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184話 魔導プログラム

なんか最近で評価とかブックマークとか急に増えた気がします。ありがとうございます。


 師匠のカメラは撮影はできても印刷はできない。

 かくいう僕も、写真を撮ることはできても僕だけでは印刷は不可能だ。だってプリンター使ってるだけだし。


「えー、あー……もう一度転写、とか……?」


「それはもう試した。だがどうにも転写中に劣化してしまうようでね。機構としては魔石が映した景色を別の魔石が読み取り、また別の魔石に保存する。その魔石に保存された情報を引き出し、セットされた転写用の魔石へ移ったらあとは勝手にやってくれる」


「どこでどのくらい劣化するんですか? 最適化できます?」


「う……む。急に饒舌になったな、助手。最適化できるかも、というのはある。接合部の魔石だな。命令を与え、別の魔石に実行させる役割を持つ」


 なんかプログラムみたいだな。

 僕の予想では師匠が作ったカメラはゴーレムの一種なのだが、そういった細かい部分も指定して作れるのか。チェーンソーなり、ローラースケートなり、僕がこれまで与えてきた命令は回転という単純な物だけだ。

 おそらく、チェーンソーに施した強化は命令とは別物だ。あれはただの付与。


「改善箇所が分かってるのにやらないんですか?」


「やり方を知らない。師には教わらなかったし、独学では方法が全く浮かばない」


 師匠にも師匠が居たのか。いや、居なかったら錬金術をやってないかもしれないから居るんだろうけど。

 それにしても教わらなかった、か。途中で亡くなられたか、会えなくなったとかだろうか。


「別の人から聞くとかしなかったんですか?」


「うーむ。話せば長くなるが、簡単に言うと聞く相手が居なかった」


「へぇ。やっぱり錬金術やってる人少ないですよね」


「少ないというレベルではないが。助手は知らないかもしれないが、錬金術を研究する者、知る者が少ないのには理由がある」


 あるんだ。


「何、簡単だよ。道具が無いんだ。錬金術で使う道具というのは遺跡から発掘するしかない。鍛冶を行う炉や金床などとは違い、錬金術に用いる道具は人の手では作れない」


 プレイヤーと同じ理由じゃないか。

 βテストで一番最初の道具である原初のフラスコが一個しか発見されず、生産キットすら確保できないスキル、役割として認識された。今でこそ入手法が判明し、そこそこ数が増えてきたものの、初期は僕以外の話を聞かないほどだった。

 まあ、今でも入手法はクランに加入するという前提の上、『錬金術』のスキルレベルが一定以上になってから施設を購入して、ようやく買えるようになる。スキルレベルを上げるのはそのスキルを使うのが一番オーソドックスだが、生産系統のスキルである錬金術は生産キットが無いと使う事もできない。つまり、スキルポイントを使用するという代償を払う必要がある。


 あ、でも最近は数が出回って、少し高いけど買えるようにはなってるんだっけ。


「発掘する遺跡も過去の人類が使用していた物だ。私も君も、知らず知らずのうちに過去の錬金術の道具を受け継いでいるんだよ」


「でも埋もれて発掘されてと繰り返しているなら、やる人だって一定は居るんじゃないんですか?」


「そうでもない。おそらく、錬金術の歴史には空白の期間がある。それも言語が変わるほどの期間が、な」


 それはつまり、錬金術の生産キットが発掘された遺跡に残されていた文献や文字などが、今の物とは違うという事だろうか。


 錬金術が世界のどこかで密かに受け継がれ続けていたとしても、空白期間があればあるほど技術は衰える。

 例え錬金術が全体の90%を受け継いだとして、それだと10%の漏れが存在する。初期の90%が次の全体となり、また10%を漏らす。それを繰り返していけば自ずと数は減り、技術も減衰する。

