98話 ゼリオンクリスタル
ブイブイブイテューヌ楽しかったです
人は物事を効率化したがる。
その理由は様々だ。時間当りの作業量を増やすため、作業を楽にするため、1つの作業に割く人員を減らすため…など。
逆にそれらを行わず、非効率と呼ばれる状態を続行する理由は安定性の重視や、それ以上の効率で作業する方法を知らない、現状が最高効率である、などだ。
効率化と似てるけど違う、堕落というものもあるがそれはまた別の話。
こんな前振りをしているのにはちゃんと理由がある。これは先刻のエニグマとの会話が原因だ。
「それはそうと、何でそんなちまちまやってんだ? 溶鉱炉に突っ込めば岩だけ溶かせるだろ」
「…先に言ってよ」
「いや、なんか理由があるかと思ってたんだが…。ないのか?」
「ないよ」
…まあ、そういう事だ
エニグマに教えて貰った方法で岩を溶かし、クリスタルを取り出す作業を行っている。クランハウスの施設にはないので勝手に使えるバジトラの施設を使って。
やり方は簡単。鉄をインゴットに加工した時のように炉へ岩を突っ込み、鞴で風を送って加熱する。岩が溶けてドロドロになったら金網で浮いてくるクリスタル類を掬いあげれば終わりだ。
エニグマが融解の温度がどうとか何か問題があるかもしれないと言っていたが、ゲーム的処理で解決している。
そしてこの方法を教えてくれたエニグマは「暑いから流石にパスで」と来てくれなかった。まあそこは仕方ない。
1回に溶かせる岩の量が20個までなので、1個ずつ取り出すのより効率は良いけど岩の数が多いので何回もやる必要がある。
作業を繰り返すだけならまだ良い。ただ、火を使う作業をずっとやっていると暑い。この暑さはエニグマが来てくれないのも納得出来るし、なんならエニグマじゃなくても来ないだろう。
「やっと終わるぅー…」
暑い暑い言いながら何十回も岩を溶かしてクリスタル類を取り出す作業を行っていたが、ようやく次で最後となる。
作業を行っている間に鍛冶スキルのレベルも上がってきたし、これでクランハウスの施設として買えるようになってほしい。
毎回バジトラまで来るのが面倒だし、公共の施設というのもあって人目も気になる。
そもそもどのくらいのスキルレベルから施設を買えるようになるんだろうかと考えながら溶けていく岩を眺め、金網で掬う。
金網の上のクリスタル類は少し放置すれば触れる温度になるので手近な金床の上に置いて冷ます。
「あっつ…」
冷却が終了したクリスタル類を回収し、金網を元の場所に戻して鍛冶場から出る。
暑い。夏に太陽が照らしてくる道を数十分歩いている時より暑い。
今後もクリスタルのためにこの作業を行うだろうが、暑さによる多大なストレスはそう簡単に看過出来るものではない。
クランハウスの施設として鍛冶場を購入すれば温度調節機能が追加コンテンツで出るかもしれない。出なかったら暑さを軽減する方法を考えるか、この作業を外部委託するか、だろう。
暑さの軽減についてはなんかのキノコにそういう効果があったので、ポーションにするとかでどうにでもなりそうな気がする。しかしそれでも作業は自分の手でやらなくてはならない。
そうなると外部委託にしたいのだが、こっちに関してはやってもらう人との繋がりがないし、いい感じの報酬もない。最近金欠だし。
「お、帰ってきたか」
むむむと唸りながらバジトラの教会からクランハウスまで帰ってくると、鍛冶場へ行く前と同じようにホールにある椅子に座っていた。
「ずっとそこに居たの?」
「何時間も座ってる訳ねぇだろ。色々やってきたんだよ、っと」
そう言って箱のような物を投げて渡してくる。よく見ると蓋付きのバスケットだ。
蓋を開けて中を見てみると、サンドイッチがぎっしりと入っていた。投げて渡してきたけど形が崩れている物は1つもない。
「なんでサンドイッチ?」
「食べ物は一時的なバフ効果があるんだが、それを調べたりしてた土産だ。サンドイッチは最近のマイブームでもある」
「へぇ。これはどんなバフ?」
「種類によるが…味が気に入ったから買ってきたってだけでバフ自体はそこまで強くはないぞ」
なるほど、バフ効果じゃなくて味か。
食べてみて良いか聞いてみると、食べさせないなら渡さないという返答。
それもそうか……でも勝手に食べるのも失礼なんじゃないか。
やっぱり聞いておくべきだろうな、と思いつつバスケットの中のサンドイッチを1つ手に取り食べてみる。
