43話 『勝利を掴み取れ』
数秒置きに砲撃の音が空気に響き、大地を大きく揺らす。
空中では魔法弾が絶えることなく飛び交い、それに兵士たちは撃ち抜かれ絶命する。
しかし、それに臆することなく、兵士達は泥に塗れながら地面を駆け抜けていく。
「進め進め進めぇぇぇ! 敵はすぐそこだぁ! 必ず殺して勝利を掴み取れぇ!」
騎士は馬に乗りながら、地面を自足で走る兵士を鼓舞する。
直後、騎士は頭を魔法弾によって貫かれ、地面へと無様に転げ落ちる。
だが、それでも兵士達は止まることなく進む。
隣にいる、昨日共に食事をした仲間が、頭を吹き飛ばされて死のうとも。
英雄も、悪人も、騎士も、兵士も、若者も、老人も、皆平等に命を奪われる。
それが、『戦争』というものだ。
「おい! 幹部がいたぞっ!」
森を駆けつける兵士の一人が、周りにいる仲間に向かってそう叫んだ。
「あいつを殺せば一気に戦局が傾くっ! 死んでも噛みついてでも殺すぞぉ!」
あいつを殺せば、生きて帰って家族に会える……!
お母さん、俺は絶対に戻るから——。
直後、兵士達は全身から血を噴き出しながら、地面に力なく倒れた。
そしてもう二度と、体が起き上がることはない。
後ろの方を走る兵士達は、そんなことを知らず剣を構えて走ってくる。
そして同じように血を噴き出し、絶命する。
「良くやった、殺人特化型人形よ。私はここで待っているから、お前は最前線に行って敵を殺してくるがいい」
「はい……」
そう指示を出されるや否や、少女は森の中を稲妻の如く駆け巡っていった。
草木を避け、岩を飛び越え、敵の中へと突っ込んでいく。
「お、おい! 何かくる——」
しかし、それでも少女は怯むことを知らない。
相手の首元を切り裂いて、その血を浴びる前に次の敵から血を噴き出させる。
剣で対抗しようとしても、それが少女に当たることはなかった。
構えた瞬間に剣は砕け散り、それと同時に首が飛ぶ。
「どこだっ! どこに行ったっ!?」
「わかりません! 恐らくそっちに側に——」
「あぁ!? なんて言った……ぁぁ」
最後の敵が、上半身と下半身を切断されたと同時に、あまりの音が一気に静かになった。
一つの小隊を壊滅させるのに、二分もかからなかった。
「次……」
少女は遠くを見つめてそう呟くと、また稲妻の如く走り始める。
目の前から敵がいなくなるまで、少女の呪いは終わらない。
「え? つまり……その子がラフカ……ってことですか?」
「あくまでも予想だけどね。確か、あの騎士の人にそう言われて、ラフカが何か返事してたのね。なんて言ってたの?」
「それが聞こえなかったんですよ」
「そっか。なら仕方がないね」
「あの、その殺人特化型人形がいたのって、どこの国なんですか?」
それが分かれば一気に話が進む。
ラフカが殺人特化型人形と呼ばれる者の可能性が高いのならば、その国を調べることで、一気に話が繋がっていく。
出来る限り、身近な国だといいんだが。
そう思った俺だったが、その期待は悪い方へと向かってしまった。
「……グレンハード円帝国、だよ」
「……そうですか」
これでほぼ確定したって訳だな。
ラフカがグレンハード炎帝国から来たってことが。




