4話 『魔王城まで来たのはいいが」
「なぁ、お前ってどれくらいの魔法が使えるんだ?」
「はぁ? 魔法だと?」
魔力を持っている者なら、誰でも魔法を使えることができる。
魔法の属性は、火、水、風、土、雷、闇、光の七つの属性に分けられる。
それ以外には、無属性魔法と言ってどの魔法にも属さないものがある。
例を挙げれば、圧縮魔法や身体強化魔法などだ。
ちなみに俺は、風魔法を使うのが得意だ。
風魔法の詠唱を中心的に覚えたからな。
そして、魔法は使用者の魔力量によって威力や効果などが変わる。
例えば、火属性の魔法だと、火炎の矢の場合、魔力量が少ない奴は木を貫通させることが出来るかどうかだが、相当な魔力を持っているやつだと、一つの町を破壊することが出来るほどの威力になる。
それだけ魔法は、魔力量に影響されるのだ。
「そんなの敵に教えるわけねぇだろ」
「それもそうか」
そしてしばらく、俺と魔族の間は沈黙が続いた。
魔族の首に剣を突き当てながら、魔族が住む町の中を歩いていく。
町は人が住む家と同じような作りになっていて、1階建ての家もあれば、2階建ての家もある。
魔族は人間と外見はあまり変わりはなく、角や羽が生えているぐらいだ。
さらに、その角や羽は自由に体内に隠すことができる。
そのため、魔族の町の中を歩いているが、まるで人間の町にいるような気分だ。
だが、それはあくまで気分だ。
実際は魔族共の拠点にいるわけで、人間がいれば囲まれないわけがない。
「おい人間。こんなことをして生きて帰れると思っているのか」
1人の魔族が前に立ちはだかり、鋭く睨んでくる。
数え切れないほどの魔族に囲まれた俺は、どう考えても不利な状況だ。
だが、そんな状態でも俺は笑って答える。
「いいや。死ぬだろうな。だけど、ここにいる奴ら全員道連れにするけどな」
「子も女も殺すと言うのか!?」
「子も女も関係ない。邪魔する奴は殺す。邪魔しないなら、殺さない。それだけだ」
首に当てる剣の強さを少し上げて、周りにいる魔族に見せつける。
「早く道を開けろ。でないと、こいつは死ぬことになる」
俺の前に立っていた魔族は、しばらく考えた後舌打ちをすると、他の魔族に道を空けるように指示した。
「話が早くて助かるよ」
鋭い視線が四方八方から浴びさせられる中、俺は首に剣を当てたまま魔王城に進んでいった。
魔族が住む町を抜けると、そこは大きな広場のようになっていて、何百人という数の魔族達が、剣や槍などの武器を持って整列していた。
俺がここに来たことがもう伝わったのか。
早いな。
その魔族達とは他に、魔王城に入るために門の前に、5人の魔族がいた。
他の奴らと雰囲気が違う。
恐らく、こいつと同じで幹部達なのだろう。
「おい人間。そいつを解放しろ」
「するかよ。したら、速攻殺しにかかって来るだろ」
「……目的は何だ」
真ん中に立っている体つきのいい魔族の男は、俺の様子を伺いながら質問した。
「魔王に会うことだ」
「何だと……!」
「クラティス様にお会いしたいとは……一体何を考えている」
俺がそう言い放った直後、周りにいた魔族達は驚いた様子でザワザワし始めた。
しかし、門の前に立つ魔族は一切動じずにいる。
「貴様のような人間を、クラティス様に会わせるわけにはいかない。貴様はここで殺す」
こいつら、何か企んでいやがるな。
周りの魔族達は問題ないとして、あの幹部らしき奴らが、一体どれだけ強いのかわからない。
とにかく、周りに意識して警戒を――。
「頼むぜ」
俺が人質にとっている魔族は、あの5体を見ながら頷くと、拳を握った。
俺がそれに気付くのが遅れ、首に当てていた剣を弾き飛ばされた。
「チッ!」
「舌打ちしてる場合じゃないよ。人間君」
門の前に立っていた女の魔族が姿を消し、俺の背後に回り込んできていた。
すぐ目の前を見れば、さっきまで人質としてとっていた魔族はしゃがみ込んでいる。
「闇よ、力を貸せ。闇の斬撃」
俺の背後に回り込んだやつは、闇魔法を使って斬撃を飛ばしてくる。
この距離で威力の高い斬撃、全く抵抗ができずに死んでいくだろう。
俺でなければ。
「あれ……? どこに行った?」
「後ろだ。さっきとは真逆だな」