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79話 会話が下手


「最初の方はエニグマくん達が全部倒しちゃうから暇だよね、私もいつもやる事なくて…。でも今日はリンちゃんが居るからお話出来るね」


「そうですね」


 コミュ障か? 自分で話してても酷い。

 おっと、ここはエアリスさんとアクアさんは言うほど絡んでもないし、まだ慣れてないと言い訳しておこう。僕自身が多少コミュニケーションが下手というのもあるが、慣れたら平気なのだ。きっと。


 アクアさんとクロスくんからも一緒に行っても良いと言ってもらえて、ダンジョンに初挑戦となった。

 元々5人で組んでいたパーティーに僕が入って、丁度パーティーの人数上限である6人になるのだが、パーティーのうちエニグマ、エアリスさん、アズマ、クロスくんと過半数が前衛であり、このパーティーの適正レベルはダンジョンの20階層代であるため現在の2層では後衛である僕とアクアさんの出番がない。

 だからこんなコミュ障を表に出してる訳だ。僕とて出したくて出してるのではない。


「リンちゃんの服可愛いよね。自分で作ってるの?」


「あ、いや…アリスさんが作ってくれました。不思議の国って店がルグレにあるんですけど、そこの店主さんです」


「不思議の国のアリス?」


「由来はそうだと思います」


 アリスさんと初対面の時に不思議の国のアリスを由来にした、とか言ってた様な気がする。間違ってたら申し訳ない。


 石造りの壁、沢山ある分かれ道と道中稀に置いてある宝箱。ザ・ダンジョンというイメージの道を通り進んでいく前衛組の後ろを着いていく。

 迷いなく進むし、すぐに次の階層へ移動する階段を降りる事になる。サスティクでダンジョン攻略を目的として活動しているだけあって、道は覚えてたりするんだろうか。

 僕だったら地下には行けても戻れる自信はない。むしろ地上へ帰ろうとすると地下への階段しか見つからなくなりそうだ。


 相も変わらず出番は無いので、少しずつ慣れてきた会話を楽しみながら進んでいく。

 会話デッキが少ないのでそんなに多く話題を出せないのだが、ステータスの分配やスキルの取得といった話をしてみると案外長く続きそうだ。


「やっぱり難しいよね! エアリスちゃんは最初から決めてたみたいに迷いなく振るけど、私は未だに迷っちゃうよ」


「分かります」


 その後もエニグマやアズマ、クロスくんも悩むような素振りを見せないから焦って決めちゃう事があったとか、パーティーを組んでる時はアズマが攻撃を受けてくれるから良いけどそうじゃない時は自分に攻撃が来るから防御に振るステータスの割合が難しいとか、色々話した後にスキルの話題に変わる。


「前にエニグマが『ヒーラーが居ない』って言ってましたけど、アクアさんがやってるんですか?」


「一応練習中なんだ。でも元々ヒーラーが居ないパーティーだったから回復魔法を掛けようとしてもポーションで回復しちゃったりするし…」


 慣れや癖って直そうと思ってもあんまり直せるようなものじゃないしなぁ。しかも戦闘中となると考えることに集中出来ないから尚更。


「あと、このパーティーで『魔法攻撃大臣』に任命されてるの!」


「魔法攻撃大臣…?」


「メイン魔法アタッカー? なんだって。手が空いたら回復してくれれば良いって言われてるよ!」


 ああ、魔法攻撃力が1番高いから重要な火力って事か。回復よりも攻撃を優先させた方がその戦闘は早く終わらせ、長期戦による集中力の低下やHP、MP切れなどのリスクを軽減させる…って狙いなのかな。


「でも最近はダンジョンの浅い階層で回復魔法を使ってるから、スキルのレベルは上がってるんだよ!」


「おー」


 確かに、ダンジョンに入ってから戦闘が終わった直後、稀に魔法を掛けていた。主にアズマに対して。

 タンクという役割上攻撃を受けるのはアズマがメインなのでそれは仕方ない事だ。むしろ、9割以上はアズマに対してなのでアズマは自身の役割を見事に全うしているだろう。


「やっぱり難しいですか、回復魔法」


「うん…ちょっとね。パーティーメンバーの体力はずっと表示されてるけど、魔法に集中しちゃうと回復してあげられないし、皆が同時に減っちゃうと誰から回復させるかこんがらがっちゃう時があるね」


