表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/245

88話 朝にシャワー浴びると気持ちいいよね

誤字報告とか色々感謝


 『もちもちアサルト』を発動して取り出した餅をむにょーんと伸ばしたりまとめたりを繰り返して遊んでいると、また景色が変わっていた。

 今度の景色は家の中。暖炉が近くにあり、火がついている。窓から見えるのは降っている雪。それのせいか肌寒く、暖炉がちょうどよく体を暖めてくれている。


「…暇ですね」


 餅を弄って遊んでたくらいにはやることがない。


 この暇な時間でアイテムを作っておこうとも思ったが、ヒュプノスさんが離してくれないため立ち上がれず、錬金釜を使った合成は出来ない。

 原初のフラスコを使ってポーションを作ろうとしても、結局「現エリアでは生産行為は禁止されています」という表示が出て無理だったし、夢の世界に来た時と同じでどう帰るか分からず、ただ時間が過ぎているのをボーッと待ってるだけだ。


 しかし何も考えずにいるのも悪い気はしない。これと言って何かを急いでやりたいというのも無いし、餅を弄っているせいでそっちに集中して悩んだりする事も無い。


 結構な時間こうしてゆっくりしているけど、今何時なんだろう。

 メニューから確認すると午前4時。


 ……うん?


「午前4時?」


 おかしいな、さっき確認した時はまだ21時とかだったのに。あれから7時間は確実に経過してない。体感だから正確ではないけど、大体1時間ちょっとくらい。

 じゃあなんで7時間経ってるんだ。表記バグ…ではないと思うけど。


 不思議に思いながらメニューを開きっぱなしにしていると、すぐに1分が経過してしまう。秒数を数えていると15秒で1分、本来1分である60秒でメニューに表示されている時間では4分が経過した。


「4倍…という4分の1倍?」


 時間加速設定って1倍より下になる事あるのか…?

 通常、時間加速設定は等倍から4倍まで。だが今この空間では4分の1倍の速さで時間が流れている。

 でも4分の1倍だったら体感1時間で7時間が経過してるのはおかしい。正確に、というのは難しいけど本当に1時間だとしても経過するのは4時間、1時間15分なら5時間。

 7時間なら7を4で割れば…1.75。時間に直すと………1時間45分かな。そのくらい経過していれば7時間にはなるけど、夢の世界に来てから流石に2時間近くも経ってるいるようには思えない。


「はい考えても無駄」


 どうせ分からない。早々に諦めをつける事も大事なのだ。後でヒュプノスさんとか知ってそうな人に聞けば良いや。

 自分を納得させる為に、「寝てる時ってすぐ時間が経つし夢の世界だから時間が流れるのも早い」とか言っておこう。


 また暇になったのでさっきからずっと無言のヒュプノスさんに話しかけてみる。


「ヒュプノスさんはいつもここで何してるんですか?」


 ……返事がない。


「ヒュプノスさん?」


 ただの屍のようだ。


 …ではなく、寝ている。夢の世界なら眠くならないんじゃなかったのか。無理して起こす必要もないし、寝てるなら寝かせておこう。

 夢の中で寝るってどんな感じなんだろう。夢は見るのかな。見るなら夢の中で夢を見るとかいうちょっと混乱する状況になる。


 こうしている間にも4倍の早さで時間は過ぎていき、餅を伸ばして遊んでいるだけでも30分以上経過している。


「15秒で1分だから7分30秒で30分、15分で1時間かー…」


 適当な曲、1曲で4分くらいだから5曲聞いただけで1時間20分になる。そう考えると本当に早い。


 …需要無さそうだな、この機能。

 ゲームをより長く楽しもうと時間加速を使う人はいるけど、わざわざ楽しむ時間を短くする使い方をする人はそういないだろう。これなら通常の設定項目には表示されないとしても納得出来る。


