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第二章 少女結社アジト 2-1 防疫の壁 アキラ

第二章 少女結社アジト


2-1 防疫の壁 アキラ


 「ここは〇ーナンじゃないか」


 俺がミコトに連れてこられた場所は、どこからどう見てもあの有名なホームセンターだった。勿論営業している気配もなく、敷地の入り口にある鉄扉は閉じられ、それ以外の周囲は店の物を積み上げてバリケードが築かれている。なぜかここの物にはキノコは生えていなかった。だからこそ〇ーナンだとわかったのだが。


 「まあ、せやな。ここがわしらの城や。ゾンビもんとかやったら、あかんフラグやけどな!」


 ミコトはくっくっくと含み笑いをする。シャレにならないフラグを立てるのはやめてほしい。


 「カンカンカン」


 何か音が聞こえる。バリケードの向こう側からのようだ。


 「そこで止まれ!」


 バリケードの上から顔をひょこっと出した少女が一人。黒い前髪ぱっつんで目つきの鋭い肌の白い美人だ。 


 「アキラちゃん。わしやがな、ミコトや」


 ミコトは自身を親指でさす。


 「分かっている。もう一人のことを問題にしているのだ」


 彼女の鋭い視線はこちらに向けられているようだ。


 「そうは言っても、いつものあれ以上はでけへんのとちゃうか?」


 ここがアジトというのなら一定の検問はないほうが不自然だろう。


 「勿論。おいお前。名前を何と言う?」


 まずは名前からか、いいだろう。


 「ヒビキだ」


 ミコトにもすでに名乗っている。俺は即座に答えた。


 「ふむ、いいだろう。通れ」


 アキラはそういってからミコトの方に向いた。


 「それだけでいいのか?」


 これは拍子抜けだ。


 「まあ、確かにな。でも考えてみ、キノコ人に自分が何者か聞いたとして名乗れると思う?」


 なるほど。よくは分からないがこれは防疫の為の検問という事なのだろう。


 「俺は合格でいいんだな」


 言質は取っておく。これがこの世界でどれほどの効力があるかはわからないが。


 「勿論だ。その前にバリケードの前に並べ!」


 アキラは、バリケードの向こうからトリガー付きの散水ヘッドの付いたホースの先を出し、その細い優美な指で握りこむ。


 「ざああああ」


 俺達を狙うでもなく、下に向けてシャワーは放たれた。


 「おい、地面に生えているキノコが!」


 俺は叫んだ。バリケードの際まで生えていたキノコが水に当たるとシュワーと音を立てて溶けるかのように消えてしまったのだ。


 「まあ、消毒って奴や。ヒビキはんもプールの授業かなんかで浴びた事あるやろ?」


 そういってからミコトはシャワーを浴びる。


 「気持ちええなあ!!」


 少女らしい歓声。なるほど。アキラという人物は、まさに防疫部隊なのだな。幾分厳しい性格になるのはいたし方のないことなのだろう。もしくはそのような性格だからこそここに配置されているのか。


 「次、ヒビキ!」


 アキラは高圧的に命令する。ミコトはシャワーの降り注ぐ範囲から退避した。


 「はい!」


 俺はシャワーの中に足を進める。


 「ざああああああああ」


 中に入って感じたのは強力な塩素臭。どろりとしていない文明世界の水。キノコ人達につけられた粘液も、自分がいたしてしまった汚れも流れ落ちていく。体が清められていくのは妙な高揚感があった。


 「よし! 開門!」


 鉄扉が開く。

 幾人かの少女とアキラがその奥で待ち構えていた。


 「ようこそアジトへ!」


 アキラは小学校の制服と思われるブレザーとスカートを着用していた。髪の長さは腰ぐらいまでの黒いストレート。


 「……いや。すまなかったな」


 アキラは俺から顔をそむけ、なぜか謝った。


 「どういうことだ?」


 俺はアキラの顔が妙に赤くなっている事に気付きいぶかしげな声をあげた。


 「ああ、懐かしいなあ。踊り子さんにTシャツ一丁で踊ってもらって、お客は踊ってる最中水鉄砲で攻撃し放題やねん」


 Tシャツ? 水鉄砲?


 「もしかして!!」


 俺は自分の体を見た。


 「スケスケでいろんなところが見えてまうやないか! そうそう、払いのいいお客さんには口では言われへんようなもん仕込んだ水鉄砲渡したりなあ。あの頃はよかった」


 ミコトのボーイッシュな美貌は欲望にゆがんだ。


 「見るなバカ!」


 俺は、ミコトの視線を遮りながら肌に張り付いてくるTシャツと格闘を始めた。


 「服は用意させよう。まずはこれを使え」


 アキラは俺を見ないようにしながら大きなバスタオルを投げてくれた。お前はいい奴だな。


 「もう少しだけでもええから、むっちんぷりんぷりんになってくれへんか!」


 こいつは!


 「いい加減にしろ!」


 さすがに我慢の限界が来た俺は人中に一発軽いジャブをくれてやった。


 「痛! 痛いなあ、へへへ」


 笑ってやがる。俺は背筋に何か寒いものを感じた。


 「これからアジトの主にあってもらう」


 アキラは緊張を取り戻してから言った。


 「なるほど。場合によってはここから追放という事もありそうだな」


 予想だが、そこら辺の見極めもするんだろう。


 「多分大丈夫だ。この男も許可されるぐらいだからな」


 アキラはミコトに軽蔑しきったような目を向ける。


 「純粋に戦力になるからだろう?」


 戦闘力は高いが忠義に問題がある。武将かよ!

 いや待て。単純な疑問が俺の頭をよぎった。


 「俺達は元男なんだよな?」


 俺はアキラに質問を投げかけた

 「ああそうだ。元から女性の存在はここにはいない」


 そうなのか。なら


 「ミコトのように欲望に忠実な奴がいてもおかしくはないだろう。元が男だというのなら」


 妄想しながら体をクネクネさせているミコトを横目に見ながら、俺は言った。


 「そのような考えは、危険だとアヤは言っている。アヤというのは、このアジトの主。これからお前が合うことになる人物だ。疑問があるなら答えてくれるだろう」


 どう危険なのか?


 「アヤとは一体?」


 謎だらけで頭がおかしくなりそうだ。


 「安心しろ。彼は医者だ。君にとって悪いことにはならないだろう」


 謎の人物アヤに対する不信感が顔に出てしまったようだ。


 「そうか。すまなかった。妙に不安になってしまったようだ」


 俺は頭を下げた。


 「わかるぞ。その体のせいだ。私はここを離れることはできない。だから部下を随行させよう。メイ、ついて行ってやってくれ!」


 少女達の一人に命令するアキラ。


 「了解しました! こちらへどうぞ!」


 俺は不安を抱きながらアジトの中へと乗り込むのだった。



 中では、様々な格好の少女達が各自の作業をこなしていた。


 「彼らは十年間こんな事を続けていて、材料は足りなくならないのか」


 生活必需品から娯楽用の品まで各々のスキルに従って生産は行われている様子だった。店内に照明は灯っていたが、それ以上の事に電気を使うのは難しいらしく各作業は手で行われている。


 「はい。必要な物資は外回り部隊が確保しております!」


 アキラと同じ服装をしたメイが答えてくれた。


 「そうか。しかし、何だろう。この違和感は」


 各々の作業を見て湧き上がる俺の疑問。この風景には何か違和感がある。一体何だろうな。

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