整えましょう」


「俺の代わりの武器を買う鍛冶ギルドもあるといいんだがな」


会話しながらエリミネスへ入る。


 そこからの道は石畳になっており、街の発展具合と歴史が伺える。


 中央諸国全史によると、かつてここはラザーヌディア王国との争いにおける防衛線として展開され、その後平和な時代が続く中で、貿易などで栄える都市となったという。


 これだけの規模の都市ならば鍛冶ギルドどころかギルド支部までもあるだろう。


 ちなみにここまでの数日間、ディエンには武器がなかったら、拳で何とかしていた。さすが戦士であった。


「じゃあ、まずは鍛冶ギルドを探そうか。武器がいくらかかるかわからないし。お金が足りなかったら一大事だしね」




 案の定、ギルド支部がこの都市にはあった。街の中心部の商業ギルドの横に、それは建っていた。


「そうか、交易の街だから商業ギルドがでけえのか」


 ディエンが、五階建ての高層の商業ギルドを見上げながら言った。右隣にあるギルド支部もそれと同じぐらいの規模の建物だった。


「これぐらいなら中に鍛冶ギルドくらいはあるだろう」


 そう言ってギルド支部の中に入っていく。


 最初にルチフが勇者パーティーと出会った冒険者ギルドとは規模も文化レベルも桁が違っていた。


 床も天井も壁も、基礎は全て大理石でできていた。床には、赤い、端のところに金色の装飾が施されたカーペットが敷かれていた。もはや神殿か何かのようだった。歩くとカツカツと小気味のいい音が響きわたる。


 入り口を入ってからすぐに受付があった。


「ギルド エリミネス支部へようこそ。何かご用がおありですか?」


 その中の一人、笑顔の若い受付嬢が声をかけてくれた。


 胸の名札には「セクレム」と書いてある。


 セヴァンが受付嬢に話す。


「鍛冶ギルドを探しているんだ。場所を教えてもらえないかな?」


「よろしければ、登録証をお見せしてもらってもよろしいですか?」


「失礼。どうぞ」


セヴァンがベルトについている皮の巾着から、手帳のようなものを取り出す。


 それを確認すると、セクレムが慌てた様子でそれをセヴァンに返す。


「失礼いたしました。勇者パーティーの方々でしたとは。鍛冶ギルドですね。ご案内いたします」


 少し慌てた様子で受付から出てくるその受付嬢の年の頃は二十一と言ったところか。少し幼くも見える。


 鍛冶ギルドはどうやらギルド支部の中にはないようだった。そもそもギルド支部は、多くの種類のギルドがある街のための総合的な管理事務所のようなものなので、火の気が多い鍛冶ギルドは根本的に合わないだろう。


 ギルド支部から出て、数分歩いたところに鍛冶キルドがあった。


 さすがにそれほど大きくはなく、平均的なものと同じくらいだった。


 中に入ると、エントランスにあまり人はいなかった。数人、端の椅子に座っている屈強な男か、受付嬢かギルドスタッフくらいのものだった。


「勇者パーティー様をご案内しました」


 セクレムが鍛冶ギルドの受付嬢に報告し、そこで引き継ぎがなされ、セクラムは元のところへ戻って行った。


「何か新しい武器を求めですか?」


 新しい受付嬢が勇者パーティーに聞く。


「俺だ。長剣か斧かハンマーか。とびきり重いやつがいい」


「かしこまりました。登録証をお持ちですか?」


「これだ」


「確認いたします」


 手帳を見て、何かを手元の紙に書き、手帳を戻した。


「重量型の武器の既製品でしたら、このようなものがありますが」


 受付嬢が席を立ち(背の低いディエンのためだろうか)、武器のカタログのようなものをディエンに提示する。


「このハンマーがいいな。もっと詳細なのあるか」


「では、詳細な実物をお見せいたしましょうか」


「そいつはありがたい」


 エントランスから奥の武器の保管場所へ移動する。

 途中でテルンがセヴァンに耳打ちをする。


「私、鍛冶ギルドなんて初めて来ましたよ」


「聖職者なら無理もないよ。並んだ武器を見るのは圧巻だよ」


 受付所の左隣にある廊下を少し歩くと、右に『保管庫』と看板が横についている扉があった。その扉の周りだけ、明らかに金属でできていた。扉自体もかなり重厚そうな金属でできている。


 受付嬢が制服の内ポケットから鍵を取り出して扉の鍵を開ける。そして体全体の体重をかけるようにして、扉を開けた。この受付嬢はだいぶ細身に見えるが結構な重労働だろう。


「うわぁ……!」


 テルンが中を見て感嘆の声を上げる。


 広い金属でできた部屋の壁は一面がショーウィンドウになっており、その中に大小様々な種類の、剣、戦斧、弓、盾、その他もろもろが、所狭しと並べられていた。


「うわぁ〜こんなに武器があるんですか!」


 テルンがウッキウキで部屋の中に足を踏み入れる。


「お前が一番必要ないだろう」


 テルンを尻目にディエンは部屋の中の武器をざっと眺め回している。


「先ほどおっしゃっていたハンマーは、こちらですね」


 部屋の一角のショーウィンドウの近くで受付嬢が言った。そこにディエンも近づいていく。


 人の頭より一回り大きいほどの槌頭をもった、金属製の四角い両口のハンマーだった。打撃面近くの部分が一回り大きくなっている。


 戦槌ウォーハンマーにしては、持ち手がかなり短く、アンバランスであるように見える。


 更に特異な事に、表面を木目のような模様がびっしりと覆っていた。その他にも各所に溝や装飾などが彫り込まれていたが、その木目模様は後でつけたものではなく、その金属そのものの性質であるように思えた。


「こいつは、どういうもんだ」


「極東のドワーフ職人によって制作され、輸入されたものです。ウーツ鋼というものが素材にされているそうです」


「やっぱりウーツ鋼か……」


 魔王の記憶によると、確か東に五〇〇〇キロ以上行ったところにある極東の地で見たことがあった。そこに住んでいたドワーフは、ウーツ鋼で作られた道具を使っていた。


 ディエンが茶色のひげの生えた顎を撫でて呟く。


「ご存知なのですか」


「俺はそこの出身だ。そこでしか作れない特殊な鋼。高い耐久性と強度を誇る、俺の一族のみが製造法を知る鋼だ」


「そうだったんですか……」


 受付嬢だけでなく、勇者パーティーの面々もそれぞれ感嘆の意を示す。


「つまり、このハンマーは俺の家族の誰かが作ったもんだ。これ以上に信頼できるもんはない」


 ディエンの意はすでに決しているようだった。


 旅が始まって三週間、ディエンはようやく彼が全力で振れる武器を手にした。

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