「…暇だなー」


 暇。

 ヒュプノスさんに捕えられているから動けない上にそのヒュプノスさんは寝てる。動けてもやることはないけど…。

 一体いつまでこうしていれば良いんだろう。何かしたら夢の世界から出られるのかな。


 時間を見るともう5時、さっき確認した時から1時間以上過ぎている。4分の1倍だから僕にとっては15分くらいだけど。

 寝たのが18時くらいだから、寝てからもう11時間……。


「11時間!?」


 ちょっと待った、それは流石に長い。昨日の晩ご飯食べてないのにもう朝食の時間になってる。しかもお風呂入ってないじゃん。

 うーん、まずい。前に1回お風呂入ってないのを真白に怒られたし今回も怒られる。これに関しては朝の寝起きにシャワー浴びるとか言えばなんとかなるけど、問題はもう1つ。

 晩ご飯食べてないと兄さんに怒られる。最悪の場合、ゲームが出来なくなる。多分。怒られたことないから分からないけど。

 いやでもこれだって僕が望んでやった訳じゃないし……って言っても無理だろうなぁ。


 朝食は兄さんも真白も朝が弱いから食べたいなら自分で何か作って食べればいい、というスタンスだから面倒だし誰も作らず普段はない。だから朝食として昨日の残りを食べても良いけど…。


「重いかなぁ…」


 昨日の晩ご飯が何だったのかによるけども。

 今日何曜日だっけ……水曜日か。昨日が火曜だし、カレーではない。金曜と土曜がカレーだけど、金曜日なら食べても食べなくても量が変わったか分からないしどうとでも言えたのだが。


「……なるようになる。きっと」


 諦めた。


 1人でわちゃわちゃ悩んだりしていると、段々と意識が薄れてくる。眠くないのに眠るような感覚に、薄れゆく意識の中でも夢の世界から戻るのか、と簡単に予想出来た。









「…」


 再び目を覚ますと、クランハウスの施設の一つである庭にいた。横にはヒュプノスさんが居て、一緒の毛布に入っている。毛布の上からうさ丸が僕のお腹に乗って寝ているし、他のウサギ達も周りで寝ている。


「よいしょ…っと」


 視界の隅にあった白い靄も無くなっている。

 夢の世界で考えていた、真白に怒られる前にシャワー浴びちゃおうというのを実行する為にクランハウスの自室にうさ丸を連れて戻り、ログアウトする。


 視界が黒くなり、次に見えたのは僕の部屋の天井。

 ヘッドギアを外し、ベッドから降りて伸びをする。


「んにゃぁーっ…」


 変な声が出た。

 それにしても体が重い。昨日はいつもよりも長時間ログインしてたし、体を全く動かさなかったからだろうか。

 運動しないと夏休みに入る前にエニグマとアズマと話していた、筋肉が衰えて歩けなくなるとか夏休み明けの体育の授業で死ぬというのが現実になってしまいそうだ。


「今年はプール行ってないし誘って…いや、エニグマならゲームで良いって言うかな」


 前に湖で十分泳いだし、それで良いだろって感じで言ってきそうだ。エニグマなら有り得る。アズマは…どうかな、あんまり拒否しそうではないけど、僕が思ってるよりもFFにハマってるかもしれないし。


 まあ、プールは置いておいてさっさとシャワー浴びちゃおう。

 寝間着や下着をポイポイ脱いで洗濯カゴに放り込み、浴室に入る。水を出してしばらくしないとお湯にならないのでシャワーを出しておく。

 お湯が出てきたら髪を濡らして適当に慣らしたらシャンプーを……


「あ、間違えた」


 癖でいつもの、兄さんと同じやつを出してしまった。癖って中々抜けないものなんだなぁ…。

 勿体なく思いながら手に出したシャンプーを水で流し、真白が使ってる方を出す。そうしたら手で泡立てて髪を洗う。爪で痛くならないようにしながら後ろ髪までしっかり洗ったらお湯で流して、今度はもう片方の方も。

