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第40話 魔術の習得・入門編

 ミケルの家を後にした俺は、カンナの案内で北地区までやってきた。

 

「いらっしゃい、シンク君」

「お世話になります、ロイクさん」


 ロイクさん……このハリウッドスター級のハンサムなお兄さんは、魔術の研究家でカンナの叔父さんに当たる人物だ。俺も名前だけはカンナから聞いていたが、まさかここまで美形だとは知らず、初めて会った時には度肝を抜かれたものだ。


「僕の元を訪ねたという事は、君も魔法を覚えたいのかい?」

「ええまあ、最近物騒なので、自衛手段ぐらい持とうかと」


 ロイクさんの表情が、少し険しくなった。 


「それなら、ナイフでも持ち歩けばいい。ナイフで対処できない、かつ危険な相手であれば逃げ出して騎士団の到着を待つべきだし、逃げ出す事も困難な相手なら、生半可な魔法は役に立たない」


「ですが、目くらましぐらいにはなるんじゃないでしょうか?」

「僕も昔はそう考えていたよ、だが半端に力を持つと逆に判断が鈍くなる。尻尾を巻いて逃げれば助かる場面で、魔術を放とうとして逃げ遅れた……よく聞く話さ」


「でもそれじゃあ、俺は弱いままだ!」


 そうだ、ここは日本じゃない。コンビニで飯は買えないし、水道も機能してない、おまけに魔物や魔族がうようよしてて、いつ死んでもおかしくない世界なんだ! 俺は目の前の快楽におぼれて、身を亡ぼすような馬鹿じゃない。

 生き残るためだったら、俺は昼寝を止め、日に2時間は勉強する覚悟がある!!


「その目……本気のようだね、分かった! 君に魔法を教えよう!」 

「ありがとうございます!」


 俺は、ロイクさんに頭を下げた。

 特訓をするために、ロイクさんの家の地下室に移動する事になった。石造りの広い部屋で、的に使ったと思われる木箱の破片が部屋の隅に固めてあることを除けば何もない部屋だった。


「よし、練習用にまずはこれを覚えてほしい。――セット! 【インパクト】」


 右手を銃のように構えた彼の手から、衝撃波の様な物が飛び出した。

 【インパクト】は魔力を打ち出す術で、術者のコントロール次第で威力や消費を自由に変えられるので、魔術の訓練にはうってつけの術らしい。


「君は【ヒール】が得意らしいね、一度【ヒール】を組み立ててから、魔力の枠組み以外を分解すれば【インパクト】の完成だ」


 つまり、余計なものが入ってない純粋な魔力の塊ってわけね、完全に理解した。

 準備ができたので壁に向かって放つと、衝撃が大きすぎて後ろに吹っ飛ばされた。今度は魔力を削って威力を減らそうと思ったが、うまくまとまらず衝撃波が飛ばなかった。なるほど、練習に最適って言われたわけが分かった気がする。


 ある程度コツをつかんだ俺は、【インパクト】に【ヒール】をエンチャントして、カンナのスカートに向けてはなった! 放たれた弾丸は、カンナを一切傷つけることなくスカートとパンツの布だけを破壊した!


「おお! 術のエンチャントだなんて、まだ教えても無いのに!」

「なんか飽きてきたので、いろいろやってたら出来るようになりました」

「飽きた……から、教える側としては集中してほしいが、まあ上達はいい事だ」


「ねえ、シンク……話があるの(怒)」


 え~、俺達夜を共にした仲だよね? 下半身を丸出しにされたぐらいで、そんなに怒らなくてもいいじゃないか。あ、ムードかぁ、突然こんなロマンのかけらもない場所じゃあ、しょうがないかぁ、ははは。


 俺は下半身丸出しのカンナと、プロレスごっこを楽しんだとさ、ちゃんちゃん。

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