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93話 水兵服

誤字報告感謝


「リンの髪、銀色だからメッシュとかインナーカラーがあっても似合いそうだよな」


 クランの名前やロゴはエニグマ任せという事で会議が終了し、解散となってクロスくんだけ何処かへ行き、僕、エニグマ、アズマの3人で用もないのに引き続きテーブルを囲んでいる。

 いや、正確には2人は用はないはずなのに、だ。僕はアリスさんからメッセージが来たので、クランハウスのホールで待っているという返事をして待機中なのだ。


「メッシュってミルフィーユみたいなやつ?」


「ん…?」


 あれ、違った?


 髪の色に関する話を振ってきたアズマが困惑の表情を浮かべている。僕だって髪の話から急に食べ物に飛躍していて、話の流れがよく分かってない。


「お前が何を勘違いしてるのかは知らんが、名前の響きが似てる食べ物はキッシュとかだな。ついでに言っとくが、キッシュはミルフィーユに近くもねぇ、近いのはタルトとかだな」


「じゃあメッシュって何?」


「髪の1部に筋のように染色を施す事だな。例えばそうだな、ここの部分だけ青く染める、とか」


 エニグマが僕の前髪の1部を触りながら説明してくれる。

 なるほど、じゃあ間違ってたのは僕か。キッシュとやらとメッシュを間違えたけど、また1つ賢くなった。


 …なんでキッシュを知ってたんだろう? ミルフィーユみたいな物だと思ってたし認識は間違ってるんだけど、それなら尚更どこで知ったのか謎だ。


「インナーカラーの方は?」


「髪の内側だけ別の色に染めるやつだな」


「似合う…? 別にそうでもなくない?」


 銀髪だからインナーカラーが似合うとは限らなそう。どんなものかあんまり想像出来ないけど。

 逆にメッシュの方はかっこよさそう。


「そもそも髪って染められるの?」


「どうだろうな、キャラメイクにメッシュとか無かったし追加要素としてゲーム内で変更出来るんだろうが…見たことないな」


「染料が無いんじゃないのか?」


「多分それだな」



 エニグマとアズマが染料になりそうな素材や、その素材をどう加工したら染料出来るか、みたいな話を続けていると、クランハウスのホールにある水晶の横にアリスさんが転移してきた。


「何を唸っとるんじゃお主らは…」


「リンってメッシュとか似合うと思わないか?」


「んー…ありじゃな!」


「だろ。んで今髪を染める方法を考えてる」


 うーん、アリスさんも巻き込んでまた面倒な事になりそうな予感が……。

 このままでは染料の話にアリスさんも混ざってあれやこれやと熱中してしまうかもしれない。


 アリスさんからは服が完成したから渡すと言われていたので、無理やり話を戻させてもらおう。


「アリスさん、服はどうなりましたか」


「そうじゃそうじゃ、ちゃーんと完成しとるよ。今回はクールビズってやつじゃな」


 そう言って取り出したのは、白メインの半袖のセーラー服のような物と、同じく白メインのハーフパンツ。

 裾や袖、襟なんかには青いラインが入っていて、セーラー服の方にはスカーフがあり、ズボンには錨を模したバックルのベルトが付いている。


 要望として出した通り、ズボンとそれに合わせた服なようだ。

 ハーフパンツって普段履かないから、人に見られる状況で履くのは少し恥ずかしい。人目があって履く場合は体育の授業で体操着を着る時くらいだ。



 装備欄に突っ込んで貰った服を着てから少し動いてみる。


 半袖なだけあって、長袖の軍服ワンピースより少し腕を動かしやすい…かな。あんまり変わらないけど。

 最近はスカートにも慣れてきちゃったから、風通しの良さとかは大して変わらない。でもスカートの中が見えないように気遣う事がないからこっちの方が楽ではある。


「うむ! 我ながら良い出来じゃ!」


 いつものように、パシャパシャと写真を撮りながら満足そうな顔をしているアリスさん。その横で椅子に座っているアズマやエニグマもこちらをじっと見てくる。


「…何?」


「ポニテにしようぜ」


「なんで?」


「クールビズってのに合うからな」


 あぁ、ポニーテールは首元とかが涼しくなるからか。でもよく知ってるな、エニグマって妹かお姉さん居たっけ?

