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グリーンハイツ  作者: 伊藤康弘
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第3章・創一の悪夢

 悪夢が終わっても悪夢的な状況にいる場合、果たして自分は目覚めているのか眠っているのかどちらなのだろうと創一は考えていた。しかし夢と現実の決定的な違いは痛みを伴うかどうかだ。それならばこれは現実。両手にくい込んでいる梱包用の結束バンド。この手軽さに慣れた狡猾さと悪意を感じる。きっと解放されても手首から先は腐り落ちるだろう。もっとも自分が生きて解放されることはないと理解はしているが。目の前でボール遊びをしている少年に声をかけるのはもうやめている。無意味だからだ。目を閉じて少しでも身体へのダメージを避けて心だけは破壊されないようにしないと。監禁されてからどれくらい経つのか。すでに食欲は感じなくなっている。まだ微かに水への欲求があるということは身体から抜けた水分は5パーセントくらいか。あと1パーセント水分が抜けると水への渇望は消えて私は壊れ始める。20パーセント水分を失うと死に到るだろう。この歳で命への執着があるとは思ってもいなかった。戦争で心は死んだと思っていたからだ。これはおそらくどんな生物でも持っている本能なのだろう。外国人には理解できないようだが大戦では祖国の未来のために闘った。女性や子どもたちのために文字通り命をなげうって。明るく幸せな未来を守るために。その結果がこれなのか。いまそんな戦場でもわかなかったある感情が自分に芽生えて驚いている。それは明確な殺意だ。目の前の少年を、少年たちを殺してやりたい。そのためには…


「こらガキ、てめぇなにやってんだ?」

 突然声をかけられてリフティングをしていた少年が振り返る。


(第3章・創一の悪夢・終わり)

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