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146話 山頂の社

短いのもこの時間なのもやる気が出ないのが理由でし


 少し嫌な予感がする。その予感が絶対に正しいとは思わないが、ネクロのように会話をした後に戦闘になるかもしれないので対応できるようにシリンジカタパルトを取り出し、注射器が装填されていることを確認する。


「あ、うさ丸……」


 注射器を確認していたら、頭の上に乗っていたうさ丸が祈りを捧げている女性の方へぴょんぴょんと近付いていってしまった。

 うさ丸が近付いてしまった以上もうすぐこちらに気付くだろうから、女性に刺激を与えないようにシリンジカタパルトを下ろしてうさ丸を追いかける。


「あら……村の外の人、ですね……?」


 うさ丸が女性の傍まで行くと、女性はこちらを見る事なく話しかけてきた。


「よく分かるね」


「ええ、村の人間はここへ入ってきませんから」


 やっぱり勝手に入ったらダメじゃないですか、と女性に聞こえないような小さい声でブレイズさんに言う。

 ブレイズさんは目を逸らし、まあ怒ってなさそうだし平気だよと小声で返してくる。一応悪いとは思っているらしい。


「で、噂の巫女ってのは貴女?」


「いいえ。巫女は私の姉です」


 巫女本人では無かったけど関係者ではあったようだ。しかも血縁関係者だった。


「巫女には会える?」


「この山の頂に社があります。そこへ行けば会えるでしょう」


「どうする、リンちゃん」


 そこで僕に振ってくるのか。

 少し歩いて行けば会えるというなら、会うだけ会ってみるのがいいかもしれない。イベントとかがあるならそれで良いし、無いなら無いと分かる。


「行きますか」


「りょーかい。じゃ行こうか」


 邪魔して悪かった、それとありがとう。そう言ってブレイズさんは部屋から出ていく。


「うさ丸、おいで」


 女性の傍に居るうさ丸を呼んで頭の上に乗せ、失礼しますとだけ言ってブレイズさんを追う。

 ブレイズさんは既にこの建物から出ているので、外に出れるように入ってきた時に脱いだ防寒具をもう一度着用して外へ出る。


「山頂ですよね」


「多分あっちかな」


「あの女性、結局こっちを向くこと無かったですね」


「だね」


 先程まで話していた女性、実は一度もこちらを見なかった。その理由が宗教上祈りを捧げている途中だからとかなのか、顔を見せたくない理由があるのか、もっと別の理由なのかは分からない。

 僕達が見たのは女性の後ろ姿だけであり、そこから読み取れる情報はそう多くない。髪が長く僕と似たような銀髪である事と、民族衣装っぽい格好だった事くらいだ。

 唯一すぐ傍まで近付いたうさ丸なら何か見たかもしれないけど、そのうさ丸の記憶を僕が知る術はない。うさ丸が何か見ていようが見ていなかろうが、結果は同じだ。


「まあメタ的な視点で考えるとこんな辺境にあるんだからイベントとかクエストはあると思うけどね」


「だといいですけどね……」


 それっぽい伏線があるバジトラの鉱山も特に何もないし、案外何かありそうで何もないパターンは存在する。今回がそれに当てはまらない事を願うが、実際にどうなのかはここで考えても分からない。








****








 山道に入ってから村までのと同じくらい歩いて山頂付近まで到達した。

 ただ山頂はかなり広いようで、空が近く感じる開けた土地が広がっているが、行こうとしている社はまだ見えない。


 また、道中で気になったことがある。

 キツネが多い。

 山道に入る前の区域にはキツネ、タヌキ、ヒョウの三種類のモンスターが出現していたが、山道に入ってから村に到着するまでの間はそのどれもが姿を現さなくなっていた。

 しかし村から山頂までの道のりでは至るところでキツネを見かけた。タヌキも数匹いたが、それでもキツネに比べるとほんの僅かな数だ。ちなみにヒョウは一切見ていない。

 それは山頂に来ても同じであり、木々の間を見ればキツネが居る。


「キツネ……」


 可愛いし一匹くらい持って帰りたい。多分一匹くらいならバレない。しかも称号の効果で動物と仲良くなりやすいし。


「ん、多いね、狐。住処がここで山の下に居たのは狩りに出てた個体かもね」


「可愛いですね」


「……まあ寒いし体毛がふかふかしてそうだけどね」


 帰りに一匹持っていけないか検討してみよう。


「お……? あれじゃない?」


 しばらくキツネを眺めていたら、ブレイズさんが何かを見つけたようだ。視力の差なのか、僕が辺りを見渡しても何かあるようには見えない。木々とキツネばかりだ。


「何かありました?」


「うん、あそこに社がある。見えない?」


「見えないです」


 やはり見えない。ブレイズさんが指した方角を見ても、だ。

 すると急に視線が高くなる。足が浮き、脇腹を掴まれる感覚、ブレイズさんに持ち上げられている状態だ。


「え、軽っ……」


「あ、見えました」


 確かに持ち上げられた視線なら建物があるのが見える。先程見えなかったのは背が足りなかったからのようだ。身長に関しては本当に不便だ、この体。

 持ち上げられた時にブレイズさんが軽いと呟いたからなのか、視線は下がる事なく建物に近づいていく。自分じゃ分からないけどそこまで軽いのだろうか。身長が低いからその分の重量は他の人より少ないし、太ってもないか結果的に軽い……のかな。重いよりかはいいけども。


「社……まあ普通に神社だね」


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