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3話 『まず、魔王に会うために』

 絶対に許さない。

 絶対に殺してやる。

 絶対に滅ぼしてやる。


 これだけが俺の頭の中で駆け巡り、俺の心を黒く支配していった。


 あの国を出てしばらく歩いているため、初めてこの場所に来た。

 周りを見渡せば、草も木も水も何もない。

 ただあるには、風で砂が飛ばされて剥き出しになった大きな岩と、少しの風で簡単に巻き上がる砂だけだ。

 所々骨が落ちている。

 これが人間の物なのか、魔族のものか、魔獣のものかはわからない。


 俺はある場所に向かっていた。

 それは魔王が住む、魔王城。

 俺はそこに行くために、ただひたすら歩く。


 なぜ魔王城に行くかって?

 そんなの決まっている。

 魔王に会って、話をするためだ。

 

 俺はフリュースを絶対に許さない。

 ここに来る前、一度父様の国へ行ってみたが……あいつの言っていた事は本当だった。

 父様は何者かに殺された、という情報が国中を駆け巡り大混乱を招いていた。

 だが、フリュースが殺したとは誰も知らなかった。

 

 俺はそれを伝えてやろうかと思ったが、思い止まった。

 もし、俺はそれを伝えた場合、一体誰が信じるだろうか。

 母様は数年前に他界し、俺は父様の国で関わりのある人はあまりいない。

 そんな状態で、フリュースが殺した、などと伝えれば俺が逆に疑われてしまう可能性があるし、何より証拠がない。

 聖十二騎士達も、フリュースの味方だろうから何も頼りにならない。

 それに、その場に居るはずにない俺が顔を出せば、更なる問題が発生することになる。


 だから俺は、父様にお別れを言わずに魔王に会いに行く。

 あの国に、フリュースに、復讐するために。





 

 「ここか」


 俺は高台から見渡して、場所を確認する。


 空はすっかり暗くなり、魔王城とその周りにできている建物に明かりがついている。

 恐らく、魔法か何かで明かりを付けているのだろう。

 わかりやすくて助かる。


 川や木がないせいか、雑音が何も聞こえずに魔王城の中で行われている何かの音がする。

 魔王城とその周りに住み着く魔族どもは、何かしら魔法と組み合わせて使う兵器を開発して、様々な国に攻撃を仕掛けに行く。

 ヴァラグシア王国も、攻撃を仕掛けられている国のひとつだ。


 高い場所から落ちないように、一歩一歩慎重に足を前に出して下っていく。

 大きな音を出して、魔族達に囲まれたら面倒だ。

 とにかく今は慎重に動いて――


 「おい」

 「……」

 

 残念だが、早速バレてしまった。

 しかし、いい機会だ。

 少し手荒だが、やるとするか。


 「お前、人間だな。どうしてここにいる」


 後ろを振り返ると、頭から角を生やした奴が、鋭く伸ばした爪を俺の背中に突きつけていた。


 「お前、相当強いんじゃないか? 全く気配に気付かなかった」

 「当たり前だろ。俺は幹部の1人だ。お前のような人間如きに気付かれるわけがなかろう」

 「そうか。でも助かったよ」

 「はぁ? お前は何を言って――」


 俺は相手が反応できない程の速度で剣を抜いて、俺に突きつけてきていた爪を切り落とす。 


 「いっ! お前……!」

 

 そいつが痛みでよろけ、爪に意識が向いた僅かな時間で背後に回り込み、剣を喉に当てる。

 魔族は目を見開き、一筋の汗を流した。

 そして喉に突きつけられている剣を見て、ハッと息を呑んだ。


 「お前……まさか……」

 「なんだ? 俺のことを知っているのか?」

 「知らないも何も……聖剣使いだろ……!」

 「その通り」

 「一体どこの国のやつだ……!」

 「ヴァラグシア王国の()聖剣使いだ」

 「元……だと……?」

 「お前に説明する必要はない。さぁ、早く魔王の所に連れて行け。俺は魔王に用がある」

 

 そして俺は、魔族に向けて笑みを浮かべた。


 


 

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