残念イキリ系主人公、爆誕
鳴り止まない拍手、歓声。そして熱狂するファン達。
俺は今、この瞬間に命を燃やす。
そう、この俺今村遼は、日本でも有数のギタリストだ。
幼少期からギターに触れ、動画配信サイトで人気を集めた後プロデビュー。
今は全国ツアーの真っ最中。この若さにして武道館を超満員にしたこともある。
俺の両手には愛用のギター「紅-クレナイ-」。こいつ1本でここまで来た。
「みんな!盛り上がっていこうぜ!!」
俺の最高の煽り文句!!会場もこれで大盛り上がり!
「…………………」
あれ?
「……おきろ………起きろ……」
え?なんて?
「起きろ!」
「は、はい!!」
「もう1年生は終わったんだぞ。これからは勉強に打ち込み……」
くそ、なんかすげーいい気分の夢を見てたはずなのに......。
ていうか、寝起き早々説教とかやめてくれよ。この授業4人しかいないんだからさ。
あ、4人しかいないのは、ここが田舎とかじゃなくて、塾で少人数制だからってだけね。田舎とかでは決してないからね。
「じゃあ今村。この問題解けたか?」
「え!? えーと……解き方が分かりません」
いや、寝てたやつが解けてる訳ないだろ。考えろ。
「この問題が解けないのはやばいぞ。三平方の定理ってわかるか?」
「え、えーと……な、なんでしたっけ?」
くそっ!周りの3人の目線が痛い!なんか、ひそひそ言ってるように見える、聞こえる!本当は俺と先生の無駄な時間に暇を持て余してるだけなのに!
自分自身が1番理解してる。このくそ頭いい塾に俺みたいのがいるのがおかしいなんて痛いほど分かってる!でもなんとなくで入れちゃったんだから仕方ないだろ!
「しょうがないな、この教材開けて。他の3人は各自練習問題を進めてくれ」
くっ……はやくこの授業終わってくれ......
祈ってたらいつのまにか授業終わってた。いや、心を無にしてた、が正しいか。
さっきのやりとりを見てもらっても分かる通り俺は頭が少々よろしくない。
いや、そうまで悪いとは……悪いか。
そう、この俺「今村遼」の通っている高校は、偏差値40ちょいの底辺校、京都の学生で知らない人はいないであろう荒れた高校「朱雀高校」。
更にはそこそこの塾に通ってはいるが数学の模試で0点を叩き出した。もはや鬼才。
馬鹿と天才は紙一重とよく言うが、この場合にも適用できるのだろうか?
そんなことはいいとして、塾でさっきみたいにボロボロなのは、入ってからずっとなので慣れた。
しかし、問題は本業の高校の方だ。流石に底辺校なだけあって、勉強が簡単。
そのおかげで、1年の頃は頭のいいキャラで通せた。しかし問題は2年になってからだ。
底辺校にも一応理数系があったので進んでみたのだが、これが大失敗。1学期の成績は散々だった。
数学は数Ⅱ数B共に赤点、物理や古典も酷い有様。完全に優等生の地位も失った。
更に追い打ちをかけるかのように、クラス内ぼっち(クラス内ぼっちというのはホームルームではぼっちだが他クラスには友達がいる状態のこと)という新たな地位をも確立してしまった。
まあ、ぼっちなのはどうでもいいけどな!!と大声で言い切れないのも現状。
高校2年というのは人が最も浮かれる時期であり、青春を過ごす時期。もちろん学校側も行事を大量に用意している。
......つまり、ぼっちであることは超がつくほどのバッドステータス。校内ヒエラルキーは最下層確定。
言ってて悲しくなってきた。
しかし、特技や趣味が優れていれば校内のヒエラルキーは高くなるというものだ。
俺の趣味はアニメやラノベ、ゲーム。ここまでならただのオタク……しかし俺は違う。そう、陽キャの極み、「ギター」がある!
......実際は、最近ギターが思うように上手くならず停滞ぎみ、オタク趣味もなーんかやる気起こらず倦怠期。ゲームもやりたいのものがない。なんというアイデンティティクライシス。もはや意義のある事といえばバイトくらい。
……これじゃダメだ。こっから人生逆転する。大学いいとこ入って、やりたい事で就職して、趣味をやりたいままにやり、人生を味わい尽くす……
なんて、神様がいい感じにやってくれないかなあ……
略称は今ガイルです。




