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第8章・火花
突然到来した暗闇に少年が声を出す。
「紗季ねぇ!」
優しく応える女子校生の声。
「大丈夫、ただの停電だから」
キンっという乾いた音が暗闇に響く。
「え、なに?」
「違う。後ろから聴こえた」
もう一度響く金属音。
同時に小さな火花が見え一瞬だけシルエットが浮かんで消える。
少年と背後に…
闇に向かって紗季が叫ぶ。
「カルマ!後ろになにかいる!」
返ってきたのはなにかが床に倒れる音。
「カルマ!」
慌ててポケットからスマホを取り出す紗季。
気配を感じた。
殺気。
目の前に誰かがいる。
自分に迫る逃れられない死の気配。
スマホを前にかざして電源を入れる。
浮かびあがったのは老人の姿。
血液が凝固した顔から鬼神のようにギラリと輝く瞳。
両手に握られた刀…
違う、刀は握っているのではなく手首がちぎれた腕から突き出ている。さっきの火花はきっとそれを振り出すときにコンクリートと擦れて…
そう気づいた瞬間、紗季から顔の上半分が切り落とされた。
(第8章・火花・終わり)