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カミサマが助けてくれないので復讐します 3  作者: つくたん
戦いの前に
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無茶だよね

あまりにも非現実的だ。

パンデモニウムを倒すためなら、本来の作戦通りに氷原から進んでいくだけで十分なのだ。

パンデモニウム本拠地を囲む峻厳な山は天然の袋小路であり、逃げる場所などない。氷原から乗り込むだけでパンデモニウムは逃げ場がないのだ。

その壁にわざわざ穴を開け、陸地を作って挟撃するだなんて、不意をつくくらいしか効果がない。

挟撃するために兵力だって分散する。氷原を渡るためにラピス諸島に集めている物資をキロ島に回さなければならない。そのための輸送の手間もある。

そしてカグツチが作り上げた大地を数日かけて渡ることになるということは、その分物資だって必要になる。

デメリットばかりが目立ち、その割にメリットは薄い。コストに利益が見合わない。

正気を疑いたくなるような内容であることも合わせ、ユミオウギとしては正直言って反対寄りの意見だ。

「不意をつける。ただそれだけだぞ」

重ねてデメリットを説明したユミオウギはいったん言葉を切る。実行するかどうかの賛否を各国それぞれで議論させるために沈黙した。

バトンはこちらに渡された。話し合えということを察し、ユグギルは机に置いた武具から顔を上げて、目の前の長机に目を向けた。

バハムクランのあらゆる作戦会議の場である長机には主要陣がそこに揃っている。もちろん猟矢たちもだ。

「さてどうするか、だが……何か意見はあるかの?」

「はいはい!」

出番を作りたいらしいエルデナが真っ先に声をあげた。

トレードマークである赤い服の袖を翻して手を挙げたエルデナはユグギルの返事も待たずに立ち上がる。

「質問! 実際にやるとして、物資の移動は可能なの?」

現在、ラピス諸島に集めている物資を一部キロ島へと移す。それは間に合うのか。

非生物の物だけを転送する武具はエルデナの知る限り存在しない。だから運搬方法は現在ラピス諸島に向けてやっているように船か、あるいはディメンションタイプの武具を持つ人間に手伝わせるかだ。

異次元にものをしまうような効果のディメンションタイプの武具に物資をしまい、術者を"ラド"で転移させ、その場で物資を出すという面倒なことをしないといけない。

その手段は何往復も必要となるだろう。だが、問題がある。

あまり連続で転移すると酔いに似た症状を起こすのだ。これでは何往復もさせるのは厳しい。

それなら1度に運ぶ量を増やせばいいのだが、それほど大容量のキャパシティを持つ武具はない。

一般的に出回っているような安価のものでは、ひとつのディメンションタイプの武具にしまえる容量は多くても鞄ひとつぶんだ。一抱え程度。

"マギ・シスのラボ"のようにひとつの部屋を形成するほどの大容量の武具はそれほどない。作れば別だが、作るにはまた手間がかかる。

そのあたりの問題はどうクリアするのだろう。エルデナが質問しているのはそれだ。

ユグギルではなく、ユグギルの前に置かれている通信武具へと疑問をぶつける。質問を受けるのはユミオウギだ。

「あぁ…それは問題はないかと」

ユミオウギが答えるより前に割り込んだのはベルミア大陸のノーブル・コンダクトからの通信だ。発言したのはベルミア大陸北東に位置するヴィリア国の若い王だ。

「まだ当国の物資輸送便が準備中でまだ出ておりません。行き先をラピス諸島から変更すればいいでしょう」

ヴィリア国からの船だけで十分ではないだろうが、ともかく最低限の人数に最低限の装備が整うくらいは行き渡るはずだ。

「それに、氷原を渡るには時間がかかります。神を召喚し道を作るまでに数日を要するはず」

その間に船をキロ島へ新たに寄越せばいいだけだ。武具に頼らずとも何とかなるだろう。

その動きをパンデモニウムに察知されるだろうが、妨害はされず海路の安全は保証されるとヴィリアの王は踏んでいる。

「ナルドの神がいらっしゃる。そうでしょう?」

神を護衛にしようというのだ。穏やかに凪ぐ海の神ナルド・レヴィアがいれば海路は安全だ。

つまりエルデナが懸念することは解決できているのだ。

陸地を作るという手段も、そのための準備も何もかもが実行可能である。あとはやるかやらないか、人間たちの意思次第なのだ。

「その意思ですが、ノーブル・コンダクトからの結論をお出しします」

その場で話し合わずとも最初から決めていたことだ。

この会議が始まるより前にノーブル・コンダクトはとある結論に至っていた。どんな突拍子もない提案をされてもその結論は揺るがない。

「おっと、ヴィリアの若造にいいところは渡せんぞ」

代表者を気取るヴィリア王にすかさずベルズクリエの女王が割り入った。

結論を述べるのは自分だとばかりに主張してきた女王に流れを奪われ、ヴィリア王はわずかに眉を寄せる。

ここで結論を述べることで代表者を気取り、後々の存在感を出していくつもりがそれを奪われた。腹立ち紛れに車椅子の膝置きを拳で打つ。

だから若造なのよとその様子を嘲笑し、見事流れを奪った女王は勝利を誇るように手元の扇をぱちんと鳴らした。

「あまり若者に意地悪をするものではないぞ、女王よ。……我々ノーブル・コンダクトはすべての決定権を委ねよう」

若造を苛める年増を咎めつつ、その流れであっさりと結論を述べたのはシヴァルスの老王だった。

勝ち誇って油断しているとこうなるぞ。老獪な王はそう言いたげにワイングラスを傾けた。

「それで、誰に委ねるかということだが……」

「我らが旗印にお決めいただこうかと思うのです」

最後の美味しいところはいただこう。油断するなよ父よ。ここにいるのはその座をいずれいただく者だ。

ノーブル・コンダクト議会の場にシヴァルスの後継として列席していたエメットが老王の台詞を奪って言った。

おやおや、最後は小娘か。なかなか油断ができないものだ。ベルズクリエの女王とヴィリアの王は同時に肩を竦めた。

「と、いうことで我々ノーブル・コンダクトは旗印のふたりに決定権を委ねます」


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