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140話 ラーディア


 エニグマがやってくれるという注射器を遠距離から飛ばせる武器の設計は時間がかかるらしいので、やってもらっている間に別のことをやることにした。

 とは言っても特にやりたい事もなかったのでエニグマに何かないかと聞いたら、サスティクの先の街に行ってみたらどうだと提案してくれてのでそうする事に。


 聞いた話ではサスティクの次の街はマグ、その先にフォージュ、アルニクス、グレイズと続いて、グレイズの先に以前僕が行ったメルンタウトがある。先は長い。

 別の街に行くならニアさんを誘っておくべきだとも言われたのでフレンドメッセージで連絡して、今は返事待ちだ。


「うさ丸は一応お留守番ね」


「キュゥ~」


「よしよし」


≪『ニア』からフレンドメッセージが届いています≫

【ニア:行ける。どこにいる?】


 返事が来た。ありがたい事に来てくれるらしい。

 ホールに居ると返してしばらく待つと、クランハウスの入口からニアさんがやってくる。


「お待たせ。どこに行きたいの?」


「サスティクより北の街なんですけど……」


「いいよ、ラーディアまでだったらリンを連れていけると思う」


 聞き覚えのない街の名前が出てきた。いや街の名前って確定しているかは分からないけど、連れていけると言っているのだから街の名前かそうじゃなくても地名のはず。


「ラーディア? ってどこですか?」


「……どの街まで把握してる?」


「メルンタウトまでです」


「じゃあ簡単。ラーディアはメルンタウトの先の街」


 行こう、と歩き出していくニアさんに着いていく。

 ラーディアという街がメルンタウトの先にあって、そこまで行けるらしい。そこまでの全ての街、メルンタウトを含めて六つの街のファストトラベルを開放すれば活動できる範囲が大幅に広がる。

 曰くフォージュの街に入るちょっと前から雨が雪になり、アルニクスは雪が積もっている。それだけ寒いという事だが、前からメルンタウトに行くことを見越して防寒着をアリスさんに依頼していたので衣服は心配ない。多分。


 ニアさんの後ろを歩いていくとサスティクから街の外に出るための門に到着した。


「行こう」


 そう言ってニアさんは前傾姿勢でしゃがみ込む。


「……どうしたんですか?」


「乗って」


 何を言ってるんだろうか。

 街と街の間はかなり長い距離がある。人が走って移動するには結構な時間がかかるし、体力も持たないだろう。それにモンスターも出没するのだから移動速度が遅く馬車と違って攻撃しやすい状態で走っている人間など、モンスターにとっては格好の餌食でしかない。

 AGIがとても高いニアさんなら何とかできるかも、という期待はあるけど、僕を背負った状態で大丈夫なのか。


「大丈夫なんですか?」


「問題ない。行くよ」


 自分でもこの体は軽いという自覚はあるけど、どうしても重くないかとか不安になってしまう。


「舌を噛まないように気を付けて」


 返事をする前に動き出した。歩き始め、少しずつ走り出してどんどん加速していく。

 かなり強く風を感じるほどの速度で走っているが、前にマレアの砂浜で抱えて走ってもらった時よりもずっと速い。あの時からステータスが成長したりスキルが増えたのか、前は本気で走ってなかったのか。


「聞くの忘れてた。ボスは無視するけどいい?」


「大丈夫です!」


「ならよかった」


 風の音が聞こえるくらいなので返事しても聞き取れるか心配になり、大きめの声で返事する。

 ニアさんからの返事が聞こえ、安心する。僕の声はちゃんと届いたようだ。


 ボスを無視するのは今までやったことが無かったけど、それは馬車で移動していた関係上戦うのは避けられないからだ。ファストトラベルがある以上街から街の移動に馬車や徒歩を使うことは少ないだろうし、避けれるなら避けて問題はない。

