表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
181/245

181話 星命の護符

久々でした

世間は大変なことになってたりしますねー



 現在開催中のイベント、「都市防衛ライン」。

 このイベントは「大狩猟祭」の続きで、時期的に大量発生したモンスターが街を襲撃する頃合いなので都市の防衛戦力が増加する。

 開催場所は全ての街となっているが、襲撃回数やタイミングは不明だ。NPCの話によれば一回も襲撃されることなく終える時もあるようなので、0回もあり得る。

 また、イベント報酬も不明だ。報酬の内容も、手に入れる条件も。エニグマの話によればおそらく貢献度で配布内容が変わる、とのこと。敵へのダメージや撃破数、状態異常の付与などを総合して分配される経験値と同じシステムだろうと言っていた。


 そしてエニグマと最後に会った時にこうも言っていた。


「防衛イベントってことは、多分だが防衛しないと壊滅する街があるはずだ。壊滅する街よってストーリーが用意されてるかもな。そして壊滅によってモンスターに占拠された場合、次のイベントに繋がる。都市防衛ラインから、都市奪還作戦みたいなイベントだろうな。飽くまでも予想が正しければだが」


 らしい。僕が普段から行くとかクランハウスがある街……ルグレ、バジトラ、サスティク、セーヴィル辺りが壊滅しなければ案外どうでもいい気もする。これは人によって違うし、どこが壊滅しようと話題にはなりそうだけども。

 エニグマが言っていた通り、もしかしたら次のイベントの舞台が壊滅した街になるかもしれないし。



 僕が防衛に参加するのはセーヴィル。守りたい理由がある街もなく、温泉旅行へ行ってから街の間を移動をしていない僕は別の街へ行くのにまたお金がかかる。それもそれで何か嫌なのだ。遠くへ行くと必要になる金額も増えるから、いざという時のために節約しておきたい。


 一緒にパーティーを組んで戦うメンバーはレジェンズ所属のドクターとブラン、温泉旅行で少し仲良くなったラピスラズリだ。

 レジェンズとパンドラの箱の同盟で互いのクランハウスへの移動が可能になった今、レジェンズに所属している二人がセーヴィルに来ることも容易い。と思っていたのだが、二人とも別件で元々セーヴィルに居たらしい。


 しかしパンドラの箱のクランハウスは役に立っており、襲撃を待機している間は暖かいクランハウスの中で自由にできる。




「……リン。やはりおかしい」


 錬金ラボで作業をしていた僕と何かを考え込んでいたドクターだが、ドクターが急に声を上げた。

 それと同時に、ドクターが撮った星空の写真のプリントが終了し、プリンターから鳴っていた音が止む。


「おかしいって?」


「コンテンツに差があると思わないか? 合成は莫大な可能性を秘めているというのに、調薬や星占いは出番が少ないじゃないか。調薬で作れる物は合成で同時大量生産ができるし、星占いは今のところ二つしか使い道が分かってない」


「確かに」


 現段階で判明している星占いの使い道は星の写真を水と合成してポーションを強化できる星水を作れるのと、星の写真と石を合成して武具を強化できる星石を作れるだけだ。

 この二つは僕が発見したアイテムだ。ドクターも錬金術を始めて星占いができるようになってから色々と検証して使い道を探しているようだが、成果は芳しくない。


「そこで行き当たりばったりに合成できるアイテムを探すのはやめにしようと思う」


 これまでが行き当たりばったりだった事の方が驚きだが。


「星占いというのはいわゆる占星術だ。占星術は名前だけで中身は一切知らないのだけど、名前からして星座から何かを占うのだろう。そう思わないか?」


「まあ、でしょうね」


「この星の写真を生み出す過程で何かを占っているとしたら、星座を収めた写真が必要なのではないか」


 星空の写真を占星盤へ挿入することが占うという行動で、それで完成した星の写真というアイテムが占いの結果、と言いたいんだろうか。それなら星の写真を生み出す過程で何かを占っているというのも理解できる。

 しかし星座の写真を収めた写真。数多くの写真を星の写真へと変換してきた僕でも、特段変わった写真は手に入れた事がない。回数を重ねているのなら偶然星座が映った写真があってもおかしくはないのだが。


「でも今までの占星盤を使ってきて偶然でも星座が映ってる写真が一つもなかった事になりますよ」


「そう言われるとそうなのだが。でもリン、私は今ある可能性を見出したよ」


 今の一瞬で何か閃いたらしい。


「この世界では、星に関する知識や文献の類が極端に少ないように感じる。偏りがなければ、そもそもこの世界の住人は星に注目したこともないのでは?」


「……というと?」


「星座の定義が存在しない可能性だ。現実では昔の人間が光の強い星を線で結んで描いた星座があるが、星への注目がなければその行為はしない」


「簡潔に言うと?」


「私たちで星同士を線で結んで星座を作らないといけないのではないか、という事だ」


「なるほど」


 ドクターの悪い癖とも良い癖とも言い難い遠回しな説明が入ってきてしまったので、結論を急かした。

 言っていることが分からない訳ではない。星座が無いのなら星座で占うこともできない、はずだ。


 星座を描くのなら、僕にもちょうど心当たりがある。

 星占いの何個か先のアビリティだが、構築に使う生産キットである構築キット。その中に、鉛筆が含まれていた。他の道具と違って使い道が分からず放置していたが、もしかしたら使えるのではないだろうか。