 必ず10%ずつ受け継がずに減っていくのではないが、言語が変わってようやく発掘される遺跡があるくらいだ。受け継がれない部分があるのは間違いない。


「錬金術を継ぐ者が少なくなれば、当然錬金術師を見て錬金術を認識する者も少なくなる」


 段々と減っていって一般人にも知らない人が居てもおかしくないレベルまで衰退したのか。


「なるほど……師匠の師匠はどんな人だったんですか?」


「私の師匠、といっても、錬金術の師匠ではない……いや、ある意味そうなのかもしれないが……。私に錬金術を教えてくれたのは、同郷の考古学者だった。私が所持する一部の道具を発掘した遺跡から、文献を持ち帰ったのも彼女だ。言語を分析し、その内容を教えてもらうことで錬金術を理解したのだ」


 彼女……ということは女性だったのか。師匠と同郷なら、その人もエルフと呼ばれる種族だったのかな。

 話の内容を聞いた限りだと、師匠は今の僕のように、錬金術の先駆者に教わった訳ではないようだ。翻訳にミスがあるかもしれない文献があるとはいえ、人からは教わってない。


「会えなくなったんですか?」


「ん……。言うつもりはなかったが、結局言う事になってしまったな。助手のような年齢に話す内容ではないかもしれないが……その歳で旅をして色々な物を見てきた助手ならいいかもしれないな。私の師匠、彼女は吸血鬼に殺された。ただ我ら種族の血を飲みたいという理由だけでな」


 触れない方が良い話題だったかな。

 いやでも、僕が無理に話させている訳ではない。師匠だってどうしても言いたくないなら言わないだろう。


「ああ、分かってる。吸血鬼だって個体に差はある。彼女を殺したようなのも居れば、助手のようなのも居る」


 そこらへんは人間と同じなんだな。僕を吸血鬼にしてくれたヴラドは優しい部類の吸血鬼だったという事だ。


「そんな感じだな、私の話は終わりだ。……で、改善策はあるのか、助手よ」


「えー……」


 プログラムは全然知らない。ただ短縮する部分があるとしたら、師匠が言っていた接合部だ。

 撮った景色が情報として記録され、魔石内部を伝って移動しているとしたらその過程で情報が劣化している。魔石の並びを見るに、接合部の、命令を与えるだけの魔石を通っている。そこが無駄である可能性は高い。

 一つの魔石に命令と実行を行わせるか、情報を最短で移動させられるように命令を与える魔石を通らないように組み直すくらいか。


「えーっとですねー……」


 というかこのカメラ、全体がゴーレムじゃなくて魔石だけがゴーレムだな。エニグマが設計したチェーンソーに似ている。


 それはそうと、改善できる可能性はあったが実行できるかは別だ。そもそもこういった系統のゴーレムを作った経験がない。与えるべき命令を作るのに特殊な知識が必要なければいいのだが。


「あ、他人のゴーレムは改造できないんだ」


「む? ……そうだったか。他人に見せる機会など無かったから完全に失念していたな」


「そうなると……師匠、作り方を教えてください」


 完成した物を見て理解するのができないとなると、直接やり方を教えてもらい、できたら最適化する方法を師匠に教えるのが早いだろう。

 僕が最適化できなくても、やり方さえ覚えてしまえばエニグマやドクターを頼ることもできる。師匠と面識がない彼らの力を借りるには僕から話すしかないし、どちらにせよ覚えた方が良いだろう。


