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145話 クォール村

やる気出ないので短めデェス


 ログインする度暇そうな感じでクランハウスに居るブレイズさんを誘って何日かレベル上げを続け、少しずつ場所を変えてグレイズまで来たら、ブレイズさんから話を切り出された。

 道は繋がっていないけど、グレイズの西にはクォールという村がある、と。




 クォールがあるという方角に向かい、葉が枯れ落ちた裸木の林を進んでいく道中。

 エニグマによってメルンタウト周辺に飛ばされた時はモンスターと遭遇しなかったため、積雪地帯は生息するモンスターが少ない、またはそもそも存在しないのかもと考えていた。

 しかし実際はそうではなかった。メルンタウト周辺が特別なのか、ただ僕の運が良かっただけなのかは分からないが、グレイズからの道中では当然モンスターとの戦闘になる。


 グレイズ周辺に現れるモンスターはキツネやタヌキ、ヒョウなど。現実ではあまり考えられない分布だが、この世界では現実の弱肉強食は通用しないようである。

 ただしプレイヤー……というよりはおそらく人間に対しては、キツネとタヌキはノンアクティブモンスターだ。つまりこちらから戦闘を仕掛けない限りはキツネとタヌキは戦うことがない。

 逆に、ヒョウはこちらが何かしなくても攻撃してくる。全く警戒しなくても平気というわけではない。


「ブレイズさん!」


「あいよー!」


 シリンジカタパルトから射出された注射器がまだこちらに気付いていないヒョウに刺さり、麻痺の状態異常を付与する。動けなくなったヒョウに隠れていたブレイズさんがトドメを刺し、戦闘は終わる。


「やー、っぱ楽だねぇ。助かるよリンちゃん」


「僕も助かってます」


 チェーンソーは音が大きい上に攻撃するためには両手で持つ必要があるため、シリンジカタパルトを持っているとスムーズに攻撃できない。しかしブレイズさんが麻痺させたヒョウを攻撃してくれる事で手早く戦闘を終了させられる。

 ブレイズさんからすると、僕が持っているシリンジカタパルトが与える状態異常が魅力的なようだ。ブレイズさんといえども動きが速いヒョウの相手をするのは面倒なようで、麻痺で動きを封じられるならば、あとは動けないヒョウを攻撃して終わりになる。

 ちなみに麻痺はぐれーぷさんから貰った麻痺キノコという素材を使って麻痺ポーションを開発したので、それを魔導血液を使って注射用に改変したものを使っている。




「かなり歩いたしもうすぐ着くかもね」


「そういえば何も聞いてなかったんですけどクォール村って何かあるんですか?」


「アルニクスのNPCから聞いた話だと氷雪の大地の巫女がどうとか。宗教の色が強くて信仰深い村らしいよ」


「大丈夫ですかね……? 勧誘とかされません?」


「まあ断ればいいし、最悪麻痺らせて逃げちゃおう」


 この辺りは常に雪が積もっているほど寒く、人々の服装は厚着だ。それは僕やブレイズさんも例外ではない。

 厚着で問題になるのはシリンジカタパルトの射出速度及び注射器の貫通性能。つまり、厚着では注射器が服を貫通しない事だ。

 そうなると狙うべき部位は必然と少なくなる。露出している顔や手袋の材質や構造によっては他よりも布が薄い手などに正確に狙いを付けるのは難しい。


「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。怖くなったら目を閉じて耳を塞いでれば俺が頑張って説得するから」


 それは果たして本当に説得なのだろうか……?


 若干心配になりながら『探知』を使ってヒョウが来ないか警戒しつつ進んでいくと山道に入る。雪に足を取られるのに坂道で足を上げる必要があるから動きにくい。

 そのまま行くと、ポツポツと家屋が見えてきた。


「お、見えてきたね」


 仕切りや壁などもなく、道に沿って家が建っている。キツネやタヌキはともかく、ヒョウが出たらどうするつもりなのか。

 いや、もしかしたら山に入ったことで出現するモンスターが変わっているとか、ヒョウの生息域から外れているとかなのかもしれない。どうであろうが存続できているのだからそこまで深く考える必要もないだろう。


「巫女が特別な存在なら専用の施設があってもおかしくない、か」


 ブレイズさんが呟いた独り言が聞こえてくる。

 確かに、この村から離れたアルニクスで巫女の話を聞いたのなら巫女が特別な存在で近隣の街や村で有名である可能性が高い。その知名度の所以が何かは分からないが、持て囃しているのであれば特別な建物に住んでいたりしても何ら不思議ではない。


「巫女ってことは仏教に近い宗教なんですかね?」


「うーん、現実の日本における巫女は仏教じゃなくて神道かな。この世界の、またこの村が信仰している宗教が巫女という呼び方をしてるだけかもしれないし……となると特別な施設もあるか分からないな。

 でも少なからず宗教の思想を伝える人間が存在するはずだから教会みたいなのは流石にあるかな?」


 仏教と神道の区別が難しい。宗教にあんまり詳しくないし。


「ってこーとーはー……あれか。行こう」


 何かを見つけたような反応をするブレイズさんの後ろを着いて行くと、周りの家屋と比べると少し大きめの建物の前までやってくる。

 ブレイズさんは迷いなく中へ入っていく。中は暖炉か何かがあるのか、防寒着を身に着けていても感じていた寒さを全く感じなくなる。むしろ防寒着をそのままにしていると暑いので、上着を脱いで手に持っておく。


「微塵の躊躇いもなく入りましたね」


「これだけデカいんだからきっとオープンな施設だよ。……ほら」


 そう言って扉の先を覗き込んだブレイズさんに続いて中を見ると、大きな祭壇に向かって手を組んで祈りを捧げている女性の後ろ姿が目に入った。なにが「ほら」なのかはさておき、巫女かそれに近しい人物であるのは間違いなさそうだ。


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[一言] さすがすごい胆力
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