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第59話 雪原の盗賊団、壊滅! 後編 

「あれは聖剣デュランダル! なぜあれが盗賊の手に!?」

「ケカカカ、貰ったのさぁ、決闘に勝利した証としてなぁ」

 スケルトンの剣士は、背中に背負った剣に視線をやりながら楽しげに答えた。


 聖剣デュランダル――いかなる攻撃にも耐える、折れず砕けずの不滅の剣。しかしその実体は、自らの損傷を使用者に肩代わりさせる呪われし剣。


 という文章が、シンクの頭には浮かんでいた。

 さらに本のページをめくるようにイメージすると、デュランダルについてのデータがまるで図鑑のように浮かんでくるようだ。


「デュランダルは自身のみでなく、味方全ての損傷を使用者に肩代わりさせる隠された能力があるらしい。人間が発動させれば痛みに耐えられないが、強靭な骨格を持ち、痛みを感じないスケルトンなら100人分肩代わりしたって何ともないはずだ」

「あ! だから彼らは無敵だったのですね」

「無敵じゃないさ、奴の耐久力にだって限界はある。鎧の隙間を見て見ろ、あばらにひびが入ってる、俺の【絶命剣】を耐えきれなかった証拠だ」


 スケルトンの剣士はカタカタと笑い出し、デュランダルをも引き抜き両手に剣を構えた。


「あの忌々しい魔族の出現から幾年月、死ぬ事も逃げ出す事も出来ずこの雪の大地で退屈を貪っていた。ケカカカカカ、ワタシに傷をつけた人間は貴様で2人目だ、さあ! いざ尋常に勝負!」

「ああ、よろしく頼む」


 2人は挨拶がわりに頭突きあった!

 そしてスケルトンの剣士は跡形もなく砕け散った!!


「あ~あ、辛く厳しい戦いだったわ~。あそこでああなってたら勝負は分かんなかったわ~」

「待て待て待てぇぇ、お頭に何しやがったぁぁぁ!」

「あ、サンキュサンキュ、実は俺、今まで受けたダメージをまとめてぶつける技を覚えてさ。いや~、あんたがボカスカ殴ってくれなかったら勝てなかったかもしれない、感謝感謝」


「ふぃー、よくも突き落としてくれたな、覚悟しやがれ!」

「女は殺すなよ、オレのだかんな!」

「オレ達にたてついたらどうな――お、お頭ぁ!」

 突き落とされた盗賊達が、断崖絶壁を上り終えシンク達を取り囲もうとした。しかし砕け散ったお頭と、

余裕の顔でポーズを決めるシンク、そして汗だくで踊り狂うキルモーフの前に、圧倒的な戦力差を感じ1人また1人と戦意を失っていった。


「さあさあ、道を開けろシンク様のお通りだ―!」

「シンク! 調子に乗らな――シンク、骨が……」

「マーテル静かに、魔力も冥力も残ってない、戦闘になったら死ぬ。今は余力が残ってるふりをして、この場を去らないと……」


 あくまで優雅に立ち去ろうとするシンクを、恐怖にかられた1人の盗賊がこん棒で思いっきり殴りつけた。生まれたての小鹿のような状態で、いつまでも起き上がろうとしないシンクを目の当たりにして、盗賊達の闘志が蘇った。


「バッキャロウ、フラフラじゃねえか!」

「ほら吹いてやがったのか!」

「お頭の仇だ、やっちまえ!」


「あああクソったれが! うまくいきやがれよボケェ!」


 その時、不思議な事が起こった。

 シンク達の体から、疲れや痛みが消し飛び、欠損していた肉体も何事も無かったかのように回復しだした。流石に魔力や天力までは回復しなかったが、体力さえ戻ればデュランダルの加護を失った盗賊団などいないも同じ、勝負は一瞬で片が付いた。


「はあはあ、焦った……何だか知らんが助かった」

「ん~~ん~~」

「キルモーフ踊り疲れたのか? 赤ちゃんが寒がってるぞ、ちゃんと動いて体温めないと大変――」


 シンクは、デュランダルの元まで歩いて行った。デュランダルのそばには、大きな瞳の謎生物、そして大量の綿とズタボロになった布切れのような物が落ちていた。


「………………キルモ」


 ――貫け、グングニル

 誰かがそうつぶやいた。


 地平線の向こうから一筋の光が飛来し、いまだに地面を這いずり回る盗賊団全ての頭を消し去り、再び地平線の向こうへと戻っていった。そして、馬のいななきが雪原に響き渡った。


「我が領土に何用だ、人間よ」

「ははは……終わった」


 地平線の彼方から、その男は現れた。

 漆黒の兜と鎧に身を包み、8本足の馬に跨ったその男は、グングニルを構えた。

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