「…美味しいんじゃない?」
「感想が貧弱だな」
「いや…味についてコメントする必要も無いし美味しいか美味しくないかくらいしか言わなくてもいいかなって」
「一理ある」
あと語彙力がないから味についてのコメントも出来そうにない…というか、「不味く感じなければ美味しい」ってレベルの感性しか持ってないから語彙力があっても何も言えない。
「現実はもう夜な訳だが、お前は飯食わんくていいのか?」
「…食べてこようかな」
2日連続で晩御飯を食べないのは流石に怒られそうだ。
****
結局昨日は晩御飯食べた後お風呂入ってゆっくりしてたら眠くなったから寝た。
ご飯を食べたのが20時で、寝たのが21時半とかだった気がする。前日にFFの中で夢の世界に行って12時間以上寝てたけど、生活リズムが崩れる事はなくて良かった。
「よいしょっと…」
錬金ラボで昨日岩から取り出したアイテムを確認する。
岩は300個ほどあったわけだが、半分くらいが魔石だ。残りの半分は閃光玉に使うリアダントクリスタルとか、ゼリオンクリスタルという物。
このゼリオンクリスタルが求めていた爆発するクリスタルなようだ。爆発させるにはリアダントクリスタルと同様、破壊すればいい。
仕様がリアダントクリスタルと同じなら一撃で壊した方が威力は高いだろう。違ってたら作り直そう。
とりあえず閃光玉に使っている土の針の魔術を使う。遠隔起動のために同期の魔法陣も描いておく。マルを描いてしまうと閃光玉に使っている魔法陣と混合してしまうので、今回は三角にしておこう。
「これで良いかな。起動するための魔法陣は……また鍛冶場行く必要あるのか、面倒だな」
同期の魔法陣は爆弾と導火線で分かれているのだが、爆弾側を遠隔から起動するためには導火線側を起動させる必要がある。
爆弾のスイッチとも言える導火線側の魔法陣は使い回し出来るように金属に彫っておいた方が楽だ。
「……訓練所ならアイテム消費ないし後ででいっか」
早速実験のために訓練所へ。
まずどのくらいの強さで爆発するのか、というのを調べるために藁人形の足元に爆弾を置いて遠隔から起動してみる。
クリスタルからピシッとひび割れるような音が聞こえた直後、お腹に響くような爆発音と共に藁人形がどこかへ飛んでいく。藁人形あった場所の地面は半球状に抉れている。
「…わお」
思ったより強かった。抉れた地面は直径で5メートルくらいありそうだし、藁人形に与えたダメージは2000。
少しダメージを与えられるアイテムになるかなと考えていたが、ダメージソースの主力になれそうな威力だ。
それから何回か爆発させてダメージを確認した。
分かった事は爆心地、つまり爆発時にゼリオンクリスタルに近ければ近いほどダメージが高い。
爆発にギリギリ巻き込まれるって程度の距離でも500くらいは出るし、実際は爆発だけのダメージでなく衝撃で吹き飛ばした時のダメージもあるから普通に強い。
あともう1つ、ゼリオンクリスタルはリアダントクリスタルと仕様は一緒のようだ。一撃で破壊すれば爆発は大きく、先に耐久値が減っている状態で破壊すると爆発は一撃で壊した時よりも小さくなる。
「使える…けど問題があるとすれば、やっぱりコスト、かな」
爆弾の材料となるゼリオンクリスタルの入手方法がネックだ。
バジトラの鉱山へ行って採掘を行い岩を回収し、鍛冶場で溶かして取り出す必要がある。採掘は自分でやってクリスタルを取り出すのは外部委託を行うにしても、やはり知り合いに頼めるような人がいないのが辛い。
鍛冶師との繋がりがあるって言ってたし、あとでエニグマに聞いてみるか。
「余った鉱石とかでどうにか取引出来ないかなぁ」
お金はあんまりないけど、鉱石なら持ってるのに使わない。鉱石を報酬にやってくれたり…はしない気がする。それなら普通に買った方が早い。
いざとなったらポーションとか星水とかを大量に作って売れば良いから最悪お金でも可だが、自分で使う分も含めて考えるとお金はあんまり使いたくない。
まあ、そんなことを考えていても仕方ない。効率化のためにはどうしても必要だ、必要経費と割り切ろう。
「とりあえずいっぱい作っとこう」
ゼリオンクリスタルの「ゼリオン」は爆発を意味する英単語「explosion」を削ったり入れ替えたりして「xelion」にしたのが元です。客観的なネーミングセンスはどうか知らないけど個人的には気に入ってます。




