5話 『魔族の倒し方』
俺は斬撃をしゃがんでかわし、横に落ちている聖剣を取るとすぐさま女の魔族の背後に回り込んだ。
俺を今の攻撃で殺せると思っているのか、顔に笑みを浮かべているがすぐに真顔に変わることだろう。
なぜ、俺が攻撃を避けれたか。
それは、俺が人質をとっていた魔族のおかげだ。
あいつがしゃがんだと言うことは、剣か横に飛ばす斬撃に限られる。
斬撃以外の魔法の可能性もあったと思うかもしれないが、あの距離で俺を殺そうと思えば、そこそこ威力が強い魔法が必要となる。
そんな魔法を使えば、俺は殺せても自分としゃがみ込んでる魔族を巻き込む可能性がある。
だから俺は、剣か斬撃の攻撃と考えた。
そうなれば、あとは簡単だ。
女の魔族が魔法を使用するのに合わせてしゃがみ込み、魔法による斬撃の軌道が変えられないようにする。
そして、そのまま横に転がり込んで剣を拾えば、終わりだ。
俺はすぐさま剣を構えて、斜めに振り下ろした。
「速いなぁ!」
だが、俺の攻撃を読んだのか、すぐに体を反転させると右腕で受け止めた。
剣を素手で受け止めるのか……。
流石、他の魔族と違うだけあるな。
俺はチラッと視線を門の方に向けるが、他の魔族の四人はただ見ているだけで応戦するつもりはないようだ。
一人はあぐらをかいて、寝ているようだしな。
「よそ見するとかいい度胸じゃん?」
女の魔族は長い赤毛を靡かせながら、俺のすぐ頭上まで飛んでくる。
そのまま、俺の頭をかち割るのが目的のようだ。
凄い身体能力だな。
なら俺も、使わなくては。
「光之王」
そう口に出した直後、俺の体は通常の五倍ほど身体能力が上がり、共に聖剣が明るく光り出す。
こうなれば、どれだけ速い魔族にも対応できる。
中途半端な位置にある剣を下に一旦下げ、斬る対象を定める。
ここだ。
俺の頭に振り下ろされる拳を目標に、剣は下から上に登っていく。
それはまるで、龍のように。
魔法で追い討ちをかけるか。
「風よ力を貸せ。風刃」
昇っていく剣は、俺の頭に拳が衝突する直前に、目標の腕に剣が侵入していく。
それは、止まることを知らずさらに昇って行き、腕を縦に真っ二つにした。
「いったぁ!」
「まだいくぞ」
痛みを抑えるように、真っ二つに別れた腕を強く握っているが、そんな腕を今度は横に風の斬撃が走り去る。
赤い鮮血を飛び散らかし、地面を別の色に染める。
「あぁ! 腕が無くなったぁ!」
横に切断された腕は、どうすることも出来ずに吹き飛んでいき地面に落下した。
もう少し騒ぐと思ったが、無くなった腕を不思議そうに眺めながら座り込んでいる。
だが、そんな反応になるのも不思議ないか。
魔族は心臓が潰されない限り、体は再生を続ける。
例え頭を切り落とされたとしても、だ。
再生をするたびに魔力を消費してしまうが、どうせ時間が経てば回復するし、魔力量が多いやつなら何の問題もないだろう。
俺と女の魔族の戦いを、1番まじかで見ていた人質だった魔族は、目を見開いて唖然としている。
邪魔になりそうにないから、放っておこう。
俺が女の魔族に勝ったのを見て、周りで整列していた魔族達は、息を呑みながら立ち尽くしていた。
まるで、信じられない光景を見ているような感じだった。
そんなことよりも、早く魔王の元に行かなくてはいけない。
血で濡れた剣を払って元の状態に戻して、剣を腰に差した。