 問題は避けれるのか、だが。



 そう考えてからしばらく。流れていく崖際の景色を揺れる背中で眺めていると、前方の道に上から岩の塊が落ちてくる。

 明らかに不自然な落ち方だからおそらくモンスターなのだろうが、ニアさんは岩の横を今までよりも速いスピードで駆け抜ける。後ろを見ると岩が動き出すが、既に遠くに見えるくらいには距離が離れている。

 そのまま何事もなかったかのように走り続け、また景色を眺めていると山岳地帯から抜け、街が見えてくる。


 街に着くと止まり、僕の太ももを抑えていたニアさんの手が離れる。降りておこう。


「一旦休憩しようか。教会にも行くよね?」


「行きます。案内お願いしてもいいですか? 方向音痴なので……」


「もちろん」











****












 マグの教会でファストトラベルを開放し、その後も数時間かけてラーディアまで到着した。

 途中に出てきたモンスターは猿とか鳥とか色々出てきたが、その全部がニアさんの走行速度に追いつくことはなかった。途中から雪が積もっていて走りにくそうな道も所々あったけど、それでも大して支障なく走っていた。

 慣れているのか、そういうスキルでも持ってるのか。どちらにせよ凄いことには変わりない。


「寒くないんですか?」


「大丈夫」


 途中、アルニクスに着いた時から僕は防寒具として、長袖の軍服ワンピースの上にコートを着た。しかしニアさんは衣服の変更はなく、薄着のままだ。

 本人が大丈夫と言っているから平気……なのかな。


 ラーディアの教会でファストトラベルを開放したら、少しだけ街を散策してからサスティクへ戻る。もちろん一人だと迷うから散策にはニアさんに着いてきてもらった。特に面白いものもなかったけど。

 ファストトラベルは移動が楽だけどお金がかかる。最近は結構お金が貯まってたからそれほど痛くはないが、ラーディアからマレアに行くとかになったら結構ヤバい。最悪所持金が0になるかもしれない。

 そう考えると一つ隣の街に移動するのに5000ソルって結構高い。別に次の街に行ったからって収入が増える訳でも無いし。

 あと防寒着として暖かいコートを貰ったけど、それで暖まるのは上半身だけで顔とか足がめっちゃ寒い。ちゃんと全身を防寒できるように追加で依頼する必要がありそうだ。


「そういえば暑さに耐性を付けるキノコか何かがあった気がしなくもない……というかあった。ということは寒さに耐性を付けるアイテムがあってもおかしくないかも」


 あとで誰かに聞いてみよう。

 ニアさんとはラーディアで別れ、一人でクランハウスまで戻ってくるとエニグマがホールの机に突っ伏しているのが見える。


「何してるの?」


「瞑想」


「……そんな状態でやることではなくない?」


「明日が学校という怒りを消そうとしてるだけだからどんな状態でもいいだろ」


 昨日僕も同じようなことしてたわ。怒り消そうと瞑想するんじゃなくて憂鬱だっただけなんだけども。


「行きたくねぇ~」


「その気持ちは分かるけど、明日は始業式くらいしかないでしょ?」


「明後日から授業だろうが」


「確かに」


 明日は放課まで短いけど明後日から普通の日程だった。これ以上気分を沈ませないためにはこの話題はやめて他の話題を出した方がいい。


「まあそれは置いといて。ラーディアまで行ったよ」


「そうか。こっちはもうちょい時間かかる」


「最近エニグマばっか見かけるけどアズマとかとは一緒にやってないの?」


「イベント期間中はダンジョン攻略は中止してるし、アクアとエアリスは先週から学校始まってるからな。昨日と今日は普通に居たからお前が会ってないだけだ」


「そうなんだ」


「アズマはエックスとなんかやってるな。最近はフォージュ辺りで活動してるらしいが」


 結構バラバラに動いてるんだ。エニグマもエニグマでクラン同士の話とかをしてるみたいだし、みんな忙しそうだなぁ。


動ける範囲の拡張回だった

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[一言] ニアさんすげぇ
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