 トリートメントだっけ、何で2回も髪を洗わなくちゃ行けないんだろう。しかしサボったら何故かバレて怒られたのでやらなくてはならない。

 シャンプーとは違って髪を重点的に洗ったらまたお湯で流し、今度は体を洗う。これは前とそう変わらないから楽だ。ボディタオルにボディソープを出して泡立たせ、自分の体を洗う。


「よし」


 ちゃんと洗って流す。寝起きだし最後に顔洗っとこ。

 それが終わったら浴室から出てタオルで体を拭く。シャワーがお湯だから浴室から出たらかなり涼しく、寝起きでシャワーを浴びたというのも相まって爽快な気分になる。


 パンツとか持ってきとけば良かったなと思いつつ洗面台の下にある棚からドライヤーを取り出してコンセントに挿し込み、点けて髪を乾かす。

 ここからが絶妙に長くて嫌いだ。乾きにくいし髪切って短くしたいのだが、真白にダメだと言われてしまったので何がダメなのか分からないまま切ってない。

 櫛で髪を梳かしながらドライヤーの風を当てるというのを乾くまで続ける。毎回思うけど、これずっと手を挙げてなきゃいけないしかなり辛い。どうにか……出来ないな、多分。


 髪が乾いたらドライヤーと櫛をしまって、自分で髪を触って確認。

 うん、サラサラ。これなら文句も言われないだろう、きっと。


 髪も乾いた所でさっさとパンツを履いたり服を着よう。裸のままでは風邪を引いてしまう。

 自分の部屋に戻って適当な下着と服を取り出し、さっと着てまた1階へ降りる。


「あー、なんか違和感なくなってきちゃった…」


 パンツとかブラジャーとか。普通の女の子は違和感なんて無いだろうからこれが正常なんだろうけど…。嫌だな、男性に戻った時に癖とか付いてたら。


 なんて考えつつ冷蔵庫から大きい紙パックのオレンジジュースを取り出してコップに注ぎ、冷蔵庫に戻す。

 コップを持ったままキッチンを覗くが、昨日の残りはない。ならば冷蔵庫かともう一度冷蔵庫を開けて中を確認すると、ラップが張られたお皿がある。見覚えがないし、あれが昨日の晩ご飯の残りだろう。

 ただ、何故かかなり高い所にある。僕の身長じゃ届かない。踏み台とかもウチにはないので取れない。


「…ま、いっか」


 どうせ高い所にあって取れなかったって言えばなんとかなりそう。

 オレンジジュースを飲みながら食パンをトースターに乗せて加熱し、またちびちびとオレンジジュースを飲んでいると焼けたので冷蔵庫から苺ジャムを取り出して塗って食べる。

 そういえば苺ジャムがあるのは珍しい。いつもはブルーベリーなのに。僕は苺の方が好きだから有難いけど、ブルーベリーは品切れだったのかな。


「んー、今日は何しようかなー」


 テレビを点けるが、夏休みだし平日の朝だから特に面白いのはやってない。チャンネルを変えながら適当にニュースを眺めつつ、FFのCMなんかも見ていたらパンを食べ終えたので消す。


 使ったお皿とかを片付けて自分の部屋に戻ると、スマホの画面がついている。何か通知が来ているようだ。

 スマホを持って椅子に座り、通知を確認するとエニグマからのメッセージだ。宿題見せろとかいう脅迫文が書かれている。

 やる気を出してくれたのはいい事だけど丸写しか…。まあ夏休み明けにイライラしてるエニグマは見たくないし良いよって言っておこう。ただしカメラが壊れてるので家に来てもらう。

 ……不便だなぁ、カメラ壊れてるの。機種も古くなってきたし、変えた方が良いかな。


実はネーミングセンスって名前を生み出す才能だけじゃなくて選び出す才能も入ってるんですよね

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