第三章 フロム アンダー ユア スカート 3-1 きのこれ! 初戦闘!
俺たちがどこから来たって?
そりゃあみんな同じ
女の股からよ
第三章 フロム アンダー ユア スカート
3-1 きのこれ! 初戦闘!
アジトで課せられた俺の任務は基本的に近辺の警邏だけ。簡単なものだった。あまりにも穏やかな日々。だがそれも一週間も続かなかった。
任務六日目。俺は定められた警邏コースを辿っている途中だった。
「きゃあああああ!!」
悲鳴だ。それも当たり前だが若い女の子の声だ。
「仕事やな、相棒」
ミコトが口の端をニィと引きずり上げる。
「場所を特定しよう」
俺達は声を頼りに捜索を開始した。
「こっちに茸女がわんさかおるで!」
ミコトが指をさした方向は駅の建物の中だった。
「この中で間違いはなさそうだな」
女の子の声は急き立てられたような不随意なものに変化している。無理をしてでも強行すべきか。
「お姫さんを救出やで!」
白い歯を見せながら水鉄砲を構えるミコト。
「ああ、行こう!」
直接的に俺の技術が誰かの役に立ったと実感する瞬間。それは俺が俺であるための大切な鍵だと、ふと思った。
「ありゃあ、ずいぶんおさかんに、いってもうてんなあ」
ミコトは、顔を真っ赤にし、内股をすり合わせながらそう言った。
「口と鼻と鼠径部にも茸の侵入を認める。俺の体験した状況より進んでいる。事は急を要するな。ミコト、強行しよう!」
俺とミコトは無言で頷きあった。
二丁の水鉄砲でもって範囲掃射すれば状況の打破は簡単だった。次々に動けなくなる茸女。
「これはやはり、茸にしか効かないというのが肝要なのだな」
現実の戦闘とは異なる。究極の非殺傷兵器ともいえる。
「キノコになりたないわいらにとっては、薬みたいなもんとも言えるしなあ」
茸女達の足の間を二人で潜り抜けながら会話をする。相棒というものはいいものだ。
「本体を確保」
どう見ても小学校低学年のおかっぱ少女の膝元に到着したので報告を行った。
「まいたけひらひら」
俺が報告の声を上げたと同時におかっぱ少女のすぐそばにいた茸女が動き出した。
「気を付けや!! 時たま、かかってへんか、かかりが不十分な奴がおるから!」
確かにそれは理解できる。一撃必殺と行かないのはこの世界でも一緒か。それはともかく、
「先に言っておいてくれないか! 重要なことは!」
ブリーフィングが不足しているだろう。これはさすがに苦言を呈しておかなければ。
「いや、それより! マイタケ女!!」
まいたけ女は、おかっぱ少女の体に覆いかぶさる。
「ひぃ。やめて。もう、だめぇ!!」
少女の悲鳴。
「ぽたっ」
それと僅差で温かい雨が降り、俺の黒髪を濡らす。
「ぽた、ぽたっ」
雨量は増し、俺は天を見上げる。
「ぴしゃ、ぴしゃ」
雨だと思っていたものは少女の体の中に蓄えられていたウリンだった。なにしろ温かみと微かな甘みがあるのだ。
「はあ!?」
甘味だって!? 俺の感覚は狂ってしまったのか。これはあれだぞ可愛い少女から放たれているとはいえ、男のものとは幾分香りも違うがいわゆるおしっこだぞ!
「きゅん!」
それは俺の肌に吸い込まれ、体の中に妙な疼きを発生させる。俺の嫌悪感は幻なのかと思う位の甘さは、体はそうはいっていないんだぜとか言う人体の不思議により上書きされてしまったようだ。
「ああ、あの日も雨だったか」
あの日? いつだったか?
そうだ、運命の日。思い出した。休暇の日カオルと合うことになったのだが、その日はあいにくの雨でホテルの部屋で一日中しっぽりと過ごしていた。カオルとは、当時の俺の彼女だ。そうだ彼女はどうなったんだ?
「うっ!」
そこまで考えた俺の脳髄に衝撃と痛みが走る。
「だいじょうぶか!? ヒビキはん!」
相棒の声も届かないぐらいに俺は朦朧としながら妄想めいた過去のヴィジョンへと没入していた。