 勝手に納得しながら、アイテム欄から紐を取り出し、ゴーグルを外して髪を結ぶ。ブランに教えて貰っているので…というか、教えてもらわなくてもポニーテール程度なら自分で結べるのだ。


 結び終え、ちゃんと固定出来てるか確認のために少し頭を揺らしてみる。


「似合うじゃないか」


「ありじゃな!」


「全肯定botかよ」


 アズマも紅茶を飲みながら似合うと言ってくれる。


 確かに、髪を下ろしてる時より涼しくなったような気がする。さっき槍に繋がれて飛ばされてた時も思ったけど、風が強く服と髪が邪魔になる場面があるからポニーテールで固定しておくのも良いかも。


「うむ…()いな! 髪が長い男児と間違われる可能性がありそうなのも()いぞ!」


 動きやすいし見た目も悪くないからしばらくはこれ着とこうかな。


 見た目的には涼しめの感じだし、サンダルとか履けばそれっぽくなるんだけど…サンダルってあるのかな。

 前にアリスさんから貰った草履が近いけど、あれはサンダルではないし裸足で履くものでも……ないのかな? どうなんだろう。


「じゃ、僕は用があるのでちょっと」


「いってらー」


「ちょっち待つんじゃ。これを渡しておこう」


 またアリスさんから何か渡される。何かと思って見ると、イルカの髪飾りのようだ。


「それもやろう。使うかはお主に任せる」


「ありがとうございます…?」


 うむ! と満足した感じのアリスさんを見て話が終わったと判断し、うさ丸を持ち上げて自分の部屋に戻る。



 昼にログインした時に何故か僕の部屋に居たヒュプノスさんは居なくなっている。

 なんで僕の部屋に居たのかは気になるけど、それより部屋を占領されなかった事による安堵の方が大きい。そんな部屋に重要な物も置いてないし回収出来るなら別に占領されても良いけど。


「さて、お金稼ぐかー…」


 訓練所の追加カスタムを買って所持金が少なくなっていた所に先程のメルンタウトからサスティクへ帰るためのファストトラベルで2万5000ソルも減ったのは痛い。

 しかもダンジョン攻略で毒煙玉を使って見せてから、エニグマ達から毒煙玉の製作依頼が来ている。お金に換えるポーションと同時にそっちも作っておこう。


 毒煙玉に使う素材はエニグマに要求しているので、そこは心配する必要はない。しかも素材とは別にお金もくれるらしいので単純に稼ぎが増えた。


「助手が欲しい…」


 フラスコに毒草と水を突っ込んで加熱して、錬金釜をぐるぐるかき混ぜて、完成した毒ポーションを空き瓶に移してと、とても忙しい。


 師匠が弟子とか助手を欲しがってた理由ってこれなのかな。

 あんまり手伝ってる感じはないけど、僕の錬金術のスキルレベルが低いからかな?




 しばらく忙しなく動き続けてアイテムを作り続けていると、システムメッセージが届く。


《『錬金術』のレベルが上がりました。19→20》

《『錬金術』のアビリティ:『分解』を獲得しました》


 錬金術のレベルアップ自体は久々というほどでもないけど、新しいアビリティの取得は久しぶりだ。


 新しいアビリティの名前は『分解』。比較的分かりやすいアビリティ名だが、使うには『分解キット』という生産キットが必要らしい。

 そしてそのアイテムを僕は持ってないし聞いたこともない。


「アイテムの分解が出来るのかぁ…」


 薬草とかも分解出来るのかな。


 実際に使った時にどうなるかはさておき、生産キットが無いことには始まらない。

 後で師匠とかぐれーぷさんに聞いてみよう。それで無理だったら生産施設に生産キットが買えるというのをエニグマが言ってたし、そっちを検討しよう。


「ん?」


 『分解』の詳細を調べたり生産キットの入手先をどうするか考えていると、錬金釜の中で沸騰している液体の気泡が大きくなっていた。


「あ、やば…」


 急いでかき混ぜようとした途端に爆発。

 錬金釜の傍に居たので、爆発を諸に受けて壁まで吹き飛ばされ、叩きつけられる。


「いっ…!」


 合成は時間を掛けすぎると爆発するかもって前に考えてたんだった。最初に試した時から時間切れで爆発する事が無かったから、すっかり忘れていた。


「素材勿体ない…痛い……」


 HPも八割くらい消し飛んでしまった。ポーションを作っていたので、水や薬草、シロの実なんかも全部無くなった。


「…師匠の所でも行こう」


 やる気も消し飛んでしまったようだ。


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