第47話 目指せ、モンスターマスター
「もぉ~、まったく信じられません! 仲間を裏切るなど、言語道断! 彼らは死後、地獄行になるように手配しておきましょう!」
「女神マーテルよ、怒りを鎮めるのです。彼らにとって我々は、仲間でもなんでもなかった……ただそれだけの事なのです。彼らは生きるため、仲間を守るために他人を犠牲にしようと考えた、それはとても自然な行いだとは思いませんか?」
「シンク! 何があったのです! 今のあなたからは後光がさして見えます!」
俺は正直、あの村の奴らをぶっ殺してやりたいと思ってる。だが今その怒りをぶちまけたところで、エネルギーを垂れ流すだけで何1つ利点がない。なので俺は怒りに蓋をし、仏像を彫るような心境で雪の上を歩いている。
怒りを鎮め冷静になった事で、彼らの心境を理解できたような気がした。彼らにとって俺達は、あって間もない他人なんだ、差し出すなら当然俺達の命だろう。
なのでこちらも容赦もしない、あいつらを縛り上げて村の財産を全て奪い去り、次の村まで逃げる事にしよう。俺達にとって奴らは赤の他人なんだから、生きるために他人を犠牲にする事は自然な行いなのだ。
ああ、まじつらいわー、彼らの今後を考えると心が痛むわー(棒)。
「彼らにお土産を持って帰りましょう、きっと喜びます」
「いい考えですね、腹が減っては働けぬ、ですものね」
くくく、天力の回復には人間の豊かさが必要不可欠。ならば奴らに餌を撒いて、マーテルの天力タンクとして働いてもらおう。どうせ捨てる命、ポイするその瞬間までせいぜい役に立ってもらおうか。
さっきの出血で魔物が寄ってきてるようだし、土産は魔物肉でいいかな。
――ゴゴゴゴゴゴ!
雪を巻き上げながら、人間ではない何かがこちらに近づいてきた。積雪地方なら、シルバーウルフかホワイトファングか、どちらにしろ俺が負ける相手じゃない。さあ来い、俺達の晩飯!
「フェフェルフォフォフォー!」
……飛び出してきたのは、つぶらな瞳の巨大芋虫だった。
彼らはキルモーフと呼ばれる、世界中どこにでもいるザコモンスターの1種だ。肉は柔らかく、臭みも無いが、体内のほとんどが綿のような物で構成されているため、食用としてはあまり飼育されない。
しかもこいつは見たところ小物で、なおさら食えるところがない。
「じゃあな、仲間の所に帰りな」
「フェフォ―、フェフォ―」
「うふふ、シンク、この子あなたに一目ぼれしたようですよ」
冗談はやめろ! こんな化け芋虫が彼女だなんて、何千回輪廻転生したってお断りだわ! おいやめろ、のしかかるな、下腹部を押し付けてくるな気持ち悪い。
「ええい、うっとおしい! 【バインド】!」
「フェブ―!」
【インパクト】をロープ上に圧縮して縛る魔法【バインド】。そして、このまま大人しくなるまで、魔力を流し続けてやる!
「おらぁぁぁ!」
「フェボボォォォォォ!――――フェフ?」
なんか様子が変だ、急に魔力の性質が変わった。こいつの体を貫く感触から、体を包み込んでやってる感じになった。まさか、耐性を得たのか、今の一瞬で!?
「どうやら、彼女はあなたの配下に加わったようですね」
「え、なんで?」
「ん~、相性が良かったのでしょう、きっと」
詳しいやり方は分からないが、モンスターは仲間に出来るらしい。これはいい事を聞いた、モンスターを手なずけてかわりに働かせれば、俺はずっと寝ていられるじゃないか。
「よっしゃあ! 手当たり次第に仲間にしてやる!」
「フェフェルフォフォフォー」
「あの、お土産の話はどうなりました!?」
ユニークアクセスが、1000人を突破です。
感謝感謝