「うむ」


 教えてもらえるなら分からない事も聞けるからいいな、と考えていると、師匠が紙の束を渡してきた。

 受け取って読んでみるとNPCからは見慣れない文字が出てきた。アルファベットだ。

 プレイヤーはアルファベットを使うが、NPCが使う事はない。日本語だけだ。英単語を口にする事があったとしても、それを表記するのは全てカタカナである。


 アルファベットで表記されているのは意味不明な文字列ではなく、覚えのある単語だ。一応読めなくもない。

 しかし単語とその意味が並べられているだけで、文は一つもない。


「プログラム言語……に近い物かぁ」


 実際のプログラム言語なんて知らないが、多分僕では理解できないくらい難しいだろう。


「何だ、知っているのか。この言語は先程言っていた遺跡から発掘された文献を解読した物だ。これを魔導プログラム言語、と呼ぶ」


「魔導プログラム……」


 これ全部暗記しないといけないのか、面倒そうだ。

 この言語が遺跡から発掘された。それはつまり、いつだかは分からないが過去の人類は英語またはアルファベットを用いる言語を使用していた事になる。

 だから何だ。別に関係なかった。

 ……いや、遺跡に出向く事があれば少しは役に立つかも。少しは。


「これは私もまだ分からない点が多いんだ。何せやった事もない翻訳をしながらの研究だからな。考古学を嗜んでいる者が協力してくれていれば多少は楽なんだろうが」


 そう言いながら俯く。これも先程言っていた師匠の師匠、同郷の考古学者だという人だろうか。


 それはそうと、思った事が一つ。

 星占いといいこの魔導プログラム言語といい、プレイヤー向けの点もあるようだ。チュートリアルは相変わらず無いが、現実にあるような要素や、NPCとプレイヤーを比べた時にプレイヤーが有利になる要素が少なからずある。

 星占いはカメラというアイテムの存在、魔導プログラムに使用される言語は現実で知り得る言語であること、その意味を理解できること。


 教えてもらってばっかりだけど、魔導プログラム言語では僕の方が有利だ。今まで教えてもらった分、僕が理解して教えられればお返しもできるだろう。


「頑張ります……」


「ふむ、助手が興味あるなら手伝ってくれると嬉しい」


 だが、無理して体を壊すことはしないように。助手はまだ子供なのだから、私と違って健康にも気遣え。

 そう言いながら、また別の紙の束を渡してきた。まるで自分は健康を気遣わなくもいいみたいな言い方だが、それはない。子供だろうが大人だろうが、健康には気を付けるべきだ。と、反論しておいた。

 新しく渡された紙束は、遺跡にあった文献をそのまま書き写して複製した物らしい。少し読んだが全部英語だ。


「勉強しておきます。それで師匠、今日来たのにはまだ別の理由があるんですよ」


「うむ。実はな、私も切り出しにくくてまだ聞きたいことがあるのだ」


「はい」


「その耳、なんだ……?」


 今更?

 ここまで会話してて、今更?


 僕の表情を読み取ったのか、次に言おうとした事を予想できたのか、僕が口を開く前に師匠が発言する。


「いや、吸血鬼という点で警戒心が強すぎてな。話している間に聞くタイミングを逃した。で、その耳は? 飾りではないように見えるが」


「グレイズの近くにクォールという名前の村があるんですよ。そこで信仰されている神様がキツネの神様なんです」


「聞いたことがある。巫女が後天的に獣人になるみたいな話があったはずだ」


「それです」


「……巫女になり後天的な獣人として存在しているのか。その上で吸血鬼になった、と」


「はい」


 頭を撫で、耳と尻尾を触ってくる。師匠の顔は何故か満足気だ。ブランやアリスさんとかも触ってくるとき同じような顔をしているが、触り心地が良いのだろうか。今度ブレイズさんの耳と尻尾を触らせてもらおう。


「それで、助手が聞きたい事というのは?」


「この首飾りに組み込まれている転移の魔法陣についてなんですけど」


「ああ、それも魔導プログラム言語だよ。転移の魔法陣は単体では機能できない。その理由が位置の指定だ」


 魔導プログラム言語で位置を記録し、魔石から引き出した位置情報を元に転移先を選択する。それが黄昏の首飾りが転移するプロセスだ。


 首飾りに使われている魔石が、複数の属性で何個かあるのは魔力の補充用だけではないらしい。それぞれに魔導プログラム言語が埋め込まれている。

 一つには位置情報が記録され、一つには現在の位置情報を読み取るプログラムがある。その他にも転移の魔法陣を生成したり、その魔法陣に位置情報を読み込ませる役割があったり。

 なので、首飾りの魔石が一つでも壊れると正常に機能できなくなる。


 つまり、魔導プログラム言語を習得しない事には使えない。

 魔導プログラム言語、新しく出てきた要素かと思ったがずっと前から知らない内に使っていたようだ。


プログラム言語なんて知らないんで設定はオリジナル且つ適当です

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― 新着の感想 ―
[一言] 教会で転移できるよな もしやかつての遺産?
[一言] どっかに考古学者いないかな?
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