第7話 俺達の冒険はこれからだ!
「作戦成功だな、ほい、右腕返すよ」
俺は、彼女から切り落とした腕を返却した。
今回の作戦はこうだ。
竜は匂いに敏感なので、俺が返り血のついた腕を持って逃げ、追いかけてきたところを背後から攻撃する。
当然、腕を切り落とすと血が出るので、それをごまかすために森中に血を染み込ませた布切れを、ばらまく事にしたんだ。
オーラパワーで、失血死はしないように出来るとかどうとか。
え、失敗したらどうしたかって?
あいつを捨て駒に、逃げるに決まってるじゃないか、はっはっは。
まあ今回は、理想のストーリーが現実になってよかったよ。
なにせ俺は、この世界の事をほとんど知らない。
この女から情報を聞き出せた方が、より安全に活動できるだろう。
俺のモットーは、楽して生きるだからな。
早く痛いのや怖いのから、おさらばしたいのさ俺は。
「ちょっと、見てないでさっさとくっつけなさいよ!」
「しょうがないだろ、魔力切れなんだから」
「だったら、村の教会で治してもらわないとね」
おお、教会でそんなことが出来るのか。
だったら、宿屋とか道具屋もあったりするんだろうか。
よし、さっそく案内してもらおう。
「村はどこだ、送っていくよ」
「あっちよ、今からだと3日はかかるかも」
「了解」
俺は、彼女を抱き抱えた。
うん、やっぱり殴ってこなければ、可愛い女の子だ。
怪我のせいでしばらく大人しいだろうし、しばらくデート気分を味わっておこう。
ああ、実にいい太ももだ。
――スパコンッ
さっそく殴られた。
村に向かう前に、竜の洞窟まで戻ることになった。
彼女の荷物を、回収するためだ。
かばんの中には、水や食料、着替えなどが入っていた。
着替えはともかく、食糧は狩りでもしないと足りないだろうな。
血液は飲み水に出来るらしいから、【ヒール】で補充していけば何とかなるだろう。
……魔力って回復するよな?
使い切りとかじゃないよな? そうだよな!
そんなこんなで歩き続けて、最初の夜が訪れた。
焚火でゴブリンの肉を焼き、食べた。
まずかった。
「なあ、あんた、何で1人でドラゴン退治なんてやってたんだ」
「村の人間を、片っ端から殴り飛ばしてたら、退治するまで帰ってくるなって」
「何で殴り飛ばしてんだよ!」
「人間殴ったら、スカッとするからに決まってるじゃないの!」
「最低だなあんた!」
「そんなのおかしいわよ! みんな花屋さんとか、パン屋さんとか、好きな事して喜ばれてるのに、何で私はダメなのよ! 差別よ、不公平よ!」
「だよな! 不公平だよな! 俺もそう思うよ!」
同級生に、野球が好きな奴がいた。
そして、俺の趣味はダラダラする事だ。
お互い自分の好きなことに全力で打ち込んでただけなのに、何であいつばっかり評価されて俺は全く評価されないんだよ!
いいかよく聞け、俺は未来にダラダラ遺伝子を残すために頑張ってたんだ。
人類がダラダラを失ってしまったら、みんな過労死してしまうからだ。
だから俺は頑張らない、人類の未来の為に!
俺達は、ひしっと抱き合っていた。
趣味を認められない者同士、仲良くやろうじゃないか。
「そういえば自己紹介まだよね、カンナ、私の名前よ」
「俺は……あれ? 何だっけ? 全然思い出せない……」
殴られすぎて、記憶が飛んじまってるぅぅぅぅぅぅ!!
次回から、第2章を始めます。




