第42話 潜伏中の魔族を討て!
「くあぁ~、疲れたぁ~」
「暗くなってきたわね、早くギルドに戻りましょう」
「ちょっとミケルんとこ寄らせてくれ、頼んでた物が完成してる頃だし」
ロイクさんの家を訪ねてから、かれこれ3時間……我ながらかなり頑張った方だと思う。きっと指導者のロイクさんが、男でも二度見してしまうような美形だったからだろう。これがデブのおっさんとかだったら、絶対30分もってない。
ただし、時間と上達具合は比例しないようで、俺が今回手に入れたものは付け焼刃の【インパクト】と、爆音がうっとおしくて使えるようになった【消音】と、各種魔法の知識部分だけ。こんなんで魔族を相手取るなんて、夢のまた夢だな。
おや、あれはスゥーさん、北地区まで人探しに来てたのか。
「すみませ~ん、妹を探しています、どなたかご存じありませんか?」
「こんばんわ、スゥーさん。あまり進展ないようですね」
「あら、シンク君。そうなの……みんなレーネの名前さえ聞いたことないって」
前にスゥーさんから聞いた話だと、レーネさんは失踪したという話だったし、名前や顔を変えてる可能性はある。もちろん、この国をスルーした可能性や、何らかの理由でみんなが嘘をついている可能性、スゥーさんの記憶の中のレーネさんと、実際のレーネさんの特徴が食い違ってる可能性だってある。
「もしかしてレーネさん、姿を変えてるんじゃないでしょうか?」
「!? 姿を……あ、そうよね変装の事よね、魔法とかじゃないわよね」
何を焦ってるんだこの人は。
「あと、この国によってないかもしれませんよ?」
「それは多分ないわ、次の町まですごく遠いの、きっとこの国に滞在したはずよ」
「でも、空とか飛んでいけたら、もっと遠くまで行けたかも」
「!? 空……あ、魔物の背に乗るのよね、翼が生えてるわけじゃないんだもの」
いや、魔物に乗るなんて危なすぎるでしょ、飛翔魔法使いましょうよ。
「それと、スゥーさんの記憶違いがあるのかも?」
「…………そうね、魔族だったら、他人の記憶を弄る事ぐらいできるでしょうね」
ぞわぞわとした感覚が、俺の頬を撫でた。
この感覚、まさか!!
「シンク! そいつから離れろ! そいつは魔族が化けてんだ!!」
「ま、マスター!?」
完全武装したマスターの剣が、スゥーさんを真っ二つにした!
が、服を囮にうまくかわしたようで、スゥーさんはかすり傷1つ負う事なく立っていた、全裸で!
「何故、わたしが魔族だと?」
「最初から知ってたさ、最新の魔族探知機舐めんなよ。あんたを観察して、確実に討てる機会を待ってたのさこっちは」
「あら残念、やられちゃうのねわたし……」
周辺から、騎士団を含む多数の増援が現れた。多数の光源が、スゥーさんの姿を照らし出し、まさにアリの這い出る隙間も無いといった様子だ。
……なんだろう、緊迫した場面のはずなのに、全裸のせいでギャグシーンにしか映らないんだが。