 優先順位なんかも考えなきゃいけないのか。回復効果の高いポーションを誰が持っていて誰が持っていないかを覚えたり、回復しないと死んでしまう可能性が1番高い人が誰かを瞬時に判断しなければならない。

 やはりタンクも難しいけどヒーラーも難しさは同レベル、あるいはもっと上だろうか。

 ギリギリの戦いになると、ヒーラーが誰をどのタイミングで回復させるかによってはパーティーの行末をも決定付けるかもしれない。責任重大な役割だ。


 まあ、僕がやるわけでもないのだが。


「大変そうですね」


 回復魔法があるなら魔術に回復属性とかがあっても変ではない…と思う。魔法陣ならポーションほど回復しようとしてから実際に回復するまで時間も掛からない。

 作ることが出来たなら閃光玉を発動させる遠隔起動の魔法陣同様、鉄板に魔法陣を描いた物を沢山用意して、メンテナンスとして返してもらっている間にMPを込めてその間は他のを使ってもらって…というローテーションが可能かもしれない。


 あれ、なんか僕の負担大きくないか。

 …いや、そうでもないか。僕はどちらかというとサポート役の立ち位置だし、戦線に出ることが少ないのだからこれくらいが丁度良いだろう。


「あ、次でボスだね。ボスの前には休憩出来るスペースがあるから、そこでHPとかMPを回復させたり、作戦会議をしたりするんだよ」


 先頭のアズマが階段を降り始めたのを後ろから見ていると、アクアさんからの説明が入る。

 確かサスティクのダンジョン…このダンジョンは、10層毎にテーマが変わるんだったかな。10の倍数の階層にはボスが居て、そこが区切りになってるとかなんとか。

 つまり、今降りている階段の先は10階層目で、ボスが居る。そのボスを倒したら、ここまでの石造りの道とは一変した道になる、という事だ。

 ネタバレをしたくないからか、エニグマやアズマからは何がどう変わるのかは聞いてないけど、「一変した」という表現な辺り、単に色が変わるとかではなさそうかな。


 1番後ろである僕とアクアさんも階段を降り切り、説明してくれた通りのスペースで円になるように並ぶ。

 この休憩スペースは教室程度の大きさだ。降りてきた階段と、その反対側にある、何故か開いている金属製っぽい鼠色の扉しかない。


「今日はリンが居るからなー…アズマはリンを守ってやってくれりゃ良い。んー、そんな所か。俺とエアリス、エックスは前線張って火力叩き込むから、アクアはいつも通り後方支援な」


「うん、任せてね!」


「今日はアズマ無し構成みたいなもんだから気をつけろよ、特にエックス」


「了解です」


 それだけ話したらエニグマを先頭にエアリスさん、クロスくんと続いて扉へ向かって歩いていく。さっきまで先頭だったアズマは、エニグマの指示によって僕を守るために一緒に最後の方に扉へ向かう事になる。


「よろしく?」


 アズマの装備している兜が少しだけ縦に揺れ、親指を立てている。

 鎧を着ている間は喋らないロールプレイをしているらしいし、それの一環だろうか。親指を立ててきたのは「任せろ」って事かな。


「行くぞー」


 扉の前で一旦待ってくれていたエニグマ達が、エニグマの言葉に続いて「お〜」と気の抜けるような声を出しつつ扉を通っていく。僕とアズマもそれに続いて部屋に入って行くと、扉がギギギギ…と重い音を立てながら閉まっていく。

 中に誰かが入ってると閉まるのか。ボスを倒してる途中で別パーティーが横入りしてきたりするのを防ぐためかな?


 扉が完全に閉まると、地面から勢いよくでっかいイノシシが飛び出てくる。その際に地面だった岩も飛び散って降ってきたのだが、もう一度イノシシの方を見ると地面は出てくる前と同じで変わりない。

 登場演出とかあるのか。


「ふぅー……『狂化(バーサーク)』!」


 エニグマがアビリティ名かスキル名を叫んで発動すると、赤黒いオーラがエニグマを包む。そしてそれを合図にしていたかのようにエアリスさんとクロスくんが走り出し、アクアさんも魔法の詠唱に入っている。


「戦闘開始、ね…」


 唯一攻撃に参加せず、僕の近くから動かないアズマはイノシシと僕の間に立っている。守ってくれてるのは凄い分かるんだけど、身長の関係で何も見えない。

 アズマの横に移動して弓を構える。他の人の邪魔をしない程度に僕も戦おう。


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