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148話 狐の神様

調子が良ければ今日の夜にもう一話更新しまあああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーすん


「準備はいいですか?」


 巫女の問いに頷き、了承の意を伝える。

 僕とブレイズさんが頷いたのを確認した巫女は、ハンドベルを持った手とは反対の手に持った灯篭を翳した。灯篭が揺れているのを見ていると、視界の端で黒い影が落ちてくるのが見えた。


「ん……?」


 何かが落ちてきた。確かにそう見えたのだが、地面を見ても巫女の前にキツネが座っているだけで、変化はない。キツネはさっきからずっと座ったままだ。

 だが僕の気のせいではないらしく、ブレイズさんも何か落ちた? と僕と同じ反応をした。


『聴こえるか、人の子よ』


 座っていたキツネが立ち上がり、口を動かすと同時に声が聴こえてくる。男性なのか女性なのか分からない中性的な声だ。

 先程巫女がキツネに神様を憑依させると言っていたし、喋らなかったのに急に喋り始めたし今はこのキツネに神様が宿っているのだろう。

 立っている状態から見下ろすのもどうかと思うので、少しでも目線が合うようにしゃがんで声を聴く。


「狐が喋った……すっげぇ……」


「可愛い」


『撫でるでない』


 キツネが目の前に居て可愛かったから撫でたら怒られてしまった。


「貴女達も聴こえるのですね……」


『何用だ』


「耳と尻尾が気になって……」


 別に、神様に会いたい教徒ではない。巫女に生えている耳と尻尾が気になり、巫女の資格がどうとか言っていたから試してみただけだ。

 神様の声が聴こえたからと言って何かしたい事があった訳でもないので、用は何だと言われても答えようがない。


『巫女の資格が欲しいのか。私と会話できているだけでその資格は十分にある。貴様がその意志を示せば、いつだって巫女になれる。なに、この地に縛られる必要はない。貴様らは今までと同じ生活をしておればよいのだ』


「それ神様に利点あるんですか?」


『貴様らを通じて遠く離れた場所の様子も見れるからな。見たところ、旅の者だろう?』


「なるほど。じゃあお願いします」


『いいだろう』


《称号:『リシッツァ神の巫女』を獲得しました》

《システム設定項目:「スキル、称号による外見の変更」がオフになっているため、称号による効果が十分に受けられません。このメッセージは初回のみ表示されます》


 もう巫女になった……のだろうか。称号を見れば巫女と書いてあるし、なったと思っておこう。

 設定についてのメッセージが来たので言われた項目を探す。「スキル、称号による外見の変更」という項目を変更しようとすると、全てオフか全てオン、選択してオンにできるようなので、今手に入れた『リシッツァ神の巫女』を選択してオンにしておく。


 次の瞬間、頭とお尻辺りに全く身に覚えのない感覚が増えた。

 うさ丸を手に持ってもう片方の手で自分の頭を触ると、もふもふした獣耳が生えている。意識を集中させればぴょこぴょこと動かすことができる。

 頭に増えた感覚が耳ならお尻の感覚は尻尾だろう。服が尻尾を想定されていないはずなのだが、違和感も抑えられている感じもしない。こちらも意識すればある程度自由に動かせる。

 耳と違って尻尾は自分で自分のを見れるが、髪と同じ銀色だ。巫女のもそうだから、耳と尻尾は髪と同じ色になるんだろう。そうなると僕の耳も銀色になっているはずだ。


 ブレイズさんの方を見ると同じように耳と尻尾が生えている。やはり髪と同じ色になるようで、ブレイズさんに生えているのは耳と尻尾は紺色だ。

 僕同様、慣れない感覚に戸惑っているようだ。


『……む? 銀の方からは神性を感じるな。他の神と会った事があるのか? まあよい、これで貴様らはしかと巫女の資格を受け取った』


「ありがとうございます」


 設定項目の「スキル、称号による外見の変更」が個別設定に対応しているのだから、不都合があれば耳や尻尾は消せるだろう。これで不便になることはなさそうだ。


「収穫はあったし帰る?」


「僕はそれでいいですけど、ブレイズさんは探索とかしなくていいんですか?」


「そう言われると悩むな……」


『レーニイよ、貴様もそろそろ村に戻るべきではないか?』


 神様が言った名前、僕でもブレイズさんでもないのだから巫女の事だろう。レーニイって名前らしい。


「……そうします。少々社を空けることになりますがよろしいでしょうか」


『構わぬ。たまには妹に会いに行ってやるべきだろう』


 ヴェーラというのが巫女、レーニイさんの妹。話を聞いた限りではしばらくの間会ってないようだ。社の中に居る時にヴェーラさんの話をしていたし定期的に会ってはいるが前に会った時から時間が経っている、という事だろう。

