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12話 『俺のいた国』

 「ここがクリムが住んでいた国かー」

 「そうだ。クソ国王が支配している国だ」


 俺は悪態をつきながら、ミラノと一緒に人通りが多い大通りを歩いている。

 店の前には大勢人が集まっていて、野菜やら果物を買っている。


 「その仮面似合ってるよ」

 「魔族の仮面が似合うのは嬉しくないな」


 この国に渋々向かおうとしていたら、クラティスに引き止められて、目の部分だけ隠せる仮面を渡されたのだ。

 正直、舞踏会でつけるような仮面を外でしていたら、逆に目立ってしまいそうだったが、バレるわけにはいかないから仕方なく付けるしかない。

 

 ていうか、仮面を貸してくれるなら、この国じゃなくてもどこでも行けたんじゃないか?

 国の入り口で、その国の者だと証明しなければいけない場合は入れないけど、そんな事をしなくていい国だと別に入れるはずだ。

 ヴァラグシア王国の場合は、偽造できないように魔法で加工された紙が渡されていて、それを見せないと入ることはできない。


 「ねぇねぇ」

 「何だ?」

 「あの果物欲しい」


 ミラノが指を指した場所を見ると、机の上に紫に染まった果物が置いてあった。


 「あぁ、ロロイヤか」

 「ロロイヤ?」

 「そう。あの果物は、この国の近くの森でしか育たないから、他の国じゃ食べれないんだよ」


 俺もあのロロイヤは大好きだ。

 最初は少し酸味が効いてるけど、その後凄い甘味が舌の上で広がる。

 ロロイヤを始めて食べた時の衝撃は、今でも忘れられない。


 「買いたい」


 ミラノはその場で立ち止まると、俺に向けて手を出してきた。

 金をくれってことか。


 仕方ない……。

 食べさせてやるか。


 「これで買ってこい」

 「やったぁ! ありがとう!」


 ミラノの手に100リールを渡すと、子供のように笑って店に向かっていった。

 その店には、約10人くらい並んでいるから少しだけ待たなくてはいけない。


 座れる場所探すか。

 ずっと立って待ってるのはしんどいしな。


 俺は座れる場所がないか、その場で探していると細い通りに少しボロい椅子が置いてあった。

 誰かの物でもなさそうだし……座ってもいいよな。


 ミラノに待っている場所を教えた後、細い通りまで行き椅子に腰を下ろした。


 「あいつ……魔族だもんなぁ……」


 金を渡した時に、ミラノが俺に見せてきた笑顔。

 早く食べたいのか、列に並びながらウズウズしていた。

 俺は、今まで数えきれないほどの魔族を殺した。

 何の躊躇いもなく、首を切り落として。


 今、ずっと対立してきた魔族と一緒にいる。

 もしかしたら、ミラノと殺し合う時が来るかもしれないのに。


 「お嬢ちゃん。ちょっと待てよ」

 

 下を向いて俯いていると、この道を曲がったところから声が聞こえた。


 「私に何か用ですか?」

 「そりゃそうさ」

 「痛い目に遭いたくなかったら、金とその高そうな服を置いていってもらおうか」

 「ついでにその髪飾りもな」


 何だ、トラブルか?

 声や足音を聞く限り、少女らしき人物と、男5人ほどいるらしい。

 囲って少女1人を逃さないようにするつもりか?

 酷い奴らだな。


 「服もですか?」

 「そう言ってるだろ」

 「でも、服脱いだら下着になってしまいますが」

 「そんなこと知るか。あ、やっぱり俺たちが遊んでやってもいいぜぇ?」


 少女1人に何を言ってるんだか。

 気持ち悪い。

 あまり目立ちたくないが、助けないわけにもいかない。

 

 俺は椅子から立ち上がり、剣に手をかけた。

 いつ敵が来るかもわからないから、まだ姿は見えないが早めに剣を――


 「はぁ。なら、仕方がないですね……」

 「は?」

 「仕方がないってどういう事だよ!」

 「貴方達を殺せるという事です」


 殺す?

 逃げるじゃなくて?

 襲われている子は何を考えているんだ。


 「氷よ、力を貸してください。死の氷(スラウィアス)


 その少女の声と共に、曲がった道から俺の背丈以上の氷が出現した。

 

 

 

 

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