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16話 『動じない方法』

 なぜか胸を張って名前以外のことも話し始めた。

 そんな物騒なことを、この場で自慢げに話すんじゃない。


 「ミラノ様ですか。それに魔族の幹部……」

 「あの、君の名前はなんていうんだ?」


 まだこの少女の名前を聞けていない。

 俺たちは名乗ったし、別に聞いても問題ないだろう。


 「あ、申し遅れました。私はラーシェと言います」

 「ラーシェか。よろしくな」

 「よろしくお願いします」


 これでようやく落ち着いて話をすることが出来る。

 この少女には聞きたいことが山ほどあるが、まずはこのことから聞くとする。


 「何で俺達をこの家に招待したんだ? 俺はこの国を追放された身だし、ましてやミラノは魔族。普通は慌てて衛兵に報告すると思うんだけど」


 ラーシェの戦闘能力といい態度といい、不思議なことが多すぎる。

 とにかく今は、情報を聞き出すしかない。


 「クリム様は、《笑うピエロ》を知っていますか?」

 「勿論知ってる」

 「なにそれ?」


 どうやら魔族の間では知らないようだ。

 それとも、ミラノが知らないだけなのか。


 《笑うピエロ》というのは、何千人という人数で構成される組織で、その組織に属する者は全員笑うピエロのマスクを顔につけている。

 《笑うピエロ》は、これまで裏世界を潰して回り、時には国を排除していったりする目的が謎に包まれた組織だ。


 国を潰したりすることで危険な犯罪組織として扱われているが、裏世界を潰して回ったりしてる。

 だから、犯罪組織として扱われるのはどうかと思う。

 だが、国を崩壊させているのは紛れもない事実なのだ。

 それだけを見れば、犯罪組織と呼ばれてしまっても無理はない。


 でも、それとこの子に何の関係があるのだろうか。


 「その《笑うピエロ》なんですけど、私その組織のナンバー1なんですよ」

 「ナンバー1! クラティス様と一緒だ!」

 「いや……ちょ、え……?」


 この少女が……?

 ラーシェが《笑うピエロ》のナンバー1……?

 全く頭が追いつかない。

 

 「あとそれ……」


 ラーシェが指を指した先には、俺がいつも使っている聖剣があった。


 「その聖剣、シノヴァクの剣ですよね?」

 「あ、あぁ……。そうらしいな……」


 やばい。

 会話の内容が全く頭に入ってこない。


 ラーシェは一旦席から立ち上がると、近くの棚に置いてあった剣を持ってきた。

 その剣が机に置かれると、何か異様な雰囲気を放っているのがわかる。

 少し青白く光り、水の雫の様な柄が入っていて、少し綺麗だ。


 「この剣私のものなんですけど……」


 なぜか今は、なにを言われても動じないような気がする。


 「この剣、ウェーリアの剣という名前なのですが、この剣はシノヴァクの剣と同様聖剣らしく……」

 「……」

 「私もクリム様と同じで、聖剣使いなのです」

 「もう、なんて反応すればいいか分からないよ……」


 ほらな。

 もうなにを言われても、動じないだろ。

 

 

 


 


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