 レーニイさんはどうやって生活しているのか。僕やブレイズさんのようなプレイヤーならともかく、NPCであるレーニイさんは食事も必要だ。それは神様を呼び出す前にサンドイッチを食べていたことからも分かる。


「なら一旦村まで帰ろうか」


「はーい」


 ブレイズさんがまとめてくれたのでそれに便乗しておく。

 相変わらず自分の方向感覚はいまいち信用できないので前を歩くブレイズさんに着いて行き、その僕の後ろにレーニイさんが着いてくるように歩く。神様はいつの間にかいなくなっていて、神様が憑依していたキツネは普通のキツネに戻っていた。


 前を歩くブレイズさんの尻尾が一歩進む度に揺れる。目の前で尻尾が左右を行き来するから無性に触ってみたくなる。


「ひゃっ!?」


 だが尻尾のもふもふを自分の手に感じることはなく、逆に僕の尻尾を急に触れられ、全くの予想外の感覚に背筋がピンと伸びた。

 犯人は一人しかいない。僕の尻尾を触れるのは後ろに居るレーニイさんだけだ。


「ん? どしたー?」


「あら、申し訳ありません。無性に触ってみたくなりまして……」


「いえ……」


 本当にびっくりした。思わず叫んでしまうくらいには。今まで尻尾が無かったから、自分で尻尾を触る感覚にも慣れていないのに、意識外から急に触られるのにはもっと慣れてない。

 というかいつまで僕の尻尾を触ってるつもりなんだ。


「他人の尻尾を触るのってこんなに心地良いものなのですね……」


「え、あの……」


 こっちを振り返って見ているブレイズさんに視線で助けを求めるが、困ったような顔をするだけだ。


「背中に乗る?」


「それは……遠慮しておきます……」


 そんなに誰かに背負われたい願望もない。仕方ないし尻尾を触られてるのを我慢しながら歩こう。

 レーニイさんも割と器用で、歩いて尻尾が揺れるのに合わせてしっかり触ってくる。自分で触るのとは違って触られる感覚が予想できない分、どうにもくすぐったさが勝ってしまう。自分でお腹をくすぐっても特に何も感じないように。






 そうしてクォール村まで戻り、社へ向かう前に訪れた教会へまたやってくる。登る時よりも下りる方が楽だった。

 教会へ入るとまたうさ丸が頭の上から降りて勝手にどこかに跳ねて行った。


 うさ丸を追って中へ進むとレーニイさんの妹、ヴェーラさんが祈りを捧げていた場所まで来る。


「ヴェーラ」


 レーニイさんが声を掛けると、暖炉の傍で編み物をしていたヴェーラさんが振り向いた。


「姉様……?」


「戻りましたよ」


「姉様! お帰りなさい!」


「お腹が空きました」


 この巫女、どことなくポンコツ臭がするな。

 最初に訪れた時に一回も顔が見えなかったヴェーラさんの顔を拝むことができた。レーニイさんと似た顔つきで、傷がとかは一切ない。あの時に顔を見せなかったのはただ面倒なだけなのかも。


「そちらの方々は……先程の……?」


「ええ。リシッツァ神の御声を聴き、巫女の資格を得た方たちです」


「無事に社まで辿り着いただけでなく、巫女の資格まで……」


 そこまで驚かれることだろうか。


「やっぱり何か厳しい条件があるのかな」


「条件とかあったんですかね、全然そんな感じしませんでしたけど」


「条件が無かったら村の人みんな巫女になってるだろうから無いって事はないと思うんだけどな」


 ブレイズさんと小さな声でこそこそと話す。条件があるとすれば何だろう、キツネが好きとか?

 でもキツネが好きなだけで巫女になれるなら、それこそ村の人達の全員とまではいかなくとも一部は巫女になっていてもおかしくはない。


「ヴェーラ、お腹が空きました。何か食べ物はありませんか」


「分かりました、食事を御作りしましょう。貴女方もお食べになられますか?」


「んー、俺はどっちでもいいかな。どうする? リンちゃん」


「僕もどっちでも」


「でしたら御一緒に食べましょう。貴女達のお話も聞いてみたいです」



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