「繋げてみます?」


 鉛筆と構築キットを使用するのに必要な作業シートを取り出し、プリンターから回収した写真を確認しているドクターに提案してみる。

 ドクターは僕と僕の手にある物を見て、ニヤリと笑う。


「いいね」


 材質が変わる黒い紙こと作業シートを机の上に広げ、ドクターから写真を一枚受け取る。

 おそらく、『構築』を持っていないドクターでは構築キットに含まれる鉛筆を扱うことはできないだろう。しかし写真は僕もドクターも見えるので、二人でどこを繋げるか話して僕が線を引けばいい。


「光が強い星を結んで何に見えるかを考えるか」


「そういう感じなんですか」


「私が星座の考え方なんて知る訳ないだろう。天文学者じゃないんだぞ」


 言われてみればそうである。

 しかし昔の人ってどうやって星座を考えたんだろう。神話と密接な関係があるような気がするけど、星座と神話ってどっちが先が生まれたのかが問題になってくる。神話が先なら、神話の生物とかを星座で良い感じに描いたんだろう。あと神話じゃなくて実在する生物でも同じことになる。

 サソリ座とかあるし元が何かあってそれを星座で描いたのが星座になったような気がするな。


「ここを結ぶとペットボトルに……」


「それで成功しても嬉しくないと思うんですけど」


「星座を結んだことで何が発生するかは関係ない、何かが発生したという事実が大事だ。その試行が正解だという証明になるからね」


 言動は間違ってないのは確かだ。

 しかしペットボトルの形を取って成功するんだろうか。特定の星座にしないと意味無いとか、そういうのは無いのか。

 そう思いつつも、これで成功するなら何やっても大丈夫だという結果が出ることも間違いない。なので言われた通りに星同士を結び、ボトルの形を作る。


「描きましたけど」


「この時点で変化が無いのは想定内だ。占星盤を通した時にどうなるかだが……」


 ドクターに写真を渡すと、占星盤を取り出してその中に挿入した。

 星の写真を作る時には毎回この動うが、今回の結果は変わるだろうか。


「おっ」


 何かあったようだ。

 立っているドクターの手にある占星盤は僕の身長ではただ立っただけでは見えないので、椅子の上に立って占星盤を覗き込む。


 普段は写真に写っている全ての星の光が強くなって強調表示されているが、今ドクターの手にあるものは違う。

 星全てではなく、一部の星と僕が描いた線が白く光っている。黒い鉛筆で描いたのに。引いた線が分かりにくいかなとは思っていたが、これはちゃんと配慮されてるんだな。


「良い感じですね」


「成功、でいいかな」


 これで星占いの従来とは違う使い方が存在していると分かったわけだが、肝心の使い方が判明していない。

 師匠に聞こうにも、星占いについては知らなかったしこの事についても知らないだろう。

 チュートリアルが無い以上、やはり自分たちで試行錯誤する他ない。


「『星命の台座:杯』。紙と合成することで護符を作成できる、か」


 試行錯誤を覚悟したが、星水のように使い道も説明されている親切なパターンらしい。

 ドクターは占星盤から取り出した写真の名前と説明を読み上げた後、錬金釜に放り込んで紙と合成した。


 そして完成したのは先程僕が描いた星座が記され、その裏面に水の雫のようなマークがあるトランプのようなサイズの紙だった。

 写真と紙、両方ともトランプのようなサイズでは無かったので、サイズは固定で勝手に変更されるのかもしれない。


「どんな感じです?」


「『星命の護符:杯』。使用すると水属性ダメージが5%上昇する。使用対象は選択可能」


 つまりバフアイテムだ。

 水属性ダメージが5%上昇、というのは基にした星座が杯だからだろうか。杯は水を注ぐものだから、それに関連して水属性、とか。

 使用対象を選択できるのも有難い。ポーションのように効果を得るプレイヤーが飲む必要はないし、注射器のように使用時にダメージを与える事も、狙いを付ける必要もない。おそらく効果を適用させる相手を思い浮かべながら使用すればいいはずだ。


「珍しい効果ですね」


 唯一気になるのはそこだ。

 水属性ダメージの5%上昇。『緋色の共鳴』のように多くのステータスが大幅に上昇するのではなく、特定の属性でのみ効果を発揮し、数値は5%と比較的低めだ。

 まあ、水属性は吸血鬼の弱点に入っていて僕は水属性の被ダメージが25%上昇するので、敵が使ってきたら5%でも侮れない攻撃力になりそうだが。


「効果の違いなども調べてみよう」



設定は適当に考えました次の更新はいつになるか分かりません

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 重複するんだろうか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